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命のダイアリー(著:松永正訓)【読書紹介にもちょっとだけ傷が残ったような気持になった】

松永先生は小児固形ガンの専門医の先生でした。
若くして引退を余儀なくされましたが、
名医といっていい先生だったそうです。

小児ガン、それも固形ガンとつくのは、
要するに白血病以外のガンということです。
小児白血病は、やり方がわかってきたので、
治癒率が上がってきたのですが、
固形ガンの方はそうでもありません。

ただし、今回は亡くなられたお子さんの話ではなく、
生き残ったお子さんたちの話です。
治ったお子さんの話です。

でもちょっと待ってください。
生還したからって、楽観的な未来が待っているわけじゃないです。

生きるか死ぬかという病状の場合には、
後先考えている余裕はありません。
(小児白血病だと、どれだけ手加減するかという話になってきていますが)
予後がよくないものは手加減できません。
強すぎる振り切った治療には、傷痕が残らざるを得ません。
治療は諸刃の剣なのです。

晩期障害というのが出てきます。
命の代償に、聴力を削られてしまったり、
体の機能を犠牲にせざるを得なかったり、
これは一生治らなかったりする十字架なんです。

それでも周りの大人たちが喜ぶような、
奇跡の生還ではあるのですが。

松永先生の治療法も、
もう悪性じゃないからこのまま放っておこうとか、
腎臓をひとつ犠牲にする前提で治療しようとか、
ベテランらしい大胆な治療をしていきます。

このひとつ前の著書「命のカレンダー」で救命できなかった子どもたちの、
言わば、負け戦の経験から導き出された正反対の戦術。
(腫瘍医にとってはやはり戦争の比喩が当てはまるのでしょうね)

前作のかたき討ちというのか、
「カレンダー」の治療経緯とは正反対に、
「ダイアリー」においては、
治療がスパンと決まって、病魔をねじ伏せておられます。
前作から読んできた方には、感慨深いものがあります。
(私は逆向きに読んだのですが)

生還したお子さんも、ずっと後遺症の面倒や、
再発検査のために、その後も病院に来るのです。

まだ治療実績が低かったころに助かった子が、
(難聴の子なんですけど)
病院に来ると、周りでささやき声がうねる。

その子は、同じ病気で来ている親子にとっては、
生きている実体を持つ希望の塊なんですね。

辛いことの多い世界で、これはご褒美なんでしょうか。

もちろん大きな後遺症を残さずに、
元の世界に帰っていくお子さんも多いのでしょうが、
晩期障害の話は私たちをしんみりとさせます。

なにか天啓が閃きそうにならないですか?
なにか、そこまで来ている気がするんですけどね。
なんだろう?

今回は短めで。

以前に書いた記事も紹介しておきます。

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