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これまでもこのさきも
4年前からこのひとだと思っていたわたしの目は、やっぱり確かすぎるなと思う。
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すこし苦しい出来事があったので、一杯付き合ってくれませんかと彼にLINEをしたら、「いいよ、ちょうど冷蔵庫からビールを出そうとしたところだった」と返事が来た。秋の初め、どうせ叶わないだろうと高を括った「今度ふたりで飲みましょう」を案外あっさり承諾されてしまったので、食い気味に「いつ!?」と言ったら「10月中には
これこそはと信じれるものが
彼は冬が好きで、彼が嬉しそうなところをずっと見ていられるからわたしも冬が好きだ。
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わたしたちは、身体的な距離の取り方が下手になってしまった。あの夜以来、何食わぬ顔をしてこれまでと同じ関係性を装ってはみたけれど、その手のひらがあたたかいことも、お互いの肌がどれほどしっくりと馴染むかもわたしたちは知ってしまっているので、素肌が触れ合っていないほうがもう不自然だと身体の細胞ひとつひとつがざわ
哀しくなると海をみつめに
年に一度通う北の港町に、わたしに甘い男がいる。
わたしは、「津々浦々の港に女がおりそれらすべてにそれなりの情愛を注いでいるが、本妻のことをちゃんと愛していて帰る家は1軒だけ」を気取った船乗りタイプの多情な男が結構好きで、わりと積極的に「地方の教養の粋を集めて教育された、鄙びた漁村の没落お嬢」然としたポジションを取りに行って、男が選ぶ「その港の女」になりたがってきた。
といっても、ほかの男を寄せ
わたしは水に愛を書く
知らないほうがよかった、と、それでもあのひとを知りたかった、の反復横跳びを生きていくのか、これから。
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わたしはついにあのひと相手だと、「寂しくなっちゃったから、10秒でいいからわたしのこと考えて」などとメッセージを送るような女になってしまった。弱くなったのか、むしろ厚顔になったのか分からない。でもこれが、今まででいちばん素顔のわたしだ。
「今度会えたときはハグさせてね」
わたしがな
滑らかな社会と辿々しいわたし
大判焼きをふたつ買う夢を見た。幸せになろう、と思う。
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年末、かつてとてもとても好きだった男の故郷の隣町の温泉に恋人と旅行をしたら、スリルとリスクに塗れて怯えながらも離れられない恋愛、を、日の当たる場所で手を繋いで歩ける生活、にしませんか、と恋人が言うので、そのようにすることにした。
結婚願望など微塵もなかったし、それを半ば公言してもいた。一方で、恋人は「普通」の結婚願望を公言していた