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体験価値こそ全て

みなさんは、体験価値という言葉をご存じですか?
言葉そのままですが、自分の体験した事柄に対する価値のことです。

現代は飽食の自体と言われ、よほどの事がない限り、飢えて死ぬようなことはありません。

所得の無い人や就労が困難な人のためにも、生活保護というセーフティネットも存在しています。

簡単にいえば「モノは足りている」時代なのです。

特にここ数年は、シェアビジネスを始めとした「物質よりも体験」の流れが加速しています。

この記事では、そういった「商品ではなく経験を買いに来ている顧客」という概念と事例を解説し、いかに体験を売るということが大事かについて伝えていければと思います。




1、スターバックス


体験価値の最もたる会社がスタバではないでしょうか?

最近では、コンビニでも本格的なコーヒーが100円で飲めるようになりました。

コストパフォーマンスだけで考えれば、スターバックスに行く人はかなりの損をしているといえます。

それでも、彼らはスターバックスに通い続けています。

僕もスタバは大好きです。

リモートで働くことも多いので、スタバで仕事をする日もありますし、週に1回以上はスタバを利用します。

この現象こそ、体験価値の一つの事例です。

もちろん、顧客はおいしいコーヒーを飲みたいと思っているのは間違いありません。

しかし、スターバックスに通う人たちは、それ以上に「体験」に対してお金を払っているのです。

スタバが作った言葉で、「サードプレイス」という言葉があります。


家でもない、職場でもない、第3の場所。
みなさんも一度は聞いたことがあえるんじゃないかと思います。


店内のアットホームで落ち着いた雰囲気。
親しみやすい接客。
シンプルかつお洒落な備品。
季節にあった、心地よいBGM。

そういった「雰囲気の体験料も込み」であの値段のコーヒーなのです。

CEOのハワード・シュルツも「スターバックスは、仕事と家庭の間にある第三の場所を目指す」と昔から言っています。これは、スターバックスという企業は「コーヒーだけを売る企業」ではなく「顧客に充実した体験を提供する企業」をということを明確にしているのです。



2、リッツカールトン



世界的に有名な高級ホテルのリッツカールトン。

その飛び抜けた接客は多くのメディアで取り上げられています。


最たる例が、僕も読んだ本なんですが、100円のコーラを1000円で売る方法という本です。



この本の事例が、リッツカールトンなんですが、「コーラが1000円で売られている」という事実です。

普通の相場でいえば100円からそこらのコーラ。それを1000円で提供するとなると、下手をすれば、ぼったくり扱いされてもおかしくありません。

にも関わらず、ホテルにはそういったクレームは寄せられないそうです。


たしかに、そのホテルに宿泊できるのは、ある程度金銭面に余裕のある人間がほとんどだから、という要因もあるでしょう。


だがしかし!本質はそこではありません!


リッツカールトンで出てくるコーラは、そのタイミング、温度、シチュエーション、すべてが完璧と言われています。

そのため、顧客はその非日常な対応に感動を覚え、クレームを起こそうという気がまったく起きない、というわけです。

これは、言い換えると「付加価値を高めれば、高額な商品でも顧客は対価を払う」といえるでしょう。

原価でいえば全く変わりがない商品を、10倍以上の値段で売ってもクレームが出ない。

これこそがカスタマーエクスペリエンス「体験価値」の力です。



3、ディズニーリゾート



やっぱり、体験価値を語る上で、外せない企業があります。

それはオリエンタルランド。
みなさんご存知ディズニーですね。



年間3000万人。


この数字なんだかわかりますか?


1年間で、ディズニーランドとディズニーシーに来場するゲストの人数です。

この高い集客を継続しているのがディズニー。

日本の人口は約1.3億人ですから。

4人に1人はディズニーに年1回行っている計算になります。



ちなみにリピート率は驚異の98%です。
もう何も言うことないですね。笑


そんな体験価値のキング『ディズニー」を今回は成功ビジネスの観点からも、少し深掘りしていきたいと思います。

夢がなくなる話しもしますので、ディズニーファンの方は見ない方がいいです。笑


ではいきます!


①とにかくキャスト(従業員)が楽しそうに働いている

場してみて、まず感じたのがキャストと呼ばれる従業員から滲み出る“楽しい”オーラ。


ディズニーの代名詞とも言える、サービス力の源泉がここにあると感じます。


ゲストが不機嫌であっても、笑顔に変える。


アトラクションに乗るために行列に並んでも、いざ乗るときにはキャストの生み出す“楽しいオーラ”で最高の楽しみを味わうことができる。


マニュアルを超え、自分自身の決めた行動で、お客様の喜びを創造することができる実感。


それが、自分の喜びや幸せになる。

ディズニーの理念である、ハピネス(幸福感)の提供は、お客様だけではく、そこで働く人たちがベースと実感できます。


これは、どの企業でも、組織でも同じですね。


自分で決められる土壌があるか。


それがお客様や目の前の人の喜びに繋がると実感できるか。


ゲストの喜びの前に、キャストの喜びや楽しみがある。


ゲストが喜ぶから、キャストが喜ぶのではない。


“自分達の仕事や、自身の決めた行動が喜びに繋がる”


この事をスタートのトレーニングや研修段階で伝えることができているか。

商いで人を集める基本は、

“自分達が充実し、満足した仕事をし、喜びを感じているか”

ここにあります。


まさにディズニーランドは、この商いの基本を感じることができました。


②マニュアルを超えたサービスの前提は圧倒的な基礎力

前の項で書いたように、ディズニーの代名詞はマニュアルを超えたサービス。

ですが色々話しを聞いてみて、それ以上に感銘を受けたのが圧倒的な基礎力。


友人がディズニーに行った時の話しを聞いたことがあって、その時に、偶然 ファストパス発券機のシステムトラブルに遭遇たらしいんですね。


この時のキャストの対応はさすがなものだったらしく、

慌てることなく、毅然とした対応。

特に感心したのは、システムエラーからの復帰した瞬間。

複数ある機械の後ろに数人のキャストが一列に立ち、復帰と同時に一斉にカバーを外し、ゲストの対応を始めたとのこと。

その時の立ち姿、行動の美しさはさすがです。

笑顔、個別対応、柔軟など、ディズニーのサービスはとても温かく柔らかいイメージを持っていましたが、あのように時として毅然とした、整然とした姿を見せられると、親しみに加えて、憧れや尊敬心を感じます。


この体験をしてから、パーク内を歩いてみると、キャストの通常時、なんでもない時の表情や立ち振る舞いに驚きます。


どんな時でも、緊張感を持った表情。
背筋を伸ばした歩き方。一つ一つの仕草。
行動のメリハリ。

基礎力というと、スキルや技術的なものや、接客時のお辞儀や笑顔などに注目しがちですが、なんでもない時にどれだけ緊張感を持っていられるかが、本当の基礎力と思えます。


お辞儀や笑顔だけではなく、通常時の表情や行動にも意識を持たせることができるか。

そこに、さすがと呼ばれるブランド力やサービス力が生まれますね。


③常に変化とチャレンジ

1日では全てを体験することができない。

その時しかない、ショーや限定商品がある。

確かに一年を通して、各シーズンやイベント毎に園内の企画は変化しています。

さらに、同じシーズンでも去年と今年では違う。

季節によって変化する。

経年で変化する。
そうしてもう一つ。

これはディズニーのことを調べていく中で発見したこと。

ディズニーリゾートでは1〜3年の間隔で、新たなアトラクションを導入しているのをご存知でしょうか?


ディズニーランドとディズニーシーを重ねてみれば、ほぼ1年〜2年で新アトラクションの導入や新エリア開発がされています(既設アトラクションのリニューアル含む)


最近であれば、

・トイ・ストーリーホテルのオープン 2022年
・ファンタジーランド内に『美女と野獣』と「ベイマックス」をテーマにしたエリア開発 2020年

・ソアリン・ファンタスティック・フライト 2019年
・イッツ・ア・スモールワールドのリニューアル 2018年
・ニモ&フレンズ・シーライダー 2017年
・スティッチ・エンカウンター(リロ&スティッチ) 2015年
・マーメイドラグーンシアターのリニューアル 2015年
・ジャングルクルーズ 2014年
・スター・ツアーズ:ザ・アドベンチャーズ・コンティニュー 2013年
・トイストーリーマニア 2012年
・ジャスミンのフライングカーペット 2011年
・ミッキーのフィルハーマジック 2011年


これ以前も定期的に新しいアトラクションが導入されていますし、パレードやグリーディング施設も定期的に新設・導入されています。

では、このアトラクションはどうやって生み出されているのか?

ほとんどはディズニーやピクサー映画のテーマです。

ではディズニーでは今までに、どれくらいの映画をつくっているかというと・・・。

アナ雪と冬の女王、ピートと秘密の友達、ディズニープリンセス

くまのプーさん、スター・ウォーズ、ミッキー&フレンズ、塔の上のラプンツェル、ちいさなプリンセス ソフィア、ジャングル・ブック、トイ・ストーリー、ファインディング・ドリー、ズートピア、ピーター・パン、アラジン
、チップ&デール、モンスターズ・インク、スティッチ、リトルマーメイド、カーズ、ファインティング・ニモ、Mr.インクレディブル、ムーラン、レミーのおいしいレストラン、ライオンキング、シンデレラ、白雪姫、ウォーリー、美女と野獣、不思議の国のアリス、パイレーツオブカリビアン、101匹わんちゃん、ダンボ 等々。


これはほんの一部。100タイトル以上の映画を製作しています。


どうでしょう。あまり覚えていないものや、あまりヒットしなかったものもあるでしょう。


とはいえ、ディズニーが魅力的なアトラクションを創り出せるのは、100を超えるチャレンジがあるからといえます。


映画を作るには、多額の資金、人、時間の投入が必要です。


もちろん全て成功するつもりで製作していると思いますが、時にはハズレもある。


大事なのは定期的に新しい領域にチャレンジしているという点。

もしもディズニーが新たな領域にチャレンジせず、ミッキーマウスを中心としたキャラクターだけを変化させたり、ミッキーマウスから派生させたキャラクターばかりであったら、ここまでの魅力は生まれなかったのではと思います。


定期的に、一定のコスト、ヒト、時間を投資して新しい領域や商品にチャレンジする。


当然失敗したり、うまくいかないこともある。ハズレがある。


それでもチャレンジを続けていく。そこに魅力的な新しい柱が生まれる。


これは企業や店舗だけではなく、個人にも当てはまりますね。



④誰もが同じ価値を提供できる

最強のディズニーエピソードその2。

これも聞いた話しなんですが、ある家族が娘の誕生祝いでディズニーランドに行きました。

当然ホテルの方には娘が誕生日の情報であることを伝えていますので、フロントで対応してくれたコンシェルジュ、チェックインカウンターから荷物を運んでくれたスタッフの方からお祝いの言葉をいただきました。

これだけであれば、他のホテルでも体験できます。

ですが、それ以上に驚いたのは翌日。

部屋を出て廊下を歩いていた時に、ルーム清掃の方とすれ違いの際にお祝いの声をもらえたこと。確かに誕生日のプレゼントを持っていましたが、それでも驚きました。

フロントスタッフなどは情報共有がされていると思いますが、バックスタッフの方まで情報は行っていないはず。仮にバックヤードに“○○室に宿泊のお客様はお誕生日”とあっても、胸に部屋番号をつけて歩いているわけではないので、廊下ですれ違う相手の客室はわからない。それでも声をかけられる。
ここが凄い。職域を超えて誰でもできるという点。

フロントスタッフでも、バックスタッフでも同じ対応ができるというのはさすがです。


例えば、あなたの会社。
製造スタッフは、店舗スタッフと同じように商品説明ができますか? お客様へ挨拶ができますか?


逆も同じ。


販売スタッフは、製造スタッフと同じように、商品の製造工程を詳しく説明できますか?

自分の仕事ではないと思ってしまう。意外にできないものです。

誰もがお客様に自分たちが提供したい価値を提供できる。

組織風土として意識しなければ難しいですし、この話しを聞いて、セクションによる分業意識の見直しなども大事だと学ばせてもらいました。


⑤自分達のお客さまは○○という定義が明確&主力に対する自信と確信

これは、私の直感的なものもあるのですが、

ディズニーリゾートのキャスト、従業員さんは、どんな仕事の人でも、自分達の目の前にいるお客様を以下のように定義しているのではないでしょうか?


“目の前にいるお客様は、ミッキーマウスが絶対に好きだろう”
“目の前にいるお客様は、ミッキーマウスのことを必ず好きになってくれるだろう”


主力キャラクターであるミッキーマウス。

ある意味、企業でいえば主力商品に対する絶対的な自信。

明確なお客様定義、ターゲット設定です。

感動的なサービスとなっているのは、ほとんどがミッキーマウス。

園内で雨の日に清掃係の人が描いてくれるのもミッキーマウス。

サプライズで訪れてくれたり、手紙をくれるのもミッキーマウス。

ミッキーマウスが好きだろう。必ず好きになってくれるだろう。と定義づけているから、お客様に“どのキャラクターが良いですか”とは聞かない。


例えば、サプライズでバースデーカードを用意してくれた時、“これはミッキーマウスから預かった、お祝いのお手紙です”と言われるのが嬉しいか。


個別対応だからと、“このキャラクターの中から、お好きなものを選んでください”と言われるのが嬉しいか。

前者の方が感動的なサービスになりますし、仮にその時、ミッキーマウスのファンでなくても、そのサービスを受けたらファンになってしまいますね。

色々な選択肢を用意して提供するサービスよりも、自分達のお客様定義を明確にし、そのお客様に最大限喜んでもらえるサービスをする方がはるかに感動的なサービスを生み出すことができる一例です。


さらに言えば、感動的なサービスがミッキーマウスの熱烈なファンを創り出すことにもつながる。

ディズニーはまさにそれが明確。

会社でいえば、主力商品に対する従業員の絶対的な自信。

どんな相手でも、自信を持って主力商品を薦めることができているか。

相手が必ず主力商品の熱烈なファンになってくれるだろうと信じてサービスをしているか。

そのためには、自分達のお客様を明確に定義することが不可欠。

個別対応として、お客様に合わせるということも大事ですが、自分たちが絶対に自信と確信を持って商品やサービスを徹底的に提供することが、熱烈なファン客作りにつながります。

いかがでしたか。

実際にディズニーランド、ディズニーリゾートが運営するホテルなどをまとめてみました。

1.従業員が楽しそう、充実して仕事をしている
2.基礎力を高め続ける
3.常に変化し、チャレンジを続ける
4.職域を超えて、お客様に価値を提供する
5.自分たちのお客様を定義づける&主力商品への自信と確信

商いの当たり前。大きな企業や組織だから。あればディズニーだからではなく、中小企業や個人でも同じこと。

ディズニーリゾートは当たり前のことをより高いレベルで徹底している。

その結果が圧倒的な感動と満足を生み出し、高い集客を継続できていると考えます。

まずは一つ一つ、あなたの会社に当てはめてチェックしてみてはいかがでしょうか。


繁盛していたり、人を集めているところには必ず何かのヒントが眠っています。

大切なのは“実際に自分の目で見て、感じて、体験すること”

間違っても「誰かの言葉」や、インターネットの情報、過去の知識で判断しないこと。

一人の社会人としての視点。
一人の大人としての視点。
僕の仕事でもある、コンサルタントという視点。
人事としての人を俯瞰して見る視点。

色々な視点で見ると、本当にたくさんのことが学べます。

なので、行く際は、いろんな視点をもっていくことがオススメです。


日頃より、このような洞察を自社の改善提案に生かしています。

中小企業だからできないではなく、どんな会社でもできることばかりです。


たまには自分の枠を超えて、体験してみましょう。


きっと成長につながる新しい発見があります!


4、最後に

モノを求める物質至上主義の時代は終わり、徐々に本格的な「体験にお金を払う」時代に差し掛かってきています。

もはやこの流れを止めることはできないでしょう。

技術の発達によって生活レベルは向上し、モノはすでに溢れているのです。

実際、「これが無ければ死ぬ」といった状況の人はほとんどいいません。

そんな中で、顧客にお金を出してもらうには、そのモノ自体で差別化しようとしてはいけません。

商品よりも体験を、性能よりも満足度を高める意識が必要です。

この記事ではスターバックスとリッツカールトン、ディズニーリゾートを紹介しましたが、世の中には素晴らしいユーザーエクスペリエンスを提供している企業が数多くあります。

他社との差別化で悩んでいるのであれば、そういった事例やモデル企業を見つけ、ぜひ参考にしてみましょう。




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