Yuta Watanabe

フレグランスブランドçanoma(サノマ)クリエーター。 辛より甘、冬より夏、犬より猫…

Yuta Watanabe

フレグランスブランドçanoma(サノマ)クリエーター。 辛より甘、冬より夏、犬より猫が好き。 https://canoma-parfum.com/ https://www.instagram.com/canoma_parfum/?hl=ja

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言葉の刃物

もう25年以上も前のことだが、今でも折に触れて思い出される出来事がある。それは私の人生における「後悔」の一番最初の記憶であり、また今までで一番頻繁に思い返された事でもある。 その一方で、私はこの出来事について今まで誰かに語ったことは一度もないし、3年以上毎日書き続けているこのnoteでもそれについて触れてこなかった。なぜそうしなかったのかと問われると、ひとつはそれが他人にとっては取るに足らない出来事であろうと思われたからであるが、それにも増して、それを語ることが私にはとても

    • 伊勢に2度行く(中編)

      (前回からの続き) 20時09分 到着予定時刻から2分遅れでの到着。帰りの電車までの9分あった猶予はこれで7分になる。まぁいい、やってやろうじゃないか。駐車場まで戻る、車を開けてスマートフォンとカメラを取る、閉める、駅に戻る。うん、5分もあればきっと十分。 電車の扉が開くと、ありがたいことにすぐ目の前が改札だった。神様は味方してくれている。 20時10分 走って車の前まで到着した。この距離なら帰りも問題なさそうだ。 車に会員カードをかざす。 あれ…?開かないぞ…

      • 伊勢に2度行く(前編)

        8月22日(木) 晴れ 18時45分 私は今、名古屋駅から鳥羽行きの近鉄特急に乗り、伊勢市駅を目指している。到着予定時刻は20時07分。滞在予定時間は、9分。 実はつい3時間ほど前まで伊勢にいた。一通り伊勢を満喫した後、タイムズカーシェアで借りていた車を返却し、電車で名古屋に来た。ひつまぶしでも食べて東京に戻る予定だったが、名古屋に着いてしばらくして、あることに気がつく。 仕事用のスマートフォンが、ない。 立ち止まってバックパックの中を漁るが、ないものはない。 タ

        • たくさんの点、一本の線

          大阪出張が決まった時、私はすぐに京都のビストロ『ル・サンジュ』とその近くのホテルを予約した。出張だけで日帰りしなければならないほどスケジュールが立て込んでいたわけでもないこともあり、それだとひどく勿体無いと感じた。ミーティングは午前中で終わるはずだから、夜の予定をひとまず入れてしまって、その間については追々埋めていこう、と考えたのだ。 大阪での午前中のミーティングと京都でのディナーというふたつの「点」をどう繋ごうか思案した。大阪にできた新しい取引先に顔を出す、とか、既存の取

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          きちんと選考されること

          パリオリンピックが終わって少し経った今でも、それに関する記事はちらほら出てくる。 中でもよく目にするのが、ブレイキンのオーストラリア代表Raygun選手に関するもの。代表に値しない実力だったのではないか、とか、選考プロセスに問題があったのではないか、とか、抗議の署名活動が行われている、とか。 違和感なのは、例えばマラソンでトップからはるかに遅れてゴールする選手はある種の感動と共に迎え入れられる一方で、今回のRaygun選手に関しては逆の反応である、ということ。オリンピック

          きちんと選考されること

          ふたつの問いに対するひとつの答え

          幼少期、私は男の人が苦手だったようだ。エレベーターの中で知らない男の人と一緒になると、必死になって目をつぶって見ないようにしていたそうだ。母の実家にいった際も、祖父の前ですらそのような感じだったとのことだが、祖父を大層悲しませたのではないか、と今となっては申し訳ない気持ちになる。さすがに父に対してはそこまでではなかったが、長めの出張から帰ってきた父にビックリして泣き出したそうだ。どうやら知らないおじさんだと思ったらしい。 それらのことについての記憶は一切なく、全て大人になっ

          ふたつの問いに対するひとつの答え

          容姿への興味

          この週末、土曜日は日曜日のための準備で、日曜日は予定されていた予定で過ぎ去った。 日曜日の「予定されていた予定」というのは、とある雑誌のインタビューだ。当初の予定が前倒しになり、急遽日曜日に撮影およびインタビューとなった。 そんなわけで私は、土曜日にオフィスを兼ねている自宅を最大限片付け(このnoteの愛読者ならご存知かもしれないが、私は整理整頓と納豆がすこぶる苦手である)、髭と髪を整えてもらい、撮影時に着る服をああでもない、こうでもない、と選ぶことになった。 そんなこ

          容姿への興味

          虫取り網からデジタルカメラ

          少し前にカメラを買い替えてから、写真を撮る機会がちょっとだけ減ったような気がする。画角が変わったこともあり、まだうまくそれに馴染めていないのかもしれない。 新しい相棒に慣れようと思い、少しだけ外に出る際もなるべくカメラを携えるようにしている。いつどこでどんな出会いがあるかわからない。思いがけず素敵なシーンが待っているかもしれないのだ。 そんなわけで、今日近所のカレー屋にランチに行ったときさえも片手にはカメラがあった。家からカレー屋までの15分の静かな住宅街を、私はシャッタ

          虫取り網からデジタルカメラ

          コロッケとムトンと柿と

          親愛なる母へ お元気ですか。あの世での生活はもう慣れましたか? あなたが旅立ってから1年半も経ってしまいましたが、その間にこのnoteで何度か手紙をしたためています。もしかしたら天国でもWi-Fiが使えるようになっていて、このnoteの記事が辿り着くのではないか、という淡い期待と共に投稿していますが、実際のところはどうなのでしょうか?いずれにしてもあなたには返信する手立てがないのでしょうから、私はこんな感じで一縷の望みにかけて手紙を書き続けるまでです。 「お盆」というの

          コロッケとムトンと柿と

          花火を見にいく

          とても気分が落ち込んだまま、花火を見にいくことになった。 そういえばここ数年、毎年花火大会に行っている。昨年は久留米の花火大会、一昨年は神宮外苑花火大会に足を運んだ。今年はひょんなことから友人に誘われて、多摩川河川敷で行われた「平和記念花火」(大田区平和都市宣言記念事業「平和のつどい」の中の催し)にいくことになった。 3時ごろに友人宅に到着。そこで落ち込んでいる原因を話したり、くだらない話題に花を咲かせたりしながら、7時過ぎの花火まで時間を過ごした。少し気持ちが楽になった

          花火を見にいく

          地球はまわっている

          オリンピックの“疑惑の判定”のニュースが見出しに出るたびに、それらをきちんと読むことができなかった。読むだけで辛くなってしまっていただろう。 “疑惑の判定”によって敗れてしまった選手たちは、どのようにそのあと持ち直したのだろう。 私だったらきっと、心が折れてしまっている。正しくない判定を第三者から下されるのだ。そんなに辛くて悔しいことはなかろう。 とても悲しい出来事があった。 こんなにも悲しい出来事があるのなら、これから先、生きていく意味なんてないのではないか、とさえ

          地球はまわっている

          本物が生まれにくくなってしまった

          「いいブランド」とは何を指すのだろうか。 もちろん様々な物差しがありうるが、この資本主義経済においては、もしかしたら「一番売上の大きなブランド」というのが“正解”になりうるのかもしれない。 売上を伸ばすための施策はいろいろあるだろうが、残念ながら「プロダクトのクオリティを上げる」というのは大変に効率が悪いようだ。よって、マーケティングやブランディングに資本を集中させることになる。そうやって「プロダクトはなんだかよくわからないけど売れるブランド」が誕生する。 めでたし、め

          本物が生まれにくくなってしまった

          健康運動自然知性

          不思議な夢を見た。 屋根裏のような場所にいるようだ。そこからはガラス窓を通して下の部屋が見える。下の部屋は板張りのクラシックな雰囲気の作りになっていて、本がぎっしりと、しかし整然と詰められた本棚と、派手さはないがしっかりとした作りのL字型のソファ、そして観葉植物が置かれている。 そこはどうやら両親が所有している別荘のようなものだったらしい。私はふたりがそんなものを持っているなんて全く知らなかったし、そもそも我が家にそんな経済的な余裕があるなんて思ってもみなかった。 次の

          健康運動自然知性

          郷愁の西東京

          1ヶ月ほど前にロードバイクを購入した。それまではクロスバイクに乗っていたのだが、だんだんと長距離ライドをするようになり、もっと性能の高い自転車が欲しくなったのだ。 それまで愛用していたクロスバイクとは比べ物にならないほどの値段だったが、購入する車体を決めた時、私は「健康を購入した」と感じた。いい自転車を手にすることでより定期的に運動をするようになり、結果的に健康になるだろう、と思ったのだ。 その憶測は今のところ外れてはいない。以前よりも自転車に乗る頻度は増えたし、週に1度

          郷愁の西東京

          トンボに乗って

          母は常々「小さい部屋でいいから一人暮らしがしたい」といっていた。夫婦生活にピリオドを打ちたいという願いもあっただろうが、それ以上に、好きな時間に寝起きして、ひとり静かに好きなことをする、質素な生活に強い憧れがあったのだと思う。結局それは最後まで叶うことはなかった。 彼女の人生は、私からみてもあれやこれやに振り回されたものだった。もちろんその中には、子育て等、彼女自身が選んだポジティブなものもあったが、そうでないものの方が圧倒的に多かったはずだ。 昨年の桜が咲く頃に母はあの

          トンボに乗って

          優しさ、知性、センス

          お盆休み前の今日は、なんだかとてもバタバタしていた。一日中移動していたし、移動の合間合間にメールやら電話やらの対応をした。そういえばよく電話がかかってきた一日だったな。 忙しかった日というのは、意外にnoteに書くネタがないことが多い。今日もまさしくそんな日となり、私は夜中まで1文字も書けずに悶々としていた。 お風呂に入っている時にふと、ここ最近複数回「恋愛対象に求めるもの」について話したことを思い出した。今日の夜も友人たちの集まりでそんな話題になったし、この1週間で3回

          優しさ、知性、センス