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人的資本開示における女性活躍推進ための人材育成・選抜~人材アセスメントで才能を見つけ、育てる

1.女性活躍推進とは

昨今の人的資本市場においては企業の女性活躍状況が投資判断に考慮されるようになっており、女性が企業の責任ある地位で活躍することは、「グローバルな競争が激化する中で、企業の持続的な成長にもつながるもの」とされています。我が国における女性の政策・方針決定過程への参画には一定の進捗がみられるものの、更に一層の取組が必要となっています。


女性活躍推進とは、女性の社会的・経済的な活動を促進し、男女平等な社会を実現するための取り組みを指します。これは、男女間の賃金格差の解消や女性のキャリア形成支援、育児や介護といった家族との両立支援、女性のリーダーシップ育成、女性の参画を促進する法制度の整備など、多岐にわたる施策を含みます。女性が社会的・経済的な活動を活発に行い、自己実現や経済的自立を実現できる社会を実現することを目指しています。また、女性活躍推進は企業や組織だけでなく、政府や地方自治体、社会全体のレベルでの取り組みも必要とされています。

企業において、女性の人材育成が重要である理由はいくつかあります。まず、女性は企業の中で多様性を持ち込むことができ、異なる視点やアイデアを持っています。これにより、新しいビジネスチャンスを見つけ出したり、問題解決能力を高めたりすることができます。また、女性はコミュニケーション能力やチームワークを持っており、組織の協力体制を強化することができます。さらに、女性のリーダーシップは従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める効果があり、組織のパフォーマンス向上にも繋がります。

2.女性活躍推進法について

女性活躍推進法は、2016年(平成28年)4月1日に施行されました。この法律は、女性の職場での活躍を促進することを目的としており、特に大企業に対しては女性の採用や昇進、管理職への登用などに関する計画の策定と公表を義務付けています。また、中小企業に対しても女性の活躍を支援するための取り組みが奨励されています。

2019年(令和元年)には、この法律に重要な改正が加えられました。改正の主な内容は、女性の活躍推進に関する計画の策定対象を拡大することです。具体的には、従業員数が301人以上の企業に対して、女性の活躍推進計画の策定とその進捗状況の公表が義務付けられました。これにより、より多くの企業が女性のキャリア支援や職場環境の改善に取り組むことが期待されます。

女性活躍推進法は、現代社会において企業の成長とイノベーションの源泉として、女性リーダーの育成を目指す重要な法律である。この法律の背景には、女性の能力を最大限に活用し、多様な視点を組織内に取り入れることの重要性があります。女性がリーダーとして活躍することで、新たな価値創造や問題解決のアプローチが可能となり、企業文化や業界全体の革新に寄与することが期待されています。

特に、人事担当者にとっては、女性活躍推進法は単なる法的義務を超えた意義を持ちます。この法律に基づく取り組みを通じて、女性の才能を見出し、育成することは、組織の多様性と競争力の強化に直結します。女性リーダーの存在は、チームのコミュニケーションや協働を促進し、より豊かな職場環境を実現するための鍵となり得るのです。

この法律の施行により、企業は女性のキャリア支援やリーダーシップ開発に注力する必要があります。例えば、メンタリングプログラムやリーダーシップ研修を通じて、女性が自身の潜在能力を発揮し、キャリアアップを図る機会を提供することが求められます。これは、女性だけでなく、組織全体の成長に寄与する投資であり、持続可能な発展への一歩と言えるでしょう。

3.女性活躍推進と人的資本経営の関係性について

女性活躍推進は、人的資本経営において重要な位置を占める要素です。持続的な成長を目指す企業にとって、多様な人材の能力を最大限に活用することは欠かせません。この中で、女性リーダーの育成と活躍は、組織の革新と競争力強化に大きく期待されています。

人的資本経営とは、従業員のスキルや経験、知識といった「人的資本」を重要な経営資源と捉え、その価値を高める経営手法を指します。女性活躍推進は、人的資本の多様性を拡充し、組織全体の創造性や問題解決能力を向上させる効果が期待されます。女性リーダーの増加は、新たな視点やアイデアをもたらし、組織の柔軟性や対応力の向上に寄与します。

人的資本開示の観点からも、女性活躍推進の取り組みは重要です。企業が女性のキャリア支援やリーダーシップ開発に力を入れていることを公にすることは、社外のステークホルダーに対して、その企業の人材育成への取り組みを示すことになります。これは企業の社会的責任と透明性を高め、投資家や顧客からの信頼を得るためにも有効です。

🔶「インパクトファイナンス(インパクト投資)のとは

「インパクトファイナンス(インパクト投資)」
出典:ESG金融ハイレベル・パネル ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース 「インパクトファイナンスの基本的考え方」 (https://www.env.go.jp/press/files/jp/114284.pdf)

「インパクトファイナンス」とは、次の①~④の要素全てを満たすものをいう。

・要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適 切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生 み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの

出典:内閣府|ジェンダー投資に関する調査研究報告書

🔶ジェンダー投資に関する調査研究アンケート結果

① 女性活躍情報が投資判断に活用されている。

・投資判断の全て又は一部において女性活躍情報を活用していると回答した機 関投資家等の割合は約 65%と約 3 分の 2 となった。
・女性活躍情報を活用する用途として、8 割以上の機関投資家等が、議決権行使 やエンゲージメントにおいて活用していると回答した。
・投資判断や業務において女性活躍情報を活用する理由として、「企業の業績 に長期的には影響がある情報と考えるため」が約 75%で最も多く、次いで「企業の優秀な人材確保につながると考えるため」が多かった。多くの機関投資 家等は、女性活躍は企業の長期的なリターンや人材確保につながると考えているといえる。
・女性活躍情報を投資判断において参考にする市場区分(東証)については、 「企業の市場区分は問わず参考にする」と回答した機関投資家等が約 4 分の 3 を占めた。女性活躍情報は、企業評価における基本的な指標として、投資判 断に活用されていることがうかがえる。

出典:内閣府|ジェンダー投資に関する調査研究報告書

②女性活躍情報に特化したファンド、及び/又は女性活躍情報をインテグレートし たファンドを運用している機関の約 6 割で、令和元年度(2019 年度)末と比較し てファンドの残高が「増加した」と回答

投資全体のうち、ESG 投資が占める割合について、「10%以下」が 40.3%と 最も多く、次いで「40%以上」が 37.2%であった。
・女性活躍情報に特化したファンド、及び/又は、女性活躍情報をインテグレー トしたファンドを「運用している」と回答したのは15.9%であった。
・女性活躍情報に特化したファンド、及び/又は女性活躍情報をインテグレー トしたファンドを運用している機関のうち、令和元年度(2019 年度)末と比 較して、女性活躍情報に特化したファンド、及び/又は女性活躍情報をインテグレートしたファンドについて、投資残高が「増加した」との回答は約6割であった。
・女性活躍分野のインパクト投資を行っていると回答したのは 4.8%であり、インパクト投資を行う上での課題として「インパクトの評価が困難」と回答する 機関投資家等が 21.1%で最も多かった。

出典:内閣府|ジェンダー投資に関する調査研究報告書

③女性活躍情報について、様々な情報が活用されているとともに、目標の明示や経 年変化が分かる形での開示、定量的な項目の開示を増やすことが求められている

・企業の女性活躍情報について、投資や業務において活用している情報は「女性 役員比率」(79.0%)次いで「女性管理職比率」(65.4%)、「女性従業員比 率」(44.4%)であった。また、「執行役員・部長の女性比率」も 38.3%と、 役員だけでなく様々な役職段階の女性割合が活用されている。
・女性割合以外では「女性活躍に関する取組方針」(43.2%)が最も多く、次い で「女性活躍推進にかかる取組」(38.3%)、「女性活躍の取組を踏まえた経 営戦略」(37.0%)、「女性活躍推進に関するトップのコミットメント」(37.0%) であった。なお、令和 4 年 7 月の女性活躍推進法に関する制度改正によって 労働者が 301 人以上の企業に開示が義務化された「男女の賃金の差異」(以 下「男女間賃金格差」という。)については 29.6%であった。企業の女性活躍情報について、今後開示を求める具体的な項目としては、「女性役員比率」が 72.5%で最も多く、次いで「女性管理職比率」(70.0%)、「女性活躍に関する取組方針」(53.8%)、「執行役員・部長の女性比率」(52.5%) であった。
・企業の女性活躍情報の開示に対して求めることとして、「将来の目標を明示」 が 62.5%で最も多く、次いで「経年変化が分かるように過去の情報を開示」 (60.0%)、「開示する定量的な情報の項目を増やす」(51.3%)であった。 現時点の数値だけではなく、目標に対する進捗や改善状況等が分かる形での 情報開示が期待されているとともに、「開示する定量的な情報の項目を増や す」と回答した割合も半数を超えているように、開示内容の拡充に対する期 待が示された。

出典:内閣府|ジェンダー投資に関する調査研究報告書

④企業における比較検証が可能な情報開示とその見える化及び学術的な実証研究が 進むことが期待されている

・令和2年度以降、一般的なESG投資の投資判断において重視するようになった項目として、「コーポレートガバナンス」が 56.9%、「気候変動による影 響」が54.9%、「GHG 排出量」が 34.3%であった。次いで「ダイバーシティ」、 「人権」がともに 31.4%、「人材育成」が 20.6%となった。
・ジェンダー投資の拡大のために必要な施策は、「企業の女性活躍情報の開示の 推進」(54.6%)、「社会におけるジェンダー投資への認知度の向上」(52.1%) のほか、その他の回答内容として「女性活躍情報が運用パフォーマンスを高め ることの因果関係の実証」との回答があった。比較や検証に十分な企業の情報 開示とその見える化が進み、学術的な実証研究が進むことが期待されている。
・ジェンダー投資の今後の方向性として「現在取り組んでいないが、関心はある」 が 31.1%、「現在は取り組んでいないが、今後検討したい」が 18.9%で、両 者をあわせると、現在は取り組んでいないものの関心がある又は検討したい と考えている機関投資家等は約半数に及ぶ。

出典:内閣府|ジェンダー投資に関する調査研究報告書

4.組織における女性活躍推進5つの課題やお悩みとは

女性活躍推進の道のりは、多くの企業にとって依然として険しいものがあります。女性の能力を最大限に引き出し、組織内でのリーダーシップを発揮させるためには、以下の課題が存在しています。

①ガラスの天井現象

女性社員が中間管理職以上のポジションに昇進しにくい「ガラスの天井現象」が依然として存在しています。組織風土や制度上の壁が、女性社員の上位ポジションへの進出を困難にしており、これが課題となっています。

②ワークライフバランスの課題

女性社員が家庭との両立をしながらキャリアを追求する際に難しさを感じることがあります。育児や介護など、家族のケアを担うことが多い女性にとって、働き方や労働時間の調整は大きな課題です。

③性別に基づくステレオタイプや偏見

女性に対する性別に基づくステレオタイプや偏見が依然として存在し、これが女性社員のキャリア形成やリーダーシップの発揮に影響を与えることがあります。性別による差別や偏見を根絶し、公平な環境を整備することが課題です。

④男性中心の組織文化や風土

組織文化や風土が男性中心であることが、女性社員の参画や活躍を妨げることがあります。ジェンダーに対する意識の向上と組織文化の変革が求められています。

⑤キャリア支援の不足

女性社員向けのキャリア支援制度やプログラムが不足しており、女性社員のキャリア成長を支援する体制が整っていないことが課題です。女性社員のスキルや能力の開発を促進する施策の充実が求められています。

これらの課題やお悩みを解決するために、組織は性別平等を推進し、女性の活躍を促進する施策を継続的に実施し、組織全体での意識改革や環境整備を進める必要があります。

5.女性活躍推進するための対応策とは

女性活躍推進は組織の競争力と持続可能性を高める重要な戦略です。ダイバーシティ&インクルージョンの推進、ガラスの天井の解消、キャリア支援プログラムの充実、各種制度の活用、昇進・昇格制度の見直し、そして多様性を尊重する採用政策の実施は、女性リーダーの育成と選抜における核心的な取り組みです。

①ダイバーシティ&インクルージョンの推進

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進は、女性活躍推進の基盤を形成します。企業は、多様なバックグラウンドを持つ人材が共存し、互いの違いを尊重する文化を築くことが重要です。具体的には、従業員に対するダイバーシティ研修の実施、多様な価値観を反映した企業ポリシーの策定、そして異なる視点を持つ人材の意見を積極的に取り入れることが重要です。このような取り組みにより、女性社員が自身の能力を存分に発揮し、リーダーとして成長する土壌が育まれます。

②ガラスの天井の解消

ガラスの天井の解消は、女性活躍推進において中心的な課題です。企業は、女性が上位ポジションに進出しやすい環境を整備するために、昇進・昇格のプロセスを透明化し、性別に基づく偏見を排除する必要があります。また、人材アセスメントの際には、性別に依存しない公平な評価基準を設けることが重要です。これにより、女性リーダーの選抜が公正に行われ、組織内のジェンダーバランスが改善されます。

③人事(昇進・昇格)制度の見直し

人事制度の見直しは、女性リーダーの育成において重要なステップです。昇進・昇格の基準を明確にし、性別による偏見が介入しないような評価システムを構築することが求められます。また、女性社員が昇進・昇格の機会を平等に得られるよう、選抜プロセスに透明性を持たせることが重要です。

④多様性を尊重する採用政策の実施

多様性を尊重する採用政策の実施は、組織のダイバーシティを高めるために重要です。採用プロセスにおいて、性別に偏らない評価基準を設け、多様なバックグラウンドを持つ候補者を積極的に採用することが重要です。これにより、組織は多様な視点とスキルを持つ人材を獲得し、イノベーションの促進につながります。

⑤女性キャリア支援プログラムの充実

女性社員のキャリア支援プログラムの充実は、彼女たちの職業的成長を促進します。メンタリング制度の導入やリーダーシップ研修の提供、キャリア開発に関するワークショップの実施などが有効です。これらのプログラムを通じて、女性社員は自己実現の機会を得るとともに、組織内での役割拡大に向けたスキルと自信を身につけることができます。

⑥ワークバランスライフ実現するために、各種福利厚生制度の活用

女性社員がキャリアと私生活の両立を図るためには、柔軟な勤務体系や育児・介護休暇制度などの各種制度の活用が重要です。これらの制度を積極的に利用しやすい環境を整えることで、女性社員は仕事と家庭のバランスを取りながら、キャリアを継続することが可能になります。また、これらの制度の利用を促進するためには、組織内での意識改革が必要です。

これらの対策を実施することで、女性活躍推進は効果的に進み、組織全体の競争力と持続可能性が向上します。女性リーダーの育成は、単にジェンダー平等を実現するためだけではなく、組織の多様性と創造性を高めるための重要な戦略です。

6.女性活躍推進における人材アセスメントの重要性について

女性活躍推進における人材アセスメントは、企業の多様性と競争力を深化させる上で極めて重要な役割を担います。公正かつ客観的な人材評価を実施することにより、女性リーダーの育成と彼女たちの適正なポジションへの配置が実現可能となります。特に、コンピテンシーに基づく人事評価は、女性社員の能力を適切に評価し、彼女たちのキャリアパスを明確にするための重要な基盤となります。

現代の人事制度においては、個々の能力や実績に基づく評価が重要視されています。このため、リーダーシップ、問題解決能力、コミュニケーションスキルなどのコンピテンシーを評価の基準として設定し、女性社員が公平に評価される環境を整備することが重要です。

人材アセスメントを通じて、女性リーダーに必要なスキルや資質を特定し、それに基づく教育やトレーニングを提供することは、女性社員の能力発揮に大きく寄与します。女性活躍推進は、女性が自身の能力を十分に発揮し、組織全体の成長に貢献することを目指しています。人材アセスメントを通じて女性社員の能力を正確に把握し、適切な育成とキャリア支援を行うことが、企業の真のダイバーシティ実現と持続可能な成長への道を開くことになるでしょう。

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9.会社概要

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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