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バカサバイバー 櫓とあの階段

祭りの櫓に上って踊ることを望む人を
「ヤグラー」「ヤグリスト」と呼ぶこともあるらしい。
櫓はお立ち台文化の元祖だと考えられる。
とは、昨日書いた話の中でも触れた
「盆オドラー」「盆バサダー」さんのとてもいい本で知った。
(『東京盆踊り天国 踊る・めぐる・楽しむ』 佐藤智彦 山と渓谷社 2022)
「ほぉー」「ほほぉー」ってなって、でも、そっから忘れていた。
せやのに、のに、
今日用事に向かいながら歩いていたら「バカ段」のことを思い出した。
バカ段? 馬鹿段?
文字にしたらどっちなんかは知らん、というか、忘れた。
わたしが学生時代に所属していた体育会系ちょっとおかしい学生劇団の用語である。
伝統行事には欠かせない訳のわからん大切な〝装置〟、いや、階段だ。
 
毎年、卒業式の日に、あらわれる。
卒業式の前夜には、ない。
一夜で建てられた。
徹夜で作られ、設置されるのだ。
装置部、衣裳部や制作部や小道具部照明部など、
割り振られ所属させられた部署のうち、
(ちなみにわたしは制作部で照明部、からの演出)
装置部が一夜にして、徹夜で、作り上げる。
一夜城ならぬ一夜階段。
……ということが伝統だった。
 
古い例えで申し訳ないが、わかりやすい喩えとして出す。
つかこうへいの『蒲田行進曲』のクライマックスに登場するあれ。
「ヤス! 上がってこい!」「銀ちゃんかっこいい……!」
あの映画は当時から思ってたが意味わからん。
わからんけど、ほんまにすごい。
あのような階段を一夜にして建てるのだ建て上げる。
一夜で建て、一夜で、バラす片す。ほんとうだ。うそみたいだけど。
それが伝統とされていた。頭がおかしい。
 
我がボックス(部やサークルが根城にする部屋や場所のこと)は
卒業式が行われる講堂からすぐのところにあった。
皆が着飾り通る道にある銀ちゃんとヤスみたいな階段舞台は嫌でも目立つ。
卒業式では皆当然のように「ハレ」のムードと気分になっていたし、
他の部やサークルも意味不明なテンションだったので、
悪目立ちはしなかった気がする、
でも、通る皆、皆、下回生も卒業生も保護者も、
段をみて「?」「!」ってなっていた。
 
そしてその階段は、大学生活最後の「舞台」となる。
 
卒業式を終えた正装や普段着の卒業生を、
部員皆で、うえーい! うおー! って捕まえる捕まる。
捕まえられた卒業生は晴れ着または普段着のまま駆け上がる。
もとい、駆け上がらされる、
下級生が選んだ「そのひとのテーマソング」を、
音響部が卓から爆音で流す中、
渡された、コピーした幾つかの台本を、手に。
それは下級生が選んだ、
「その人の演じた名シーン」セレクション(3~4つ)。
最後の「再演」がされる、バカな段の上で。
共演者も、名を呼ばれ、段を、駆け上がる。
まわりは、まわりも、
卒業式から戻るひとたちの波なのだうるせえ空気だ。
そんな中、駆け上がり、演じる、もとい叫ぶ。
ぶっちゃけ正直、最後の演技は段下の座員にすら聞こえへん。
うるさすぎて。
せやけど、演じた舞台のそのまま、BGMもかけてもらって、演じる。
卒業生分の選り抜き台本と音が用意され、
卒業生分、やる、観る、叫ぶ、盛り上がる。
 
というのが伝統の劇団で、
無論わたしもそれで送り出したし送り出された訳なのだけれども。
 
まさしくほんまに、〝櫓〟やったんやなあー。
 
わたしが駆け上がるときに爆音で流されたのはクイーンだった。
なんでやねん。
『Keep Yourself Alive』
己が当時演出をした新感線×芝居小屋な芝居の際にノリで使った曲。
別名炎のロックンロール。
「いや、待って。それ流されるんちゃうかと思ってたけど嫌やねんけど!
他にあるやん!(笑)」とか言いながらも駆け上がった。
段の上で、過去に演じた白石加代子演じた大役だとか、
「これは島田珠代姐さんみたいにボケて」とか
上級生の演出に言われたからやったけどやりきれんかった役のシーンをやった。 
 
と、いうことを櫓のことを考えていて、思い出した。
 
もし人生的な「次」の舞台では流してほしい曲がある。
クイーンでもええけど『クックロビン音頭』がいい。
駆け上がる。踊る。そして演じる。真剣にね。



で、頭に浮かんだ曲はなぜか『バカサバイバー』。
ウルフルズ特に好きやないけど。
青木真也せんせいの入場曲でもありますね。
このひとも別に好きやないけど。
 

という話は来月リリースのWebマガジンのオマケ記事に
書こうかなともしていた一部でもあるのですが。
来月もお楽しみにしていただけるとうれしいな。


この頃のことやこの頃のアタマオカシイエピソードの数々は、
なんやかんやでやはり書いておかなあかんのちゃうかともとても思う昨今。

◆◆
【略歴や自己紹介など】

構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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