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Naked Desire〜姫君たちの野望

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舞台は西暦2800年代。 世界は政治、経済、そして文化のグローバル化並びにボーダーレス化が進み、従来の「国境「国家」という概念が意味をなさなくなっていた。 欧州大陸にある、…
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#日常

Naked Desire〜姫君たちの野望

「なになに……うわぁ、なんなのこれ?」私は、見ている風景が、どす黒い雲で覆われる感覚に襲われると
「はいはい……げっ、なにこれ……」と、フリーダの身体が硬直し
「ねえ、いくら何でもひどくない、これ……」抑えた口調で話すアネットだが、彼女の全身からは、苛立った憤りがわき上がるのが見て取れる。
私たち3人の目に飛び込んだのは
「『神聖』なる帝国の皇女達の、ふしだらな異性関係」
というタイトルのゴシップ

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Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁-36

「あなた、この国の皇女ってわかってる? それもただの皇女ではなく、高い皇位継承権を持った皇女である立場なの。そんな人間が、公衆の面前で暴漢に襲われた。それが原因で、護衛の人間が責任を問われ、その座を追われるかもしれないということを、マリナはどう考えるのよ?」
言葉遣いこそ丁寧だが、その口調は、反論を許さないといわんばかりに冷徹だ。そう、彼女は職務のためならば、悪魔にもなれる

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Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁-17

2人の口論は、終わる気配がない。私が周囲を見ると、いらだちの視線を向けているのはキャサリンだけではない。捜査関係者も、それは同様だった。何人かが、ラッシャーとフリーダを見ながら、なにごとかひそひそ話をしている。どんな内容なのかは、おおよそ見当がつく。総店長が口論しているから、仕事がはかどらないのだ。
「あのう、ちょっとよろしいでしょうか?」
私とキャサリンに、一人の警察官

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Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁−15

私は素早く、キャサリンがいる方向に姿勢をかえた。
彼女はアクア色の無地のシャツの上に、濃紺のノーカラージャケットを羽織り、前のボタンは開けている。下半身は、ジャケットと同じ色のレギンス、黒のパンプスという格好で、私の目の前に立っている。
近衛兵といっても、軍服を着用するのは国家や軍隊の儀礼行事がある時だけで、普段はスーツで勤務する。キャサリンに率いられた近衛兵も、全員がス

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Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁−14

「うっせえなこの野郎! なにを偉そうに!」
といいながら、男は歯を食いしばって、両方の拳を握りしめるる。
私はそばの店員に、警察を呼ぶように伝えると、改めて男に向き合う。
「この店は、全館禁煙だとわかってますわね?」
この店には、店内の目につく場所に「全館禁煙」という案内板が設置されている。誰にでもわかる場所にあるので、知らないと言うことはありえない。この男がなにか不埒な目

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第一章 心の壁−11

「メールの内容は?」冷たい汗が、背中を流れるのがわかる。
「あなたのコップを、簡易鑑定キットで検査したらしいの」
「どんな結果だったの?」
「ごくわずかだけど、睡眠薬の成分が検出されたって。で、詳しい検査をするためにキャサリンは、そのワイングラスを別部署に持参するそうよ」
「……」ショックのあまり黙り込む私。
「これでわかったでしょ? あなたがバスルームで溺死しかけたのは、

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第一章 心の壁−10

フリーダ・ポボルスキー、年齢は私と同じ23歳。独身。
国立宮廷行政学院で地理学を専攻し、今年から枢密院秘書課に配属された女性だ。
「おはよう、フリーダ。とりあえずコーヒー飲もうか」
と声をかけ、レジカウンターに移動しようとする。
だが彼女は素早く私の前に動くと、丸い目を細くした……かなり怒っている証拠だ。
「ねえマリナ、今朝何があった?」フリーダは、上目遣いで私を見る。

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第一章 心の壁−9

屋敷から車に乗ること5分足らず。私─エルヴィラ・ジャンヌ・マリナ・カーリン─は、最初の目的地に着いた。
「カフェ・ルーエ グラーツ総本店」─ドイツ語で「憩い」という意味を持つこの店は、国内でも5本の指に入る大規模なカフェ・チェーンの旗艦店として、首都の住民に認知されている。
営業時間は朝7時半から夜は8時までと長いにもかかわらず、店舗の立地条件の良さもあり、店内は朝から晩ま

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第一章 心の壁−8

ギムナジウム(高校)に進学しても、相変わらず他人との会話や集団行動が苦手だったクラウスは、校内で孤立していた。
修学旅行前に開かれたホームルーム(HR)でクラウスは、クラスメートのいじめを理由に、ギムナジウム(高校)の修学旅行を拒否すると宣言した。いじめ問題は、心ある数人のクラスメートが動いたことで解決したが、結局彼は修学旅行を、無断で欠席した。
修学旅行は原則として、同一

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第一章 心の壁−7

「クラウス、起きないと遅刻するよ。さっさと支度しな」
クラウスと呼ばれた青年は、母親の罵声を目覚まし代わりにして、自室で目が覚めた。
う、うーんと彼はベッドの上で背伸びをすると、壁に掛かっているデジタル時計を見た。
時刻は、朝8時に近い。しまった、また寝過ごした。急がないと遅刻する。
ベッドから飛び起きて洗顔を済ませ 、身支度をする。今日の格好は、白地の丸首シャツと青色のデ

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Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁−5

声の方向に視線を向けると、清楚な雰囲気を漂わせた一人の令嬢が、恭しく頭を下げた。
彼女は、ルイーゼ・ヴィクトリーヌ・エリナ・ビルギット・フォン・ゾンネンアウフガング=ホッフヌング。私の妹だ。
「おはよう、ルイーゼ。ずいぶん早いのね」
「わたくしがが早いのではなく、お姉様がお寝坊なのですわ」
やや険のある口調で、妹が応じる。
妹の食卓に目をやると、皿の料理はきれいになくなって

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Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁-4

「チッ」キャサリンは、忌々しげな表情で舌打ちした。
その表情には「話を逸らそうとしてんじゃないよ」という感情が浮かんでいた。
「夕べ、何か飲み食いしたか?」
キャサリンは夕べのことを私に尋ねた。
昨晩、私がオトコと一戦を交えていたことは、彼女もわかっていたはずだ。
夜分に上流階級の令嬢が、オトコを自室に引っ張り込むというのは、私たちの世界ではよくあることだ。もちろんキャサリ

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Naked Desire〜姫君たちの野望

第9回 心の壁-3

「髪の毛が濡れたままじゃないか。またバスタブで寝ていただろう?」
「うん、キモチよくなってついウトウト……」
私は、バスタブの中でうつらうつらすることがよくある。
だから今日も彼女には、今回もバスタブでうつらうつらしていたしていたと思ってもらいたかった。
ところが、この時のキャサリンは違った。
「フーン。それにしては、さっきの反応は尋常じゃないが……」
今朝の私の態度から

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Naked Desire〜姫君たちの野望

第8回 第一章 心の壁-2

私は軽口のつもりでいったが、相手はそうは受け取らなかったらしい。
その言葉を聞いたとたん、オルガの顔色が変わった。
「悪かったわね! どうせ私なんか穀潰しだよ!」
顔を真っ赤にし、ドンドンと床を踏みならしながら私を罵倒するオルガを、私はまあまあとなだめ続けた。
「朝っぱらから悪かった。ごめん、この通り」
私は必死に頭を下げ、両掌を合わせて謝るが、それでもオルガの機嫌

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