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就活と手帳と苦しかった思い出。

現役大学生の瑞野も就活をひとまず終えた。
ありがたいことに、とある大阪の企業から
内定を頂けている。

最初に掲げていた目標からは変わってしまったが、自分としては納得のいく結論を出すことができたので、後悔は全くしていない。そもそも、この何が起こるかわからない時代に食いっぱぐれることなく仕事をできることが奇跡のようなものなので、内定を出してくれた企業には本当に感謝しかない。


去年の春先から走り出した私の就活。
そのスタートとなったのは
「手帳」を買うことだった。

だいたい私は、いつも何か新しいことを始めるときには、形から入るタイプである。小説を書くときには原稿用紙やペンを買うし、日本酒にハマった時にぐい吞みと徳利のセットを買うし、とにかく最初の形にこだわるタイプなのである。あとに続こうが続くまいがお構いなし。体裁が整えば、自然と中身も付いてくるような気がするのだ。

就活にまず必要なのは、自分の進捗を自分で管理していく能力と、それを支えるツールだと考えた。それで、書店や雑貨屋を巡っていろいろなスケジュール帳を見てみた。よくあるビジネスタイプの手帳とか、使い勝手のいいリフィル差し込み型のタイプとか、いろいろ検討したが、結局一番使い勝手がよくてなおかつ長期間書き込める「就活専用手帳」を購入した。

以来、今日に至るまで肌身離さず持ち歩き続けた。各地に遠征したりするときもビジネスバッグの中に忍ばせていたし、志望理由や想定問答のリストを作って手帳に書き記したり、落ちた企業の名前を横線で消しては落胆したり。とにかく苦しかった就活の記憶が、全部染みついている。

採用イベントに通いつめ、社員の方とも顔見知りになり、インターンシップのプレゼンテーションで最優秀賞まで勝ち取った、文字通り相思相愛だったはずの某企業にあっさりと落とされた時には、本当に心が折れた。手帳を燃やして全部やめにしたいぐらい苦しかった。自分の実力不足であると分かっていながら、その企業を恨まずにはいられなかった。

そんな喜怒哀楽が、手帳にすべて詰まっている。


私が実際に使った「就活手帳」。



いま、改めてこの手帳を読み返してみる。

インターンが始まったころ、そして採用活動が始まったころは特にびっしりと予定が書きこまれている。書類提出の締め切り、選考の日程、合格したインターンシップの本番の日程。一週間に数十社の締め切りを迎えるような過密スケジュールの季節もあった。我ながら、よくこの無茶なスケジュールで日々の勉強やアルバイトと両立できたな、と褒めたいぐらいだった。

そして、それと同じぐらいびっしりと書き込まれたのが、大量のパスワードとID。最近はマイナビやリクナビなどの就活サイトの他に、大手企業などは自前の応募フォームを持っていることがほとんどで、一社につきひとつIDを交付されるので必然的に大量のパスワードを自前で管理しないといけなくなる。これはなかなかに大変だった。オンラインを主軸とした就活が当たり前になった今だからこその負担かな、とは思う。

今どきスケジュール管理なんてスマートフォンでもできるし、そこにお金をかける必要なんてないんだけど、私はあえてそこにこだわった。紙ベースのカレンダーにびっしりと予定を書き込み、そのひとつひとつをこなしていくことで、自分ですべてを管理していく力を身に付けたかったのだ。それに、手帳を持っているだけでなんとなく「仕事のできる忙しい人間」になったような気がして、仮想社会人生活を追体験できるのが楽しかった。


いつか、この苦しかった思い出や叶わなかった目標を、酒の肴にして笑いながら話せる日が来てほしい。そしてできれば、その日は早ければ早いほどいいだろうな。と思う。

これから就活をする学生にも、ぜひ手帳の購入をおすすめしたい。そして、就活で得た沢山の忘れられない思い出や経験を全部、克明に手帳に書き記していってみてほしい。その小さな積み重ねが、きっとあなたを人として大きくしてくれると思うから。



おしまい。



【 #エンジンがかかった瞬間 参加作品です。】

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