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雪が降り消してくれるよ

雪が降り、消してくれるよ。
傷跡を覚えているのはもう君だけだ。
そのことを君は、悲しいというのかい?

傷跡ばかり誇らしく掲げていたって何も生まれないよ。
何も生まれないものを大切に抱えて、新しい何かを掴む前から手放している。そのことがいいと僕には思えない。

雪が、来たね。
彼らは何も恐れない。白一面の世界に還元することが楽しいと思っている。差異も何も全て白にしてしまえば問題はない。ほら、君の瞳にも白い鱗片が零れ落ちている。

雪が他のところよりもこんもりとしているところは、君が眠りについたところだから。
春になるまでには何度も雪が降り、そのふくらみの場所を僕は忘れてしまうだろう。
雪が降るから僕は忘れることができる。君もそうできればよかったのにね。

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