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人的資本開示における女性役員・役員候補育成・選抜ための人材アセスメント研修~人事制度を見直し、組織をグローバル化にする

1.女性役員育成・選抜の現状と動向

現代の企業経営において、多様な経営視点を持ち、女性活躍推進を人的資本経営に取り入れることは、ダイバーシティ的な経営戦略を生み出すための土壌となります。

女性役員は、その独特の経験と感性を活かし、チームの多様性と柔軟性を高める役割を果たします。能力開発に際しては、個々の女性の能力とキャリアプランに合わせたコーチングが必要です。これには、専門的な知識の習得だけでなく、リーダーシップやコミュニケーション能力の強化も含まれます。

昇進・昇格の選抜過程では、公平かつ透明性のある基準が求められることが重要です。これにより、女性たちは自身の能力を存分に発揮できる環境が整います。女性役員の育成と選抜は、単に数を増やすだけではなく、質の高いリーダーシップを育てることが肝要です。そのためには、組織全体で女性のキャリア支援を積極的に行い、多様な才能が活かされる文化を育む必要があります。


🔶上場企業における女性役員の状況

女性の活躍推進は、少子高齢化に伴う人口減少が深刻化する我が国において、多様な視点によってイノベーションを促進し、我が国の経済社会に活力をもたらすものであり、持続的成長のために不可欠なものです。

我が国の女性役員比率は過去10年間で徐々に上昇してきており、プライム市場上場企業における女性役員の割合は2022年の11.4%から2023年は13.4%に増加しました。一方で、諸外国の女性役員割合とのギャップは依然として大きく、東証一部上場企業またはプライム市場上場企業でみると、女性役員が一人もいない企業は減少してきていますが、2023年時点において、プライム市場上場企業の約1割の企業に女性役員が一人もいない状況にあります。

【出典】内閣府 男女共同参画局 女性役員情報サイト
https://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/yakuin.html

このような状況を踏まえ、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針2023)」においては、まずは日本を代表するプライム市場上場企業に係る女性役員比率の引上げを図るため、「2030年までに女性役員比率を30%以上とすることを目指す」等の目標を取引所の規則に設けることとし、東京証券取引所において、所要の上場制度が整備されました(企業行動規範の「望まれる事項」に規定され、2023年10月10日施行)。

【出典】内閣府 男女共同参画局 女性役員情報サイトhttps://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/yakuin.html

昨今の資本市場においては企業の女性活躍状況が投資判断に考慮されるようになっており、女性が企業の責任ある地位で活躍することは、グローバルな競争が激化する中で、企業の持続的な成長にもつながるものです。

【出典】:女性活躍・男女共同参画の重点方針 2023 (女性版骨太の方針 2023) (原案)

🔶東証プライム企業は「2030年までに女性役員30%以上」に 政府が「女性版骨太の方針」

東証プライム市場は、2022年4月の東証市場再編に伴い設立された最上位の市場で、2023年6月13日現在、1834社が上場しています。内閣府男女共同参画局の公表したデータによると、プライム市場に上場している企業の女性役員(取締役、監査役、執行役)の比率は2022年7月末時点で11.4%であり、約2割の企業では女性役員がおらず、国際的にも比較的低い水準に留まっていることが分かります。この10年間で女性役員の比率は徐々に上昇してきましたが、まだまだ改善の余地がある状況です。

日本の女性役員比率の推移(出典:内閣府男女共同参画局「⼥性活躍と経済成⻑の好循環の実現に向けて データ集」)

女性版骨太の方針では、プライム市場上場企業に対して数値目標の設定を行い、女性の登用を加速化することを重要かつ象徴的な第一歩と位置付けています。さらに、将来の女性役員候補の供給を目的とした「パイプラインの構築」も急務であり、女性リーダー研修の拡充やリスキリングによる能力向上の支援も行う方針です。このほか、女性起業家の育成・支援や、中小企業における両立支援と女性経営者の増加にも積極的に取り組むとしています。

【出典】:女性版骨太の方針2023 (女性活躍 ・ 男女共同参画の重点方針 2 0 2 3 ) 概要

2.女性役員育成・選抜における5つのお悩み・課題とは

上場企業における女性役員の数は徐々に増加しているものの、彼女たちの多くが社外役員であり、男性役員と比較して異なるキャリアパスをたどることが一般的です。このため、企業には女性の育成と登用を一層強化し、管理職から役員に至るまでの女性のキャリアパスを確立することが重要となっています。

国内企業において女性役員の登用が進んでいない背景は以下の課題と考えられます。

①女性役員・管理職における社内登用と育成制度が整えていない

現代企業における女性役員候補の社内登用と育成制度は、重要な課題として位置づけられています。多くの企業で女性の総合職の割合は増加しているものの、役員レベルでの女性の割合は依然として低いのが現実です。この背景には、女性が役員としてのキャリアを描きにくい環境が存在します。例えば、育成プログラムが男性中心の価値観に基づいて設計されている場合、女性特有のキャリアの課題やニーズに対応できていない可能性があります。また、女性役員候補を選抜する際の基準が不透明であることも、女性の登用を妨げる要因となっています。

②女性上級管理職・女性リーダーのロールモデル不足

女性が上位職に就く機会が限られているため、若手の女性社員にとってのロールモデルが不足しています。ロールモデルの不在は、女性社員がキャリアアップを目指す上でのモチベーションの低下を招く可能性があります。また、女性リーダーが少ないことで、組織内の意思決定過程における女性の視点が不足し、組織全体の多様性と創造性の向上が阻害される恐れがあります。

③仕事とプライベートのワークライフバランスが取れていない

女性役員候補の育成において、ワークライフバランスは重要な課題です。特に育児や家族の介護など、プライベートな責任を担う女性が多い中で、仕事と私生活のバランスを取ることは容易ではありません。企業が長時間労働を前提としたキャリアパスを設定している場合、女性が役員への道を諦めざるを得ない状況になることもあります。

④アンコンシャス・バイアスの影響

性別による無意識の思い込み、いわゆるアンコンシャス・バイアスは、女性役員の育成と選抜において大きな障壁となります。このバイアスにより、女性の能力やリーダーシップが適切に評価されないことがあります。また、男性が多数を占める組織では、女性が意見を述べにくい環境が生まれ、女性の能力が十分に発揮されないこともあります。

⑤業界によって女性採用比率が低い

多くの企業で、特に上位職における女性の採用比率は低いままです。これは、採用プロセスにおけるジェンダーバイアスや、女性が応募しにくい職種の存在などが原因と考えられます。女性が少ない職場では、新たな女性社員が入社しても定着しにくいという問題もあります。

これらの課題を解決するためには、企業が女性のキャリア支援に真剣に取り組むことが急務です。女性役員の育成と選抜は、単に数を増やすだけではなく、女性がその能力を最大限に発揮できる環境を整えることが重要です。

3.女性役員育成・選抜すため5つの対応策とは

女性役員を増やすことは、企業全体にとっても大きなメリットがあります。そのためには、性別に関わらず仕事と育児・介護を両立できるような支援制度や、公平な人材育成・人事制度を早急に整備することが必要です。また、経営層をはじめとする社内全員の意識改革が、女性管理職・女性リーダーの増加へとつながるでしょう。

①人事評価基準の見直し

女性役員候補の社内登用において人事(昇進・昇格)制度の見直しは、企業にとって重要なステップです。まず、女性が役員になるための明確なキャリアパスを設定することが必要です。女性が役員ポジションに就くための具体的な基準や条件を設け、透明性を高めることが重要です。これにより、女性社員が目指すべき目標と道筋が明確になり、モチベーションの向上にも繋がります。

②女性上位職のロールモデル増加

女性上位職のロールモデルを増やすためには、成功した女性リーダーの経験を共有し、彼女たちを積極的に表彰することが効果的です。また、女性リーダーによるセミナーやワークショップの開催も有効です。これにより、若手女性社員にとって身近な成功例が増え、キャリアアップへの意欲を高めることができます。さらに、女性リーダーが組織内での意思決定に積極的に関与することで、組織全体の多様性と創造性が促進されます。

③ワークライフバランス推進するための社内制度の見直し

ワークライフバランスを実現するためには、柔軟な勤務体系や在宅勤務のオプションを提供することが重要です。また、育児や介護などの私生活と仕事の両立を支援するための制度を整備することも必要です。これには、育児休暇や介護休暇の拡充、復職後のキャリアサポートなどが含まれます。企業がこれらの制度を積極的に推進することで、女性社員がキャリアと私生活のバランスを取りやすくなります。

④組織内においてアンコンシャス・バイアスを払拭する意識改革

アンコンシャス・バイアスを排除するためには、まずその存在を認識し、理解することが必要です。企業は研修やワークショップを通じて、従業員にアンコンシャス・バイアスの知識を提供し、意識改革を促すべきです。また、評価や昇進のプロセスにおいて、客観的かつ公平な基準を設けることも重要です。これにより、性別に基づく偏見を減らし、女性の能力が正当に評価されるようになります。

⑤戦略的に女性採用比率の向上

女性採用比率を向上させるためには、採用プロセスの見直しが必要です。これには、求人広告や採用基準におけるジェンダーニュートラルな表現の使用、女性に対する積極的なアウトリーチ、女性が応募しやすい職種の開発などが含まれます。また、女性が働きやすい職場環境を整備することも、女性の採用と定着には不可欠です。これにより、女性が企業内でのキャリアを積極的に築くことができるようになります。

組織における女性役員登用促進は、単に投資家をはじめとするステークホルダーに対して先進的なイメージをアピールするに留まらず、さまざまな面で企業に実益をもたらす効果があります。

4.人的資本開示と女性役員育成・選抜の関係性について

🔶人的資本開示による社内登用における女性取締役、執行役員、部長職の比率等の情報開示

女性活躍の情報開示においては、女性管理職比率に続き、女性役員比率にも注目が集まっています。女性役員の登用に向けては、部長職などの母集団を形成することが重要ですので、部長職の女性比率にも着目し、例えば、行政主導による女性活躍推進企業のデータにおいて、情報を開示していくことが求められています。

また、女性役員比率の情報開示としては、社外取締役などの外部登用が多い中で、内部登用による女性役員の存在についても開示していくことが重要です。現状では、執行役員における女性の内部登用の事例は出てきていますが、取締役への登用はまだ少なく、今後は経営方針の意思決定を行う取締役に女性が就任していくことが求められています。ガバナンス強化に向けて社外取締役の比率を高くするなど、内部登用のハードルが高くなることもあるため、執行役員と分けた形で、社内取締役の女性比率を開示していくことが大切です。

🔶機関投資家(ESG投資)対応としての女性役員登用の重要性の共有

コーポレートガバナンス・コードの改訂は、経営層に大きな影響を与え、女性の役員登用推進の検討が進む機会となっています。ESG投資が拡大する中で、機関投資家が女性役員比率を重視する傾向にあるため、その対応の重要性について経営層を中心に社内で共有し、積極的な女性役員登用の推進に繋げていくことが求められています。

🔶役員のサクセッション・マネジメントへのポジティブ・アクション

役員の人事においては、指名委員会や報酬委員会などの第三者委員会での選出が推進されていますが、まだトップ推薦や事業継承型による場合が多く、サクセッション・マネジメント(後継者育成のための抽出、教育、配置などの戦略)が描けていない企業が多いです。女性役員の内部登用を増やしていくためには、役員の選出方法とともに、役員像や評価基準などを明確にし、サクセッションマネジメントを整え、そこにポジティブ・アクションを取り入れていくことが求められています。

【出典】:役員登用を見据えた女性活躍に関する課題・取組の可能性

5.女性役員育成・選抜するために人材アセスメントの役割と重要性

女性役員の育成と選抜における人材アセスメントの役割と重要性は、非常に大きいものがあります。企業が女性役員を増やすためには、性別に関わらず公平な評価基準を設けることが重要です。人材アセスメントは、個々の能力や潜在力を正確に把握し、適切な育成プログラムやキャリアパスを提案するための基盤となります。

具体的には、アセスメントでは、リーダーシップ能力、問題解決能力、コミュニケーションスキルなど、役員に求められる資質やスキルを総合的に評価することが求められます。また、アンコンシャス・バイアスを排除し、性別による偏見なく評価を行うことも重要です。これにより、女性が役員としてのポテンシャルを十分に発揮できるようになります。

さらに、アセスメントの結果を基に、個々の女性に合わせた育成計画を策定し、彼女たちが必要とするスキルや知識を身につけられるように支援することが重要です。これには、メンタリング制度やリーダーシップ研修などが有効です。また、女性がキャリアアップを目指す際の障壁を取り除くために、ワークライフバランスを支援する制度の整備も不可欠です。

このように、人材アセスメントは女性役員の育成と選抜において、個々の能力を正確に評価し、適切なサポートを提供するための重要なツールです。企業がこれを効果的に活用することで、女性の潜在能力を最大限に引き出し、組織全体の多様性と競争力を高めることができるでしょう。

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8.会社概要:MSC|株式会社マネジメントサービスセンター

創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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