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読書感想文 風に舞い上がるビニールシート

不器用であったり、自分の譲れないものと社会や他人との折り合いがつかない人たちが変わっていかないようで変わっていく、おさまる場所でおさまっていく6つの物語が並んだ短編集。

職種も年代も置かれた環境も様々だった。仏像を直す仕事をする人や仕事をしながら大学に通う人、難民を支援する機関で働く人、結婚してる人、していない人、、聞き慣れない言葉、事柄も多くあったけどその説明も上手く纏められていて物語に入り込むのに邪魔ではなかったし、かえって私が全く知らない想像できない境遇の登場人物の心情を身近に感じられるのが良かった。

世の中に良いと思わされる物語はいっぱいあるし、読み手の感情の動線が引かれた物語も多いと思う。そういうものが嫌いなのに私が書く創作小説もそういうものがあって書きながら嫌になる。

この本の良さは、登場人物全員が良いところだと思う。皆それぞれに懸命でポリシーがある、そのせいで上手くいかないところがある、でも皆誰かと関わっておさまるところにおさまっていく。視点は主人公だけど、主人公だけにフォーカスを当てない、主人公だけが特別な何かを抱えているわけじゃない。だから人間臭い話だけど、読んでいて安心できる。

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