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【七転び八起きの四転び目⑤】

【七転び八起き】マガジン

 ラスベガス大会にエントリーを決めてから、その前に日本でもJAPAN PIZZA EXPOというフリースタイルピザアクロバットの日本大会が初開催されることを知って急遽エントリーすることに。

 第1回大会はラバー部門というのがあったからそれにエントリーしてみた。恋人同士の部門ではない、ゴム製の練習用ラバーを使用してパフォーマンスする部門だ。
 実はラスベガス大会にエントリーしていながら、どんな生地を使用するのかすら全く知らないままだった。そりゃそうだ、練習用のラバーがあるのも知らずにおしぼりやバスマットで練習してた奴なんだから。
 旭川に大会で使う生地とか、細かいルールとか、そんなのを知ってる人なんて誰もいなかったから、じゃあ直接ラスベガスでまずは見てくる、ついでに優勝してくる……そんな浅はかな奴は自分以外に見たことがない。いや、自分のまわりに何人かいる気もするが。
 もちろんホームページには概要やルールなんかも記載されているんだけど、まぁとにかくちゃんと読まない。そこには理由も理屈もない、ただそういう奴ってだけ。

 結果だけ先に書くと日本大会惨敗、ラスベガス大会惨敗という感じで見事な2惨敗。

 日本大会で出場者たちが使い終わった生地を触ってみることで、競技で使う生地の感触を知ることが出来たのは収穫だった。
 日本大会の舞台袖で触った生地の感触だけを頼りに次のラスベガス大会に挑んだと思うと、ラスベガス大会初出場時のパフォーマンスは立派なものだったと思う。
 なんせ初めて競技用の生地で練習もなくいきなりラスベガスのステージに立ってパフォーマンスしたんだから、その発想と度胸だけは天才かもしらん。いや、間違いなくアホだけど。

 ラスベガス大会(International Pizza Expo)に出場した経験がその後の自分に与えた影響は大きなものだった。なんせピザ好きたちが集まった、世界のピザビジネス関係者たちが集った大会だ。こんな夢みたいな世界があるもんなのかと、頭の中はピザでいっぱいになったよ。性に目覚めた中2男子みたいにね。

 しかし、アメリカから帰ってきた自分を待っていたのは新聞の記者や雑誌のカメラマンやテレビ番組のインタビュアーなんかではなく、多額の支払いと返済たち。
 日本一にも世界一にもなれなかった、夢見たような何者にもなれなかった現実。
 さぁ、どうやって払おうか。

 本来なら金策に駆け回らなければならないような状況だったけど、それよりラスベガスでも日本大会でも何もできなかったという悔しさの方が強くて、そんな中でひとつの解決策を見つけることになる。

 そろそろ起き上がろうか。

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