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コラボ作品『旋回、やがて飛び立つ鳥よ』

復活の狼煙のろしを上げながら、小鳥は明日の方向を見ている。そのくちばしでノック、ノック、ノック。閉塞した扉を叩く。振り返った瞳はなにを語るのか。時間の脚は頭部を置き去りにして、立ち止まってくれない。抽象画のような羽根に、希望をひとつまみ。祈りを捧げて、自らをも救済するのだろう。白紙になった土地に、ちいさな鳥が舞い降りる。匂い立つようなことばを引き連れて、透き通った羽根を折り畳む。赤、青、黄、三原色……角度によって、色彩が変化してゆく。風、またモノクロームの風が吹き荒ぶ。冬が立ちはだかる。しずかな瓦礫の山。耳を澄ませば、かすかな温度が震えている。絞り出すようなSOSの声が聴こえてくる。

(しーっ、再生の産声が波打っているよ)

洗面所のひび割れ
クラッカーの食べ滓
感熱した黒い文字
崩れた飴玉
湿気がこもった海苔
ミュージアムショップで買った最後のポストカード
破損した作品
飼い犬が噛んだぬいぐるみ
アイシャドーの飛び散ったラメ
萎んだ風船
散らばった書類
かすれた油性マジック
洗って干してあった瓶の破片
千切れたカレンダー
使い古しのスケジュール帳
伸びきったヘアゴム
中綿が飛び出た布団
乱れている歯ブラシ
出てこない影
生き埋めの鼓動
つめたくなった遺体
足を引っかけた縄
遠くで渦巻いている歓声
押しつぶされた1階
2024.1.1の余震
ふわふわ揺れている頭
津波の通過したあしあと
穴の開いた靴下
傾いた屋根
折れ曲がった雨傘
泥だらけの野良犬の足
ぺちゃんこになった日常
漏れ出した生活音
動かなくなったスマホ
水没したカメラの魚眼レンズ
故障した時計
使用済みの乾電池
色褪せた家族の写真

小鳥が自らの羽根を啄んで、瓦礫の跡地に植える。砂煙。雨のち雪やがて晴れ。太陽の陽射しを待っている。雲、千切れて、流れて、また雲。雨上がりの水溜まりに、雪解けのみずの流れに、復興してゆく街の横顔を映して、ふたたび立ち上がってゆく両足にちからをこめる。震える指先。だんだんと気温が上昇してゆく。春、虹のプリズム、そよ風が歌い始めるだろう。土のしたで耐え続けた羽根もあおい芽を出す。動植物がいのちのことばを運んでゆく。あ、え、い、う、え、お、あ、お、あおい、いのち、の、パレード。傾いていた信号機に緑色がもう一度、点灯する。ひとびとは歩き出した。くるまや電車は走り出した。工場や学校の鐘が鳴り響いた。あの日を忘れない。旋回、ずっと忘れずに、羽根が生え変わって、鳥たちが飛び立ってゆく朝。

Kanazawaスナギツネ (Illustration)
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未来の味蕾  (Poetry) collaboration!

頑張れ、能登半島、そして金沢。
2024.1.1、今年は元旦から大変な地震がありました。そして津波。甚大な被害が発生した能登半島地震。私の住む京都も横揺れが結構、ありました。それからテレビを見ていて、次々と地震情報や津波予報が流れ出して、東日本大震災や阪神淡路大震災を想起させました。私に何ができるだろうか、と考えました。募金しよう、でも私にしかできない応援は他に何かないか?と自問自答。

その頃、Instagramで相互フォローしていたKanazawaスナギツネさんのストーリーズや投稿を見ました。胸が締めつけられました。ちょうど私と tiwaeo_art さんのコラボ作品にスナギツネさんがコメントをくれました。そして私はスナギツネさんと能登半島地震を応援する作品をコラボできないかと思い、スナギツネさんにコラボを提案しました。

そしてスナギツネさんに何か希望のあるものがいい、と提案して、スナギツネさんがこの小鳥のイラストを制作して下さいました。一応「Pray for」という事で、祈りや復興支援を、この小鳥に詰めました、というスナギツネさんからのメッセージ。そこから私が今回の詩を書きました。一日でも早い被災地の復興を祈っています。

2023.2.17 未来の味蕾

Photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、shinyaiのnoteさん)

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