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空から落ちてきた

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ラジオのつまみをいじっていたら、心惹かれる曲が流れてきたり、手紙入りの瓶が流れてきて、直接語りかけてきたり、そんな瞬間がほしくて。 散文、ときに韻文。胸いっぱいのさびしさをあな…
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2017年2月の記事一覧

神様が忘れていった

神様が忘れていった

神様が忘れていった月や星、置き去りにして朝焼けを待つ。冷たい風が通り抜けていき、なけなしの体温を掠め取っていく。

頭の中、脳細胞が示している世界に過ぎないのに、ここに自分の全てを委ねて、いつの日か後悔する日がきっと来るのだ。

最果てですか?
いいえ、私は風です。

一秒ずつ削られていく寿命を誰も贖ってはくれない。手持ちのカードだけで歩いていく。切ったカードの補充はあてにできなくて。

朝焼けは

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さよなら

さよなら

何処かに行きたいと思っていても、その何処かなどどこにでもない土地でしかないことは分かっていて、しかしここではない何処かへの希求は容易に収まることはないのだ。

さよならを私自身に言いたくて屋上の鍵壊してみたい

無い土地にどのように行けるのか。そこまでの手段は? 方法は? そして意義は?
そんな自分のなけなしの理性を握りつぶしても、指の間から漏れ出るそれは私を解放してくれなくて、そしてそのことを私

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存在を薄めることで

存在を薄めることで

存在を薄めることで、誰の邪魔にもならないように好きに生きたいと考えたりしても、結局どこにもいけない自分を選択していることは変わりなくて。

息が苦しい。

お決まりのさみしさがある。魂がおひとりだからやむを得ないね。そんなことを考え、アンドロギュノスを夢想しながら歩いている。

世界に何も刻みつけられないまま終わるのは、嫌だ。

ガスの膜のような睡魔に触れられて、何か新しい扉を開くわけでなく、ひた

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黄昏に棲む

黄昏に棲む

手放したものたちが棲む黄昏が爪立てるから胸が苦しい。明くる日も、その明くる日も過去からは逃げることができない。

忘れてしまえば、楽になれるのか。
解き放たれるときが、いつか来るのか。

雲の羽毛に覆われた太陽は、私の苦痛を覗こうともせずに、微睡みの中、死に惹かれている。
彼ならば生まれては死に、また生まれては死ぬ私のことを滑稽に思うだろうか。

結局のところ星屑にすぎない。いずれ彼も同じ運命を辿

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崩壊

崩壊

緩慢な崩壊の音を聴いている。それらは小川のささやきのように、いつも私達の鼓膜をか細く震わせている。心地よい記憶が喪失していくような、柔らかなうねりの中で、さやさやと、さやさやさやとそよいでいるのだ。

空は、終わったね。
海も、終わったよ。
大地は?

ささやきには誰も答えないでいる。鈍色の太陽が優しく包む。風が遠ざかりながら、救いの名前を置き去りにしてゆく。

崩壊の音はいずれそれだけで世界を覆

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刻まれて

刻まれて

刻まれた影の深さに戦いて安定剤を放り込むだけ。崩れ去るものたちのため何故ここで無駄な努力を続けているか。救われる者と救われない者をコインを投げて神が決めても、生真面目に生きようとする救われぬ者はいつまで足掻くのだろう。決められた因果の波に乗せられてたゆたうだけの人生ならば、何もかも無秩序である骰子と大して変わることはないのだ。密やかに忍びよるからあの窓のアオスジアゲハは全て知ってる。もういいよ。吐

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指先

指先

指先が冷たいゆえに、ひとりでに歯車砕け白く輝き、散らばった破片を集め糊をつけ元の姿にしようとしても、つけるたびこぼれてしまう砂に似た、機械は自分自身の鏡。きらきらと光るだけなら、そのままにしといた方が綺麗なのにね。

歯車は、歯車として一生を終えるのだから仕方ないよね。こわばった微笑み残しいつまでも明けぬ闇夜に砕け散りたい。

隔壁

隔壁

この壁で君と私を隔てよう。
眠るときには外してもいい。
そう言った君の横顔、逆光で見えてなかった。笑っていたのか?

いつまでも届かぬような手紙待ち、ここで待ちつづけてもいいのか。待ちつづけ、決して届かぬ封筒の、幻影を見て生きていくのか。判断は脳細胞がすることで、心臓などは加味していない。

カーテンの細い隙間に降り注ぐ西日のような恋だったのか。冷え切ったコーヒー含み、苦味などありふれすぎて分から

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異界

異界

どんなところにも異界への窓は開かれていて、周波数が合う人間がそれに気づくのを待ち構えている。さびしさや虚しさ、気づかなければ幸せな諸々の感情。それらが軋み、人間の閾値を超えたとき、彼らはその窓から身を投げるのだ。

窓にも異界にもなんの責任はない。それらは単にそこにあるものとして存在しているのだから。その選択肢に気づき、選んでしまうのは限られた人間だ。その血肉を糧として今日も窓は澄み切っている。

遠い街

遠い街

遠い渚のある街でした。彼らはいのちを食べていました。魂を売り肉体を買い、僅かな時間を息していました。
渚はいつもそよいでいました。たぷたぷ笑い、くぷりと眠り、砂浜を撫でて過ごしていました。
何にも意味はないことでした。空から闇が降り注ぎました。喇叭が響き、星まで震え、全ての者は並んでいました。
食べたいのちと生かしたいのち、さいころ一つで数えられても、彼らは何にも言いません。諦めすらも感じられずに

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闇に向かって

闇に向かって

死ぬために走り続ける肉体を持て余してて何か生まなきゃ。そんなこと考えてても神様の確率論は誰も知らない。どこにでも行くなら行ける鎖など自分でつけるものにすぎない。最果てを見たらその地は最果てで無くなるゆえに見には行かない。辿り着くための土地などまやかしの運命論でしかないものを。生まれ来るまでに46億年経ってしまって何ができるの。これからの将来未来誰だって分からないから知らなくていい。

雪が降り消してくれるよ

雪が降り消してくれるよ

雪が降り、消してくれるよ。
傷跡を覚えているのはもう君だけだ。
そのことを君は、悲しいというのかい?

傷跡ばかり誇らしく掲げていたって何も生まれないよ。
何も生まれないものを大切に抱えて、新しい何かを掴む前から手放している。そのことがいいと僕には思えない。

雪が、来たね。
彼らは何も恐れない。白一面の世界に還元することが楽しいと思っている。差異も何も全て白にしてしまえば問題はない。ほら、君の瞳

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悪夢でも夢のひとつ

悪夢でも夢のひとつ

悪夢でも夢のひとつに変わりなく、黒い歩兵が歩き続ける。街並みはいつも通り口を噤んで、次の密告者とその被害者の影を隠し通そうとしている。彼らが蠢きつづけているうちは、まだ世界は存在するらしい。

「あなたは、だあれ?」
「あなたは、なあに?」

幼子の皮を被った狼が微笑みながら近づいてくる。私の影は私の足を石畳に止めて、その場から離してはくれないのに。目の前が白く眩む。その瞬間を彼らは逃してくれない

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単純な仕組みで

単純な仕組みで

簡単な仕組みで動く歯車が、ある日意志など持ってしまった。手元にある金属質の円盤。このひとつひとつが反乱を起こすのも時間の問題かもしれない。そのときに僕らは、その鋭利な外周に刻まれて、鉄錆の匂いがする蛋白質の屑となって存在することになるのだろう。

歯車の意志は? そもそも僕らの意志は? それを瞬時に言えない以上、歯車も僕らも同じで、僕らが一方的に彼らを使役することは許されないことだったのではないか

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