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【七転び八起きの四転び目①】

【七転び八起き】マガジン


 ELECTRIC SHEEPの店長はレゲエのセレクターをしていて、分かりやすく言うとレコードを回すDJね、HIP HOPクルーの一員としても活動していたから、出演するイベントがあったりしたら店の営業が終わってからクラブに顔を出したりすることが多くなった。
 お客さんにもDJシンガーダンサーの子たちがいっぱいいたから、自然と友達が増え、気がつけば毎週末クラブで遊ぶようになってたんだけど、まだ旭川のクラブもそれなりに盛り上がっていた頃、音楽もダンス観るのも好きだったしね。

 よく行っていたクラブは同い年のDJがオーナーで、そこは地下2階と地下1階がまとめて1つになってるテナント。地下2階がクラブ、地下1階が居酒屋って作りになっていて、クラブスペースは最大150〜200人ぐらい入る箱だったかな。週末の夜はまずそこのイベントをチェックするのが夜遊びの基本みたいな感じだ。

 地下1階の居酒屋はクラブとは別経営で、オープンから1年ぐらいでその場所から撤退してしまった。そこは50人ぐらいは入るスペースでキッチンもあったし、冷蔵庫なども撤去されずに残っていたから、そのままそこで何かをやるのはアリだなと思ったんだ。調子に乗っていたから。

 事業を拡大したいというのもあり、クラブのオーナーのDJから誘いがあったときには迷うことなくOKした。もちろん残置物や音漏れのチェックもして。
 クラブで遊んでるときの休憩所、クラブに行く前にメシを食べに行くような店、漠然とだけどそんなイメージで、集客には困らないという算段を立てて。

 ちょうどその頃、BRASS MONKEYのオープン前に肩慣らしでバイトしていたイタリア料理店の雇われ店長がお店を辞めてフリーになり、雇って欲しいという相談を受けていたから、このタイミングはチャンスだなとそう思った。
 さらに後輩のパティシエもパティスリーをやめてフリーになったから接客業とか料理、レストランのデザートもやってみたいと言ってくれて期間限定で加わることに。
 他にも地方から旭川に来た飲食業経験者を雇えないかと紹介されたり、もう鬼ヶ島に乗り込む準備は万端って感じでね、桃太郎かドロシーかって気分で歩き始めてた。
 猿のくせして桃太郎気取りかと。

 店のイメージは小さな森、名前は『grove』に決めた。猿→羊→森、まさか結果的に猿が森に帰って行く皮肉な言葉遊びが完成するとはね、当時は思ってもみなかったよ。

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