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『かがみの孤城』 辻村深月 作 #読書 #感想

読むのは2度目。すごーーく大好きな本。(小並感)
初めて読んだ時は涙が出たなぁ。

あらすじ(Amazonより)

あなたを、助けたい。
学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。

本当に最高傑作で間違いない。主人公の中学生たちの気持ちが嫌と言うほど分かるし、「学校だけが全てではない」、「学校に居場所がなくても、あなたには別の居場所がある」......こんなことを少しでも早く知ることができたなら。救われる子供がたくさんいるだろうなぁ。

大人に説明しようとしても通じない、それに絶望して1人で頑張らなくて良い、というメッセージをくれる素敵な本。
これ思春期に読んでたらもっと痛いほど刺さってしまっただろうなか。
最後の数十ページの怒涛の伏線回収もすごくて、何度読んでも感動できる。


ここからは重大なネタバレを含みます。

ここからは重大なネタバレを含みます。



✔️ 学校に行けなかった子供達が、鏡の中の城に招かれている。
✔️ 鏡の中の白の存在が明らかにならないのは、城で願いの鍵と部屋を見つけて願いを叶えてしまうから。それと引き換えに、城の中で過ごした時間の記憶を忘れてしまうから。
✔️ 全員が同じ中学校に通っていて、始業式の日に会おうとしたけれど、会えなかった。なぜなら同じ中学校の「学校に行けない子供」でも、通っている年が違かったから。本当は同い年ではなかったから。

✔️ スバルは1985年を生きている。自分の人生のために必死になってくれる人がいない、と感じている。学校に行かなくなって、問題児扱いされていても、どうでも良くなっている。
✔️ アキは1992年を生きている。髪を染めて派手になって、年上の彼氏を作って見栄を張って、いつも素直じゃなくて。でも彼女は 義理の父親に性的暴行を受けていた。学校ではバレー部で、後輩を厳しく指導していた。そうしたら、いじめだと言われた。
✔️ こころとリオンは2006年を生きている。こころは主人公。恋愛関係でクラス内の女子と揉めて、ハブられて、学校に行けなくなった。加害者側の嘘にも気づけず、何を言っても理解してくれない担任の伊田先生。
リオンは本当に行きたかった中学校に行けず、サッカーで推薦をもらったハワイの中学に通う。ところが幼い時、7歳年上の姉、実生が病気で亡くなる。そこから親との距離を掴めなくなる。どうして僕だけが、こんなに健康なんだろう。
✔️ マサムネが、2013年を生きている。すぐ嘘をついてしまい、学校では「ホラマサ」と呼ばれる。ゲームがとにかく好きで、なかなか思っていることを素直に言葉にできず、つっけんどんになってしまう。
✔️ フウカが、2020年を生きている。小さい頃から才能があると言われ、ピアノ一筋。ピアノのために全てを賭けてきたのに、いつの間にか弾けなくなってしまった。コンクールの結果も芳しくなく、気づいた時には学校の勉強にはついていけなくなっていた。母1人子1人で、留学するお金もなくて。
✔️ ウレシノは2027年を生きている。彼はいつも何処かで馬鹿にされる。恋をしても、食べていたも、どこかで周りの子に馬鹿にされる。こいつのことは馬鹿にしていい、と思われている。


✔️ 鏡の中の城を案内し、彼ら7人の主人公を翻弄する「オオカミ様」の正体は、リオンの姉で幼い頃病気で亡くなった実生だった。彼らは7年ずつ年が離れている。1992と2006の間に抜けている1999年は、実生の生まれた年だった。リオンはその事実に少しずつ気づいていく。
リオンは最後にお願いする。「城の中での記憶を、忘れたくない。姉ちゃんのことも、覚えていたい。」と。
城が閉まるとオオカミに言われていた日は、実生の命日だった。

✔️ こころやフウカ、ウレシノを助けていたフリースクール(心の教室)の「喜多嶋先生」は、大人になったアキこと喜多嶋晶子のことだった。アキを助けてくれた人に感謝し、自分も自分と同じように学校に行けない子供に寄り添いたいと感じていた。1人として同じではない子供たちの事情に、寄り添いたいと思った最初のきっかけが実生だった。彼女の先生であれた時間が、尊かった。

✔️ こころとリオンは、現実世界の中学校で出会うことができる。

✔️ 城には午後5:00までに帰らなければ、オオカミに食べられるというルールが存在し、家に帰りたくなかったアキはそのルールを破ってしまった。それを助けてくれたのがこころ。アキを城に戻して!ということで、たった1つしか叶えられない願いを使ってしまう。
だから大人になったアキはうっすら覚えている。腕を強く引っ張ってくれた人の存在。助けてくれたこころたちのこと。
彼女は思う。今度は、私がその子たちの腕を引く側になりたい。そう思って、大人になった。



本当に怒涛の伏線回収。主人公たちが学校に行けない理由はどれも痛いほど理解できたし、誰かが城で自分のことを待っててくれている ということが彼らにとってどんなに救いになるのか 嫌というほど分かった。

私もこんな場所が欲しかったなぁ、と思う。例えその記憶が残らなかったとしても。

「普通かそうじゃないかなんて、考えることがそもそもおかしい。」





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