なり損ないの文字の羅列

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  • 彼は誰時のスイートルームで貴方に二度目のお別れを【全七夜】

    それは不思議なホテルの一室の物語 カーテンが付いていない東向きの窓 ツインルームだが一人でしか泊まれない あの世に渡った大切な人と 一夜限りの再会ができるスイートルーム 彼は誰時のスイートルームで貴方に二度目のお別れを   プロローグより

  • 無色

記事一覧

生活の見直し お金編

生活の見直しをする理由 勤続年数8年、稼げればいいやと必要最低限の時間を仕事にあててきたはいいものの、「今後どう生きたらいいか」という迷いにぶちあたった。長期…

環
5時間前
1

生活の見直し 時間編

生活の見直しをする理由 勤続年数8年、稼げればいいやと必要最低限の時間を仕事にあててきたはいいものの、「今後どう生きたらいいか」という迷いにぶちあたった。長期…

環
1日前
7

読書感想文 送り火

送り火  著 重松清 富士見沿線で暮らす、暮らしていた、人たちのお話。たまに奇妙でほんのり温かい、現実的な話が詰まった短編集。  短編集と思わずに手に取って、気…

環
3日前
1

夢で聴いた歌の歌詞メモ

億まで星を数える夜があったって 月のあかりに照らされたくて 楽しいからいいんだよ

環
5日前
4

読書感想文 風に舞い上がるビニールシート

不器用であったり、自分の譲れないものと社会や他人との折り合いがつかない人たちが変わっていかないようで変わっていく、おさまる場所でおさまっていく6つの物語が並んだ…

環
10日前
3

closing down

 降りしきる雪が窓を叩いた。外は豪雪だ。 古びたホテルのロビーは静まり返っていて、今夜は全室空き部屋のまま明日を迎えるだろう。フロントに立ちながら、数冊の週刊誌…

環
12日前
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読書感想文 死にがいを求めて生きてるの

植物状態の青年とその幼馴染について、関係性や植物状態になる経緯を二人に関わる人物の視点で書かれたお話。 螺旋プロジェクトの一冊で、螺旋プロジェクトは複数の作家が…

環
12日前
1

読書感想文 自由研究には向かない殺人

高校生の少女が自由研究の課題として自分の住む町で起きた失踪事件を調べている。失踪したのは17歳の少女で、その少女の交際相手が彼女を殺して自殺をしたとされていた。 …

環
13日前
2

ある彼女の独白

ネオン街の灯りが心地よかった。 眩しすぎる一つ一つがその街を歩く一人一人を照らしてくれていると思う。今夜限り、この場限りだとしても誰もが羨むような主人公気分にさ…

環
13日前

同期入社

大海の渦潮の中を泳ぎ出した三匹の魚がいた。 二匹は小さいが形の良い背びれと尾びれを上手に靡かせて前へ前へと泳いでいく。二匹の尾びれを追ってひとまわり小さく、形の…

環
13日前

ディスプレイに並んだ小窓

真っ黒なディスプレイから繋がる世界 たくさんの小窓を持った緻密な機械 一つ目の小窓から見える人たちは足早で 限られた時間を愛する人を語るために使う 二つ目の小窓から…

環
13日前

結婚祝い

梅雨入りと同じ頃に嫁入りした親友、体調も悪くないよ、と穏やかに云う。心のない祝福と心からの心配は喉を通って空間に、あの灰色の雲ぐらいに暗く留まった。彼女が新生活…

環
13日前

夏が来る

四角いお天気お姉さんが 例年より早い梅雨明けを知らせた 暦の上でのお別れに またねと言いたくて早起きをした また来年会いましょうね、と 口のかたちでそう言った もう振…

環
13日前
1

青いアイコンの小さな世界

恥を忍んで泳ぎましょう 嘘ばかりの海色を映した空の上 僅かな酸素を食えないままに さぞかし滑稽な息継ぎでしょう 君は僕の手を払いのけては泳ぎ去り 息を止めて昨日の雷…

環
13日前

祖母の話

手提げを腕に通して手にデジカメを握りしめた魔女が玄関先で靴を履いている。お母さんさっき出かけたばかりですよ、と丸めた背中に声をかけても聞こえもしなかったように振…

環
13日前
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褒めことば

いつか歩みを止める両足に 地団駄を覚えさせよう いつか器用に動かせなくなる手先に 編み物を教えてやろう いつか冷たくなる四肢に 36.4℃の熱を流し続けよう いつか縮んで…

環
13日前
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生活の見直し お金編

生活の見直し お金編


生活の見直しをする理由 勤続年数8年、稼げればいいやと必要最低限の時間を仕事にあててきたはいいものの、「今後どう生きたらいいか」という迷いにぶちあたった。長期休暇をもらったことで自分の生活に欠かせないものが見えてきたので、時間・お金・趣味の視点に分けて今の生活の分析と、これからの生活の指標を決めていきたいと思う。
 備忘録にするため、ほとんどの項目に経緯を記録する。

時間に関わる生活習慣につい

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生活の見直し 時間編

生活の見直し 時間編



生活の見直しをする理由 勤続年数8年、稼げればいいやと必要最低限の時間を仕事にあててきたはいいものの、「今後どう生きたらいいか」という迷いにぶちあたった。長期休暇をもらったことで自分の生活に欠かせないものが見えてきたので、時間・お金・趣味の視点に分けて今の生活の分析と、これからの生活の指標を決めていきたいと思う。
 備忘録にするため、ほとんどの項目に経緯を記録する。

時間に関わる生活習慣につ

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読書感想文 送り火

読書感想文 送り火

送り火  著 重松清
富士見沿線で暮らす、暮らしていた、人たちのお話。たまに奇妙でほんのり温かい、現実的な話が詰まった短編集。

 短編集と思わずに手に取って、気付いた時に読むの後回しにしようかと思ったけど一つずつの話が濃く、複雑で一冊の小説を読んだくらいのたのしい時間になった。
 
 フジミ荘奇譚と漂流記、ハードラック・ウーマンは、登場する五人の老婆と徘徊する無人のベビーカー、富士見地蔵が奇妙さ

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夢で聴いた歌の歌詞メモ

夢で聴いた歌の歌詞メモ

億まで星を数える夜があったって
月のあかりに照らされたくて
楽しいからいいんだよ

読書感想文 風に舞い上がるビニールシート

読書感想文 風に舞い上がるビニールシート

不器用であったり、自分の譲れないものと社会や他人との折り合いがつかない人たちが変わっていかないようで変わっていく、おさまる場所でおさまっていく6つの物語が並んだ短編集。

職種も年代も置かれた環境も様々だった。仏像を直す仕事をする人や仕事をしながら大学に通う人、難民を支援する機関で働く人、結婚してる人、していない人、、聞き慣れない言葉、事柄も多くあったけどその説明も上手く纏められていて物語に入り込

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closing down

closing down

 降りしきる雪が窓を叩いた。外は豪雪だ。
古びたホテルのロビーは静まり返っていて、今夜は全室空き部屋のまま明日を迎えるだろう。フロントに立ちながら、数冊の週刊誌を順番に眺めている。
芸能人の熱愛スクープ、最新詐欺手口、某ホテル支配人が謎の不審死、、、違う、これも違う、とページをめくる。あの記者の名刺を受け取っておけばよかった、と首を垂れた。

死人に会える、なんて噂が口伝えに伝わってオカルト界隈で

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読書感想文 死にがいを求めて生きてるの

植物状態の青年とその幼馴染について、関係性や植物状態になる経緯を二人に関わる人物の視点で書かれたお話。
螺旋プロジェクトの一冊で、螺旋プロジェクトは複数の作家が異なる年代で二つの種族の対立を描いている。

植物状態の青年に関わった人の話では、対立する二つの種族について書かれていて、幼馴染に関わった人の話では幼馴染がどういう人か見えてくる。読んでいくと幼馴染が青年と対立する種族にそれぞれ属しているこ

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読書感想文 自由研究には向かない殺人

読書感想文 自由研究には向かない殺人

高校生の少女が自由研究の課題として自分の住む町で起きた失踪事件を調べている。失踪したのは17歳の少女で、その少女の交際相手が彼女を殺して自殺をしたとされていた。
自由研究の課題として取り上げたのは、少女の交際相手を知っていて人を殺すような【悪い人】だと主人公には思えなかったから。主人公は自殺したとされた交際相手の弟とコンタクトを取ると、兄の無罪を信じていた彼も捜査に加わった。

関係者の聞き込みか

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ある彼女の独白

ネオン街の灯りが心地よかった。
眩しすぎる一つ一つがその街を歩く一人一人を照らしてくれていると思う。今夜限り、この場限りだとしても誰もが羨むような主人公気分にさせてくれる。今夜のわたしは恋人とのデートを蹴って一人この街にいた。恋人に対する罪悪感はもう無かった。ピンヒールが地面を跳ねる音や雑音、この街の全てを心地いいと思えることが今夜恋人と過ごさない一番の理由になる。

2023.3

同期入社

同期入社

大海の渦潮の中を泳ぎ出した三匹の魚がいた。
二匹は小さいが形の良い背びれと尾びれを上手に靡かせて前へ前へと泳いでいく。二匹の尾びれを追ってひとまわり小さく、形の悪い尾びれを持った三匹目がついていく。二匹は時々泳ぎを緩めて三匹目が辿り着くのを見守った。

三匹目より半身ほど先を泳ぐ一匹目の魚は半年後に一隻の舟になった。三匹目より頭ひとつほど先を泳ぐ二匹目もそれから一年後に一隻の舟になった。魚は別れを

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ディスプレイに並んだ小窓

真っ黒なディスプレイから繋がる世界
たくさんの小窓を持った緻密な機械
一つ目の小窓から見える人たちは足早で
限られた時間を愛する人を語るために使う
二つ目の小窓から見える人たちは
節操ないけど愛し方に情熱をかけて語り合う
三つ目の小窓から見える人たちは煌びやかで
横文字の読解能力高くて分析上手
四つ目の小窓から見える景色は不思議
でもシャッターを切った時の気持ちが知りたい
五つ目の小窓は変幻自在 

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結婚祝い

結婚祝い

梅雨入りと同じ頃に嫁入りした親友、体調も悪くないよ、と穏やかに云う。心のない祝福と心からの心配は喉を通って空間に、あの灰色の雲ぐらいに暗く留まった。彼女が新生活を語るほど私の頭の中は時を遡って会う。いつもの朝の駐輪場の、低血圧な私を心配して覗き込む彼女の顔と。女たらしで束縛魔な当時の彼氏の愚痴をこぼす彼女と。

もうあの彼女と二度と会えない代わりに今の彼女がすり抜けていく。この雨が上がったら手紙を

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夏が来る

夏が来る

四角いお天気お姉さんが
例年より早い梅雨明けを知らせた
暦の上でのお別れに
またねと言いたくて早起きをした
また来年会いましょうね、と
口のかたちでそう言った
もう振り返らない憂鬱な背中に
降り注ぐ蝉時雨は届かない

青いアイコンの小さな世界

青いアイコンの小さな世界

恥を忍んで泳ぎましょう
嘘ばかりの海色を映した空の上
僅かな酸素を食えないままに
さぞかし滑稽な息継ぎでしょう
君は僕の手を払いのけては泳ぎ去り
息を止めて昨日の雷雲に手を伸ばす
出戻り梅雨におかえり、と
夏の風物詩に初めまして、と
鎮まらない魂にお悔やみを、
無様なバタ足を海底から嘲笑う僕
だから今夜もワンマンショー
君を見張って尻もちついても
大衆は往来  座り込んだら往生
どうしても  ここ

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祖母の話

手提げを腕に通して手にデジカメを握りしめた魔女が玄関先で靴を履いている。お母さんさっき出かけたばかりですよ、と丸めた背中に声をかけても聞こえもしなかったように振り向くことなく出て行った。襖で仕切った隣の部屋から落語家がオチを語って観客がどっと笑う声がした。魔女がまたテレビを消し忘れたらしい、はぁ、とうすい溜息をついて外に干した洗濯物を取り込みに行く。2階のベランダに出ると来月に見頃を控えた花畑にチ

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褒めことば

いつか歩みを止める両足に
地団駄を覚えさせよう
いつか器用に動かせなくなる手先に
編み物を教えてやろう
いつか冷たくなる四肢に
36.4℃の熱を流し続けよう
いつか縮んで働かなくなる脳みそに
平凡で凡庸な1/365日を刻み込もう

いつか不自由な自由に開放される魂の我儘を
“全身”で聞いてやろう