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#パリ

風の甘味

風の甘味

「共感覚」という言葉を知ったのは中学か高校の英語の授業だ。共感覚に関する説明文を読んで問題に答えるというもので、synesthesiaという英単語も、「共感覚」の意味も知らなくても、その長文がきちんと読めさえすれば解答できるという類の問題だった。

それを知ったときに、私にそのような感覚があるか刹那思案したが、そういう特殊な能力は持ち合わせていそうにないと思った。私はそのことにほんの少しだけガッカ

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ハーゲンダッツはなぜバニラを熟成させたのか

ハーゲンダッツはなぜバニラを熟成させたのか

アイス売り場のえんじ色は私たちが人生で一番最初に触れる高貴だ。

幼い日の私たちは、ガリガリ君やスイカバー、クーリッシュなど、素晴らしいアイスがひしめき合う業務用冷凍庫の中、「贅沢」でしか埋められない心の隙間があることを、ある日、ハーゲンダッツによって知ってしまうことになる。それは多くの人々にとって「贅沢の原体験」となっていることだろう。かくいう私の「贅沢の原体験」も、もちろんえんじ色のハーゲンダ

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サン・ルイ島のBerthillon(ベルティヨン)でPeach Melba【パリ4区】

サン・ルイ島のBerthillon(ベルティヨン)でPeach Melba【パリ4区】

これまでのパリ滞在で訪れた観光スポットと必ず起きるハプニングをご紹介します。

いつか、誰かのパリ旅行にお役に立てたら嬉しいです。

行列ができる老舗アイスクリームブティック Berthillon(ベルティヨン)本店
創業1954年、サン・ルイ島のBerthillon(ベルティヨン)はいつでも行列しているアイスクリームブティックです。

サロン・ド・テ
コーンかカップで提供される行列の横をすり抜け

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母のかけら

母のかけら

王子さまは別れの前に、語り手である主人公に向かってこんな言葉を投げかける。離れていても、会えなくても、「この宇宙のどこかにいる」と知っていれば、それは何かの救いになる、ということなのだろうか。

母がこの世を去って1週間が経った。物理的な母は火葬を経て骨だけが残っている状態であるため、母がこの世に“存在している”とはいい難い。

それでも、いまだに私は「母の不在」をうまく掴めないでいる。

用事を

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母の最終講義

母の最終講義

この箇所は、私の心に強く印象付きながらも、ヘッセの言わんとするところはよくわからなかった。母と愛すること、そして死は、どう関連しているのだろうか。いつの日か、私にもヘッセの思想を理解できるようになる日が来るのだろうか。

母が我が家に来て5週間が経った。

がんの治療を放棄し余命2ヶ月を宣告されて退院した直後は、身体こそだいぶ不自由になっていたが、頭はしっかりしていた。それが今では、もうまともにコ

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神様に甘やかされた日

神様に甘やかされた日

朝7時半起床。曇りと雨のはざまの時間に、ちょっとだけランニング。1km走ると海が見えるらしい。とりあえず行ってみる。

曇天だったし特段綺麗だったわけでもないが、朝から海が見られるというのは悪くない。

シャワーを浴びてホテルを出る。9時を少し回ったところ。

朝ごはんは歩いて少し行ったところにあるうどん屋さん。せっかく香川にいるのだ、うどんを堪能しなければ。

肉うどんにナスと鳥の天ぷらをつける

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取り残されてゆく

取り残されてゆく

今日朝が早かったこともあり、少し仮眠を…と布団に入ったのが、多分夜9時ごろ。

その次の瞬間は深夜3時過ぎだった。

久しぶりの寝落ち。それも、6時間。

この6時間の間に、母親からLINEでメッセージを受け取り(最近夏目漱石の『三四郎』を読んでいる、という内容だった)、Instagramのフォロワーが4人増え、オードリーのオールナイトニッポンが放送された。

睡眠中も世間は動いているし、地球は自

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時差ボケ深夜の儀式

時差ボケ深夜の儀式

日本とフランスの2拠点生活をしているわけだが、私はどうにも時差ボケに弱い。

飛行機が到着した当日は特に問題なく過ごせるのだが、その後1週間ほど、うまく現地の時刻に合わせることができないのだ。

フランス到着後の1週間は、日中は元気でも、フランスでの夕方、つまり日本時間の夜に睡魔に襲われ数時間程寝てしまい、その後、深夜0時すぎに目覚め、朝方まで眠れなくなる。

日本到着後の1週間は、単純に就寝時刻

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