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【七転び八起き】

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起業からの七転び八起きの一転び目から八起き目までをまとめてみた。
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2023年11月の記事一覧

【七転び八起きの三転び目②】

【七転び八起きの三転び目②】

 平日でも普通に満席だったし、予約の電話は毎日何度も鳴った。
 半分イタズラで載せたバカデカい広告の効果は絶大で、BRASS MONKEYは移転オープンから連日満席で大盛況だった。少人数から団体客までバランスよく来てくれて、大学生からサラリーマンまで客層も幅広く取り込めた。

 料理をしていて楽しかった。
 オープンキッチンの店内はお客さんの反応がダイレクトに伝わってくる現場だったし、もちろん悪い

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【七転び八起きの三転び目③】

【七転び八起きの三転び目③】

 数字にすると分かりやすいから包み隠さず書いてみるけど、BRASS MONKEYの場合、12月なんかは家賃5万円の物件で250万ぐらいの売上があって、社員は雇わずに自分と最小限のアルバイトたちだけで営業していたから、経費を色々と払ってもザックリ100万ぐらいは利益が出ていたかな。
 12月と1月は特に年間でも売上の高い月だから、ローシーズンはもちろん沈み込むわけで、毎月そのくらい売り上げていたわけ

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【七転び八起きの三転び目④】

【七転び八起きの三転び目④】

 移転したBRASS MONKEYを一緒に支えてくれていた大学生の卒業は大きな転機だったけど、それは精神的な転機であって真鍮製の猿はいつも通り止まることなく走り続ける。

 そのまま大学を卒業したらお店で雇って一緒に働けないかなと真剣に考えたりもしたし、一緒に働きたいとも言ってくれていたけど、将来の安定や経済的なことを考えるとそれはどちらにとっても現実的なことではなかった。内定決まってたのトヨタだ

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【七転び八起きの三起き目①】

【七転び八起きの三起き目①】

 メニューも一新して店内も改装してワインセラーも購入して業者が持ってきたスペインワインのサンプルを何杯も何本も酔っ払うまで飲んで服装も変えて高級食材も色々と仕入れてみたりして、ELECTRIC SHEEPは生まれ変わった。改装の資金をお店で知り合ったフラメンコ教室とのコラボで行った『スパニッシュナイト』というイベントである程度工面できたのも運が良かった。

 客層はガラッと変わり、ある程度の年齢層

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【七転び八起きの三起き目②】

【七転び八起きの三起き目②】

 BRASS MONKEYの週末は団体客が何回転もするような状況で、さらには知り合いの誘いもあって製薬会社のお弁当なんかにも手を出していた。
 その頃は製薬会社が病院で製品説明会をするときに提供するお弁当のルールも緩くて、3000円〜5000円ぐらいが相場だったかな、今は上限が定められていたと思うけど。とにかくそれはお金になった。3000円×50食とかもざらだったから。そこに刺さってた飲食店はけっ

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【七転び八起きの四転び目①】

【七転び八起きの四転び目①】

 ELECTRIC SHEEPの店長はレゲエのセレクターをしていて、分かりやすく言うとレコードを回すDJね、HIP HOPクルーの一員としても活動していたから、出演するイベントがあったりしたら店の営業が終わってからクラブに顔を出したりすることが多くなった。
 お客さんにもDJやシンガー、ダンサーの子たちがいっぱいいたから、自然と友達が増え、気がつけば毎週末クラブで遊ぶようになってたんだけど、まだ旭

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【七転び八起きの四転び目②】

【七転び八起きの四転び目②】

 流行りの店への葛藤みたいなのが自分の中にあって、その頃はアイリッシュパブみたいなスタイルに対するそれが強かった気がする。旭川にも増え始めていたからね。
 そういう店に行ってフィッシュ&チップスとかがメニューにあると注文してみてたんだけど、オーストラリアに住んでた頃に食べていたそれとは違う日本化された料理、既製品を上手に使って。悪くはない、むしろクオリティは高い。
 だが気に食わない。そういうのじ

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【七転び八起きの四転び目③】

【七転び八起きの四転び目③】

 さて、groveの店長はもともと地元のイタリア料理の老舗で店長を任せれていたコだから、料理の技術はしっかりしてるし、店舗管理も経験があるから、BRASS MONKEYの方はそのコに任せても大丈夫だと思っていた。けど、それは大きな間違いだった。
 だからこそ任せるべきじゃなかったと今になって思う。BRASS MONKEYの料理や店に対する愛情や愛着なんかがない状態でのスタートになってしまったから。

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【七転び八起きの四転び目④】

【七転び八起きの四転び目④】

 BRASS MONKEYを残すか、groveを残すかの2択。冷静に考えれば間違いなく前者を残すのが正解だし、それは分かっていた。
 けど、そこで邪魔をしたのがプライドと煩悩ってやつで、より良い選択肢を理解していても、それが後退だと錯覚して間違った道を選んでしまう。
 もしあのタイミングでBRASS MONKEYを残していたら今の人生はなかったと思うから、それはそれで正しかったとは思うんだけどね、

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【七転び八起きの四転び目⑤】

【七転び八起きの四転び目⑤】

 ラスベガス大会にエントリーを決めてから、その前に日本でもJAPAN PIZZA EXPOというフリースタイルピザアクロバットの日本大会が初開催されることを知って急遽エントリーすることに。

 第1回大会はラバー部門というのがあったからそれにエントリーしてみた。恋人同士の部門ではない、ゴム製の練習用ラバーを使用してパフォーマンスする部門だ。
 実はラスベガス大会にエントリーしていながら、どんな生地

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【七転び八起きの四起き目①】

【七転び八起きの四起き目①】

 時系列がハッキリしていないけどせっかくだからハッキリさせないまま箇条書き気分で書いてみる。

 確かgroveは全品500円という恐ろしい実験的なアイデアを試してみたんじゃなかったかな。ついでに色んなイベントを打ち出したのもこの時期だったと思う。
 とにかく色んなアイデアを思いついたらやってみてなんとか成功を手繰り寄せようと必死だったんだ。
 前菜もパスタもピザもメイン料理も全て500円というシ

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【七転び八起きの四起き目②】

【七転び八起きの四起き目②】

 大した技術もないくせに、場慣れさえすれば日本でもラスベガスでも優勝できるという自信があった。圧倒的に楽観的なこの脳の欠陥こそが才能というものなのかもしれない。

 地元のフリーペーパーやSNSでパフォーマンスのコンテストやイベントの文字を見つけたらなんでも良いから出場したり出演交渉したりしてみて、あわよくば賞金を狙う。あの頃の職業はなにかと聞かれたらそりゃバウンティハンター、賞金稼ぎだ。
 なに

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【七転び八起きの四起き目③】

【七転び八起きの四起き目③】

 一般部門のグランプリはフリースタイルフットボールのコが獲得して、自分はアダルト部門のグランプリになった。
 20万円貰えるラッキーぐらいに思っていたけど、受賞した後はローカルのテレビ局とか新聞とか雑誌の取材を受けたり、色んな人に声をかけられて、貰った名刺が花札かってぐらいの束になって困惑したりもした。
 さらにグランプリおめでとうで終わりではなく、1年間はエゾメンとしてメディア出演したりしなきゃ

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【七転び八起きの五転び目①】

【七転び八起きの五転び目①】

 JAPAN PIZZA EXPOにもラスベガスにもまた挑戦したよ、もちろん準備万端、優勝する気でね。だが、そんなに甘いもんじゃなかった。

 JAPAN PIZZA EXPOは今度はラバーじゃなくシングルアクロバット部門にエントリーしてみた。結果は4位だったかな……3位だった気もするけど2位まで予選通過みたいなルールだった気がするから、予選落ちとしか記憶になく、正直ハッキリ覚えていない。

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