インド物語-バラナシ⑦-

画像1 さっきまで同じ空を見ていたはずの猿が煙草をくすねていった。隣の建物に飛び移って逃げていく必死の後ろ姿に捕まったら殺されるんだという盗人の本質の尾が虹のように引かれていて感心した。ここまでくれば大丈夫という猿なりの境界線は私の目と鼻の先にあって煙草を苦い顔でペッと吐き捨てるまでを見た。美大生sがやってきて少し踏み込んだ話をした。自分は京都の美術大学で洋服を作っています。いつか尊敬するデザイナーに認められたいんです、と言った。陽の光も川の流れも静かだった。私も静かに彼の話を聞いた。彼は数年後にその夢を叶えた。

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