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【七転び八起きの四転び目④】

【七転び八起き】マガジン

 BRASS MONKEYを残すか、groveを残すかの2択。冷静に考えれば間違いなく前者を残すのが正解だし、それは分かっていた。
 けど、そこで邪魔をしたのがプライドと煩悩ってやつで、より良い選択肢を理解していても、それが後退だと錯覚して間違った道を選んでしまう。
 もしあのタイミングでBRASS MONKEYを残していたら今の人生はなかったと思うから、それはそれで正しかったとは思うんだけどね、もちろんそれは結果論

 groveはついに自動的に本人的には不本意だったかもだけど店長を任されることとなったパティシエに任せて、自分はBRASS MONKEY最後の営業に集中することにした。
 よく考えたら最初の数ヶ月だけ手伝う予定で働いてくれてたパティシエが最後まで残ってくれてたあたり、なんとも数奇な運命ってやつを感じる。

 groveを選択した理由は他にもあって、その1つがそのパティシエも含む従業員たちである。より多くの雇用を抱えていたのはgroveの方だったから、また1人に初心に戻ってBRASS MONKEYを立て直す方が健全だとしても、それを選ぶことはできなかった。
 思えばひとりで始めたお店だったけど、いつでも隣に相方みたいな奴がいて、そいつらが去っていった寂しさや空虚感もあったのかもしれない。

 もう1つは譲渡の問題。誰かに厨房機器や内装を買ってもらおうと思っていたから、すでに返済の終わっているBRASS MONKEYの方が売りやすかったし、8年間ある程度人気店としての知名度もあったから売り込みやすさもあった。
 実際すぐに90万円で売却が決まったしね。金額的にそれが高いのか安いのかはよく分からなかったけど、即金で支払ってもらえると言われ、迷うことも交渉することもなくそれで即座に手を打った。
 すぐに現金が欲しかったからね、そのくらい追い込まれていたってこと。

 そんな追い込まれた状況で、突然ピザアクロバットの世界大会に出ると言ってラスベガスに行くあたりがそもそもイカれているわけだけど、その我の強さとクレイジーさが長所でもあると自分では思っている。

 自分自身に宣伝力があればもっと集客できるし、広告宣伝費も安くすむ、じゃあ世界チャンピオンになれば良い。
 バカだけどシンプルな考え方。小倉優子の焼肉屋が流行ってるのは小倉優子が有名だからだろ、という叫びからのスタート。
 芸能人でも目指すのかよって、その頃はまだインフルエンサーライバーなんて職も言葉もなかったし、YouTuberも職業として確立していない頃だったからよく言われた。
 今ですらまだ理解が進んでいないぐらいだから、所謂そういうとこを目指したってことなんだけど、まわりの理解は得られなかった。嘲笑の対象にはなれたけど。

 厳密に言うと初期衝動としてはピザアクロバットで世界チャンピオンを目指したわけではなく、広告費を節約するために自分が有名になるという結果から逆算して大会に挑戦したと言うこと。
 もちろんピザアクロバットが楽しかったのは間違いないけど、動機は不純だったし、南米で生きるためにボール蹴ってる子供たちみたいな感じのハングリーさで、もちろんそれには劣るが、それで成功するしか道はないと感じていた。
 金がないって時に旅費とか参加費とか払うのは痛かったけど、将来的にそれは取り返せるという根拠のない自信が背中を押していた。

 短期的にはそれが原因で大きな負債を背負うことになったわけだが、長期的にはその投資がその後の全てを決定づけた。

 Hello Las Vegas 調子どう?

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