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SF、読書のよろこびマガジン

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大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
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#読書の秋2020

馳星周「少年と犬」ジョン・ロンドン「野生の呼び声」 新旧犬小説を続けて読むと2倍おもしろかった!

馳星周「少年と犬」ジョン・ロンドン「野生の呼び声」 新旧犬小説を続けて読むと2倍おもしろかった!

馳星周さんは、おもに人間の裏社会の小説で有名なかた。ゲーム好きには「龍が如く」の1作目の監修をして、シリーズを成功に導いた人でもある。「少年と犬」は、震災後の日本で飼い主を探して転々とする犬の話。

「野生の呼び声」はジョン・ロンドンの体験をもとにした動物小説で、過酷な北の大地で犬ぞりをひく犬のはなし。

厳しい生活に震災が追い打ちをかけて、仕方なく犯罪に手をそめて生きる人が悲しい。ゴールドラッシ

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【読書記録】「雨に呼ぶ声」ノーベル文学賞候補・余華の初長編。バラエティ番組の「落とし穴ドッキリ」を連想する。

【読書記録】「雨に呼ぶ声」ノーベル文学賞候補・余華の初長編。バラエティ番組の「落とし穴ドッキリ」を連想する。

!ストーリー重視の作品ではありませんが、内容にふれます!

天災は「菩薩を大事にしないからだ」と迷信で先導する祖父。
封建的で女と子供に厳しい父。
自分だけだと思っていた自慰。好きな子へのイタズラ。思春期の悩みを抱えた主人公。

中国の古い農村の、主人公、父、祖父。
三世代にわたる、老人、おじさん、子供。
それぞれの世代の「どうしようもない男たち」をどうしようもなく繰り返し描く。
特につらい!ひど

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90をこえて、桐野夏生の残酷な小説を読んだばあちゃん、その葬儀

90をこえて、桐野夏生の残酷な小説を読んだばあちゃん、その葬儀

花村萬月の小説には、老眼になって「たかが読書がおっくうになるんだよ」と若い主人公にぐちる男が出てくる。

浅田次郎のエッセイには、麻雀パイを見間違えてチョンボして、眼科で老眼を宣告されて落ち込む作者の姿がある。

渡辺謙が、日本の文字は小さすぎて見えなあああああい!とハズキルーペのCMで怒っていたのは、単に文字が小さいだけじゃなくて、まだ人生は長いのに、世間が自分を無視している感じ、これから一生、

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「卵をめぐる祖父の戦争」

「卵をめぐる祖父の戦争」

この本に書かれた場所も時代も、はっきりとはわからないけど、この心は知っている。
憎い男が、好きな女が、目の前にいるのに何もできない。
すぐ手の届くところにいるのに、動けない。

「卵をめぐる祖父の戦争」戦争でたべるものが無かった時代の、おじいちゃんの昔語り。それも、本当に卵をもとめる戦争だった。「たたかい」でも「あらそい」でもなく、これがひとりの少年から見た戦争のすべてだった。

主人公レフは、あ

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フランス人のプライドが高い初代ルパンの「奇岩城」

フランス人のプライドが高い初代ルパンの「奇岩城」

紳士怪盗アルセーヌ・ルパンがルーベンスの油絵を盗んだ。

天才高校生イジドールが、警察が、ホームズが追う。
手下を縛り上げ、証言を地道に集めて、やっと隠れ家を探し当てる。

ここにルパンがいるはずだ!

しかし、血まなこでたどりついた隠し部屋には、

「ご苦労様。ずいぶん遅かったではないか」といったメッセージが残されている。またしてもルパンは一枚うわてだったか、とみんなでガックリ。そんな流れが繰り

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