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てのひらの物語

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物語を綴るように、体験を通したエッセイ。
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#海外生活

彼方人の11月

彼方人の11月

11月は、こちらの国の言葉では ”死者の月” と書く。

第一週目の土曜日は「万世節」で、死者を弔う日であり、ハロウィンの習慣はないが、「万世節」は大切な日とされていて、故人を偲び、墓参りをしたりもする。

だから11月は、彼方人の月だ。

彼方人とは
あの世の者、別世界の人
他国から来た者のことも指すらしく
これは自分のことでもあるな…と思う。

私はこの国では永遠に異邦人だ。

彼方人は
"あ

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氷の芸術

氷の芸術

朝、海沿いを歩いていると、凍っていた海が溶け出しており、海風に吹き付けられた無数の氷が岸辺に打ち上げられている風景を目にした。
薄いガラスの層が幾重にも積み重ねられているようで、一枚ずつ手に取り眺めたくなるような光景だった。

透明な氷のプレートが朝陽にきらきら輝いて美しい。
まるで自然が作り上げた現代アートのようだ。

とりあえずスマホで撮影して、翌日は一眼レフ持参で同じ場所に駆けつけたものの、

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焚き火がしたい

焚き火がしたい

人はどうして火を見ると落ち着くのだろう。
他の動物たちは恐れて逃げてゆくというのに。

パチパチ木の枝が爆ぜる、しゅんしゅん薬缶のお湯が沸く、ゆらゆら自在に形を変えながら揺らめく炎は、いつまででも眺めていられる。
ずっと炎を見ていると催眠術にかけられたようにだんだん瞼が重くなり眠たくなってくる。これぞ焚き火ヒーリング。

私は一年中、オトーサンに焚き火がしたいと言っている。
とくに夏から冬にかけて

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