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空白を縫う

息継ぎをした瞬間に彼が口にした、「空白」という言葉が、波打つ夜。


水面を弾きながら進む石のように、言葉を放つ。そして、時に浮かび上がる点を感じながら、"今"という点を見る。

ある地点においての点は、果たしてどこの点と結ばれるのだろうか。


もしもマグカップの底と過去が繋がっていたならば、私たちはそこから過去の自分に会いに行くことを選ぶだろうか。

それとも、こうして珈琲を啜りながら見ているくらいがちょうど良いのだと、鑑賞するのだろうか。


数年後、数十年先を語る彼は、マグカップの底から未来を見ようと試みるのかもしれない。

彼が語る"絶望"に、隣り合った"解放"が見えた気がした。そして何となく思い出した花の塊が頭を過ぎる。彼の感性と、花を贈るような人の感性が天秤に乗せられる。

綺麗だと言われるものを綺麗だと言えない自分の感性が通過する。

「俺らみたいなさ...」と彼が続けるその瞬間、泥沼に片足を突っ込んだかのようなずっしりと感覚を思い出し、この深さを言葉を介さず共有できている喜びを噛み締めるんだ。


彼が思い描くビジョンに、ファンタジーが訪れることを願いながら、現実という空間について考える。

宙に舞う無数の点を見上げる彼が、どれか一つを選んだ時、その時の最善点を差し出せる人間でありたい。


クロールのように息継ぎをしながら空白を縫い続けた夜は、きっと、"何か"という出来上がりを創り出すのだろう。




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