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ハーゲンダッツはなぜバニラを熟成させたのか

アイス売り場のえんじ色は私たちが人生で一番最初に触れる高貴だ。

幼い日の私たちは、ガリガリ君やスイカバー、クーリッシュなど、素晴らしいアイスがひしめき合う業務用冷凍庫の中、「贅沢」でしか埋められない心の隙間があることを、ある日、ハーゲンダッツによって知ってしまうことになる。それは多くの人々にとって「贅沢の原体験」となっていることだろう。かくいう私の「贅沢の原体験」も、もちろんえんじ色のハーゲンダッツによってもたらされた。


そんな神々しいえんじ色の売り場に、見慣れない黒があることに気づいたのは7月最後の日だった。その日私はスーパーでたくさんのフルーツとカフェオレを作るための牛乳を手に取った後、いつものようにアイス売り場へと向かった。私はスーパーに行くといつも必ずアイスコーナーをチェックするようにしているのだ。

そのえんじに混じった黒は、ハーゲンダッツの新商品である「熟成バニラ」だった。ハーゲンダッツはあの押しも押されもせぬ名作「バニラ」があるにも関わらず、こともあろうに「熟成バニラ」などという私たちの期待を否が応でも煽る商品を出したのだ。御多分に洩れず私も買わずにはいられなかった。

帰宅後早速食べる。なるほど、これは美味しい。ここ最近のハーゲンダッツの期間限定商品や新作の中でも高い完成度を誇っているといえよう。

私は早速、この商品の良さを理解してくれそうな友人を中心に「これ、美味しいよ」とこっそりと布教して回った。


そこから今日まで2、3日の間に、インターネット上でもこのハーゲンダッツ「熟成バニラ」を紹介している記事がいくつか上がり、私はその中のいくつかに目を通してみた。が、その良さをきちんと伝えられていると思われるものはなく、中にはなんと「通常のハーゲンダッツバニラ味とほとんど違いがない」と書いているものもあった。


そこで今日は、通常の「バニラ」と「熟成バニラ」を比較しようと思う。

合わせて470kcal

まず最初に声を大にして言いたいのは、「どちらもとても美味しい」ということ。どちらも素晴らしいバニラアイスクリームであり、さらにその明確な違いによって、「熟成バニラ」が「バニラ」の“上位互換”となっているわけではないのだ。

次に、あくまで「熟成バニラ」であって、「濃厚バニラ」ではない、ということもここで念の為明記しておく。よりバニラ感が強いものを想像していると、イメージと実物とのギャップに最初びっくりしかねない。もちろんバニラそのものの雰囲気はこの「熟成バニラ」の方が色濃く出ているが、きっとイメージとは違ったものとなっているので、あまり先入観なく一口目を運んでいただきたい。「バニラ」と「熟成バニラ」は別物だと考えて差し支えないだろう。

比較するとよくわかるのだが、「バニラ」の方がよりミルクを強く感じる。それにより全体がまろやかになり、結果的に口に入れた時から後味まで、緩急の少ない、安定した味を楽しむことができる。

対して「熟成バニラ」は、とかくこの最初と最後の落差が大きい。公式HPや多くの口コミで言及されているように、最初は洋酒のような甘く重たさのある香りが鼻を抜ける。しかし嚥下後はその真逆の清涼感が残るのだ。これは舌の上ではバニリンを中心としたバニラの複雑な構造を細かく感じている一方で、一度喉元を過ぎるとバニラビーンズの鞘の部分が持つフローラルな側面がより強く顔を出すからだと思料する。

また、食べ終わった後のカップを嗅ぎ比べていただきたい。「バニラ」の方は油っぽいミルクの香りが強いのに対し、「熟成バニラ」ではバニラの多面的な性格を感じることができる。パウダリーでスパイシーさもあり、どこかアニマリックだったりウッディな側面もある、そんな“剥き出しのバニラ”がそこにいるのだ。


「バニラ」と「熟成バニラ」においては、使っているバニラの量も全体的なレシピも違うようなので、「熟成」というプロセスがバニラの味や香りにどう寄与しているかはこの2つの比較だけではわからないが、想像するに、熟成はバニラという複雑な原料の、通常だと影に隠れていてあまり知覚されない部分(アニマリックやウッディな側面など)をより引き立てているのだろう。「バニラ」では見過ごされがちな小さなファセットも、熟成を経て増幅され、「熟成バニラ」では味や香りの主役となっているのだ。

「熟成バニラ」はとても美味しい一方で、食べている最中における味の変化の大きさやその複雑性から、万人受けするものではないと考えられる。食べる側にこれを理解する知性が求められるのだ。

だからこそこの「熟成バニラ」を理解した時に初めて、私たちはバニラという原料の神秘に触れることを許される。そしてそれを知ってしまうと、もう後戻りができなくなってしまうのだ。

個人的な好みをあえていうと、あとほんの少しだけ「熟成バニラ」におけるバニラの味を弱めてもよかったのでは、と思う。せっかくの美しいバニラであるが、わかりやすさを求めてなのか若干、本当に若干だが、過剰に入っているように感じられるのだ。現状からほんの少しだけバニラを減らし、各ファセットをもう一歩だけ知覚しにくくした方が、アコード全体の完成度は高まったのかもしれない。いずれにしても、素晴らしい作品だし、侃侃諤諤の議論の末に生まれたものなのだろうから、私が言っていることは的外れである可能性は非常に高い。


「熟成バニラ」の素晴らしさは、そのおいしさが直感的でも知性的でもあるところだと思料する。何も考えずに口に運んでも美味しいし、細かい味を感じ取ろうと集中して食べてもそこで立ち現れる様々な味に驚き酔いしれることができる。

こういった期間限定商品は、気がつくと冷凍庫から姿を消していることがままある。この記事を読んで興味を持ったそこのあなた、とにかく今すぐ最寄りのコンビニへと急ぐべし!


最後に、私は食に関してはど素人なので、トンチンカンなことを書いているかもしれないことを付記しておく。確かなことは、とてもおいしかった、ということのみ。その証拠に、私は最初に「濃厚バニラ」を食べた翌日に、スーパーでこのアイスを6つ、まとめ買いした。スーパーには9つあり、全部購入しようかとも思ったが、この素晴らしさを私が独り占めするのは、ハーゲンダッツさんの本望ではなかろうと想像し、思いとどまった。


ありがとうハーゲンダッツさん、これからも素敵な商品を、心から楽しみにしています。


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