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あがり(著:松崎有理)【読書紹介大学はどこにでも存在します。ここにもそこにもあっちにも「多摩には?」たまにはあります】

本屋時代の弟が、本棚に入れたまま忘れられていたSF短編集。
短編の賞を何か取ったんだったかな。

北の街に点在している旧帝大系国立大学と、
その大学の生物学部に属している人たち(一部は医師)を主要登場人物として連作短編。
中には複数の作品に出てくる論文代書屋みたいな人もいますが、
まあ基本、各話毎に主人公が替わる話です。

冒頭の表題作「あがり」はバイオ研究モノから一転してホラーになった作品ですが、
それ以外は、ホラーはありませんでした。
冒頭の作品のせいで、そんな話ばかりなのかと思いましたが、
他の作品はそんなでもなかった。

印象としてしっとりした作品が多かったですが、
起承転結やどんでん返しがきちんとできていて、
小説としては完成度が高い作品ばかりです。
秀逸な作品群ですね。

と、おもわずため息がこぼれてしまう話です。
ただ再読するまで忘れてしまってましたが。

そうです。記憶に残らない。
よくよく考えたら、取るに足りないエピソードとか、
まあ短編ネタなんてそんなものかもしれませんけど、
ただ読んでる最中はページをめくる手が止まらない。
なまじ科学、生物学がちょっとでも好きな人には、ついていける知識量になっているので、どんどこ読めてしまいます。

ただ記憶に残らないのも、メリットもあるので悪いことではないと考えます。こういうのが必要ですよ。
毎回、毎回、超展開を読むのも、それはそれで苦痛。
そうです。

いずれにせよ、完成度が高く、しっとりと思い出せないくらいの自然さ、
このふたつが大きな特徴。

それにしても、北の街の地図まで書いてあるので、
どこだかはすぐに分かりますが、
しかしはっきり「仙台」と書いてある文章はひとつもありません。
大学名も「タコ足大学」になっています。
いや、そういう呼ばれ方が実際あるのでしょうけど。
芸が細かいですね。すごくいいですね。

この人の本は他にもたくさんあるので、狙いどころが多い気がします。
どうやってこういう人の本を発見するんだろう?

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