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【七転び八起きの四転び目③】

【七転び八起き】マガジン

 さて、groveの店長はもともと地元のイタリア料理の老舗で店長を任せれていたコだから、料理の技術はしっかりしてるし、店舗管理も経験があるから、BRASS MONKEYの方はそのコに任せても大丈夫だと思っていた。けど、それは大きな間違いだった。
 だからこそ任せるべきじゃなかったと今になって思う。BRASS MONKEYの料理や店に対する愛情や愛着なんかがない状態でのスタートになってしまったから。
 それなら辞めていった大学生や女の子の方が技術や知識は負けていたとしても店への愛が強い分、全然良かった。
 そんなことにすら後から気がつくなんて、人間って間抜けな生き物だよね。

 結果、数字にもハッキリと表れて、毎年1番のピークである12月の売上は200万円〜250万円ぐらいがアベレージだったんだけど、その年は一気に70万円まで急降下した。
 同時にgroveの売上は過去最高を記録したという皮肉。
 それは一概に人的な要因と決めつけることはできない。groveがイタリアンに切り替えたことで競合店になってしまったことや、常連客が来なくなったりgroveに流れてしまったこと、そしてお店としての寿命みたなモノも合間っての結果だったんだと思う。

 一番大事な幹がへし折れた瞬間だった。
 groveをある程度立て直せそうだと思った矢先の出来事だったから、信じられない気持ちもあったし、正直焦ったし、心が折れそうにもなった。
 そしてその後、その店長とは大喧嘩をして、というか一方的に自分がブチ切れて喧嘩別れをすることになる。
 詳細を書くのはあまり気が乗らないから比喩で表現するけど、沈みそうな船なら見捨てて次の船に乗り込みましょうって動きを見せたから、じゃあさっさと飛び降りろよって背中を蹴っ飛ばしたってそんな感じだったかな。

 調理師学校から研修に来てそのままバイトをしてくれて、卒業後はBRASS MONKEYに就職したいと言ってくれていたコが就職を取りやめたのもキツかった。
 自分がBRASS MONKEYにいない間にいったい何が起きていたのか、それは今でも分からないけど、たぶん知って良い思いはしないから、知らなくても良いかなと思ってる。

 迷走しながら、経済的な基盤も失って、あとは沈むか倒れるかの二者択一。それでも必死に足掻こう踠こうとするのが人間ってもんで、もちろん例に倣ってそうしたさ。

 選択肢はあったけど、結果はどれも同じってのは知っていた。

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