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月曜日の図書館61-70

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2021年4月の記事一覧

月曜日の図書館 進化した手当て

月曜日の図書館 進化した手当て

人生で初めて包丁で手を切る。切る、というよりあごの部分が手のひらにずぶんと刺さってしまった。とりあえず患部を押さえつつ作りかけの肉じゃがを電鍋に放りこんでスイッチを入れ、薬局に向かう。最近の絆創膏は進化して全体的にのっぺりしている。これで患部を覆うと自然治癒力が高まるらしい。

じんじんする。

手のひらを使えないと予想以上に不便である。普段は意識していないが、図書館の仕事はつかんだり抱えたり持ち

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月曜日の図書館 よわいやさしい

月曜日の図書館 よわいやさしい

月に一度、新聞のファイルを新しくする。ファイルといっても既製品ではなく、新聞のサイズに合わせた大きな板二枚で挟みこみ、ひもで綴じて保存している。縮刷版を別に買っている新聞や、保存年限がきた新聞は板から外して結束し、倉庫へ。この作業を毎月やる。

外した板はもちろん捨てない。次の月の新聞を綴じるのにまた使う。板によっては酸いも甘いもかみ分けた老人のような見た目になっていて大変頼もしい。ひもも今までは

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月曜日の図書館 笑顔でしかない

月曜日の図書館 笑顔でしかない

地元の雑誌が図書館を紹介してくれるというのでインタビューを受ける。今よく読まれてる本は何ですかと聞かれて絶句してしまったことに絶句した。普段扱うものが江戸時代の古文書だったり、明治の地図だったりの白黒世界だから、すっかり現代の事情に疎くなってしまっている。

まるで下々の民の気持ちが分からない天上人のようではないか。

げかいではあたらしいういるすがおおはやりして、みんなてんてこまいらしいよ。

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月曜日の図書館 スタイル

月曜日の図書館 スタイル

小学生のときぶりに縄跳びをしたら感覚をすっかり忘れていて焦った。どのタイミングで自分の体を浮かせたらいいのかよく分からない。まるで飛び方を忘れた鳥のようだ。

2、3度跳ねると、内臓がゆさゆさ大げさに揺れた。

書庫の本を取りにいくとき、エレベータを使わないルールを自分に課してみる。階段も小走りで駆け上がる。取ってきた本を貸し出し、次の人の本をまた取りに行く、を何セットか繰り返していくと、ほどよい

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月曜日の図書館 リーダーがはじまる

月曜日の図書館 リーダーがはじまる

本を読むとわからないことがたくさんある。
なぜ主人公はあんなことを言ったのか?
この作品で作者は何を伝えたいのか?
どうして自分はこの本をこんなに好きなのか?

わからない。
わからないし、きっとはっきりとした答えもない。
世の中には、わからないままのことがこんなにもある。
それを知りたくて、本を読むのだと思う。

ベテランの先輩たちが異動することになり、繰り上げ当選でわたしが春からレファレンスリ

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