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moyami
2024年5月23日 23:46
君は、この世界に足を踏み入れる。それはもう恐る恐る。その足の先に、ガラスの破片のような物は落ちていないかと確かめながら。裸足で、現実という名の地面を踏み締める。アスファルトの熱を足の裏に感じながら。君は、この世界のことをよく勉強してきたみたいで、「靴を履いていないのはきっと僕だけだ」と呟いた。でも君は、靴を履くことを選ばなかった。ある日、人集りの中色んな靴に囲まれながら、君の素足は
2024年4月24日 01:16
「こういうの自分で撮っててさぁ、」この後に、続く言葉を私は知っている。私のSNSを目の前でスクロールしながら、冷たい視線を注ぐ彼が、次に口にする言葉を。「恥ずかしくね?」ほら、そういうと思ったよ、と私は頬が緩んだ。「どうでしょう?」そうやって笑いながら、真っ白なマグカップを口元へ運ぶ。私は彼を嫌いながら、同時に隅々まで彼の心理が手に取るように分かる。一生懸命になることで
2024年4月20日 14:27
黒にピンクのスライド型のガラケーを彼が手にした。何を見せたんだっけ。何を、彼に、見せたかったのだろうか。真ん中の一番後ろの席にいる彼と、その左斜め前にいる私。その周りに居た人たちの顔を一人も思い出せないほど、私の視界を彼が占領していた。大それた恋をしていたわけではない。それでもこうして夢にまで出てくるのは、彼の"優しさ"があるからだ。珍しい、"優しさ"が。スラッとした
2024年3月6日 22:07
粗く、ざらついた、心臓が動くたびに、吐血するのである。「うん、言いたいことはわかったよ」そんな一言と共に絶望を味わう。だってさ、だって、私たちきっと同じようにこの世界を読んでいると思っていたよ。同じように読んでいるからこそ、同じような走馬灯すら目にするのだろうと思っていたんだ。“わかってもらえなかったこと”というのが、私の人生にはあまりにも多くて、"わからせなきゃ"という汚い感情が自
2024年3月2日 01:33
息継ぎをした瞬間に彼が口にした、「空白」という言葉が、波打つ夜。水面を弾きながら進む石のように、言葉を放つ。そして、時に浮かび上がる点を感じながら、"今"という点を見る。ある地点においての点は、果たしてどこの点と結ばれるのだろうか。もしもマグカップの底と過去が繋がっていたならば、私たちはそこから過去の自分に会いに行くことを選ぶだろうか。それとも、こうして珈琲を啜りながら見ているくら
2021年4月14日 17:12
街中で聞こえてくる「かわいい」と、「楽しかった」という感情はどちらの方がより軽率なものなのだろうか。もしかするとどちらもそうではないのかもしれない。無意識のうちに、素直に口から溢れでた、温かいままの感情なのかもしれない。「楽しかったらそれでいい」なんて言葉はとても便利であって、肯定文にだって言い訳にだって使えてしまうのだ。「楽しい」という感情は割と手の届きやすいところにある
2021年4月4日 15:10
お花見だなんて気分でもない時に、桜を見ながら歩こうなんて誘いを受けた。桜がどこに咲いているのかすら知らない私と、このルートが綺麗なんだと率先して歩く目の前の人。桜の景色よりも、公園で食べたサンドイッチをよく覚えている。知らない人が犬の散歩をしながら話しかけてきて、きっと話しかけてきた人は日本人じゃないねなんて話をした。それ以外は何も思い出せない。その日本人ではないで
2020年2月22日 19:03
彼女は、事務もできて、他の仕事もなんなくこなすけど「俺なんかさ…」君も、パソコンできるし、此処に居なくても生きていけるだろうけど「俺なんかさ…」彼はさ、普通の仕事が本当はできるはずなんだよ。だから、どこに行っても困らないけど「俺なんかさ…」彼は、いつもこうやって卑下し、自分のことを話してきていた。暖かい癖に、孤独な人だと思った。一度彼に尋ねてみたことがある。「寂しくないです