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【七転び八起きの三起き目②】

【七転び八起き】マガジン

 BRASS MONKEYの週末は団体客が何回転もするような状況で、さらには知り合いの誘いもあって製薬会社のお弁当なんかにも手を出していた。
 その頃は製薬会社が病院で製品説明会をするときに提供するお弁当のルールも緩くて、3000円〜5000円ぐらいが相場だったかな、今は上限が定められていたと思うけど。とにかくそれはお金になった。3000円×50食とかもざらだったから。そこに刺さってた飲食店はけっこうそれで稼いでいたと思う。
 朝早いのが難点ではあったけど、ランチで来るか来ないか分からないお客さんを待つよりよっぽど効率的だったし、広告宣伝費もかからないからね。
 500円ランチで世間が賑わってる頃に、勉強会や説明会やらで3000円〜5000円のお弁当を経費で手配する製薬会社。すごい世の中だなと思ってたよ。

 ELECTRIC SHEEPは仕入れをある程度共有する程度で、基本的には独立した経営になったから、そこからの収入はなくなったけど、支出もほぼなくなったから、ビジネス的にはプラスになった。もちろん精神的にも楽になったし。

 バルセロナに行ったことで、料理に対するモチベーションも上がっていて、イタリア料理に関してももっと良いものを作りたい熱が高まっていた頃。
 ちょうどそのタイミングで富良野でベーコンやソーセージを作っているバッジョ好きと意気投合したこともあり、食材のクオリティを上げてそれを活かした料理をすることに楽しみを覚え始めたりもしてた。
 生フルーツのカクテルに挑戦してみようとか、売上がある分ある程度良い食材に手を出す余裕も生まれていたってのもある。

 料理+飲み放題120分で2980円という今考えるとアホみたいに破格なプランで週末は団体客を集め、クオリティの高い料理を出すことでその後に上のプランでの集客に繋げたり。
 全て手作りにこだわったからこそ出来たことで、仕込みの量はハンパなかったけどやりがいはあった。
 これは飲み放題の魔法で、人数が増えると原価率が下がるから出来たことでもある。年齢層にもよるけど、BRASS MOKNEYのターゲットである若い人たちはビールをあまり飲まないし、団体の中には必ず2〜3名ノンアルコールの人がいて、その人たちが勝手に原価率を下げてくれる。烏龍茶3杯でも飲み放題なら2000円
払うじゃない、そういうこと。
 ドリンクで下がった原価の分を料理の食材に投資してクオリティを上げる。その循環が上手くいっていた。
 サラリーマンや自衛隊の飲み会がよく入る店だとそもそも飲み放題ってシステムがもう無理だからやめた方が良いけどね。

 難しく考えずに直感にしたがってただ好きなことを楽しく好き勝手にやる。それがたまたまハマっていたからこそ上手くいっていたけど、変にビジネスというものを考えだして、経営者という立場を意識してからそれは少しずつ変わっていくことになる。

 残念ながら悪い方にね。

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