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本紹介

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#読書

最初の悪い男

最初の悪い男

『最初の悪い男』(ミランダ・ジュライ著 岸本佐和子訳 新潮社)をやっと読了。おもしろかった。

どこかで「文学は普通じゃないことを求める」みたいな文を読んだけど、じゃあ「普通」なんかこの世にあるのか?っていう気もする。
でもやっぱりカテゴリーとしての「普通の生活」とか「平均的な」とか「一般的には」というのはあるのだろう。
この物語にはいわゆるそういう「普通カテゴリー」に属する人が出てこないんだけど

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迷い道くねくね

迷い道くねくね

多くの人が言うように、不惑を過ぎても、惑うことがなくなるわけではない。日々迷ったり揺れ動いたり。

そんな迷える中年も中2もみんなで読もう!と思える児童書を。

『夢はどうしてかなわないの?』大野正人/著(汐文社)

「そんなん大人でも知りたいわ!」と叫びたい。
そして、「夢はかなわないもの」との前提が衝撃的。
かなわないのには様々な理由(悪魔)と遭遇するからだけど、「説教臭かったら承知しないぞ」

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冤罪と失踪

冤罪と失踪

長らく気になっていながら読んでいなかった児童書『ぬすまれた宝物』(ウィリアム・スタイグ著 金子メロン訳)。(本当にごめんなさい!読んでないなんて児童書担当者としてあり得ないよね…)

いやー、これは大人が読む物語ではないか?

冤罪で失意のガチョウ、ガーウェイン。袴田さんを思い出す。
そして、逃亡の隠遁生活。小野田さんや横井さんを思い出す。

と思って、ついつい「小野田さん」で検索したところ、思い

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終わりでしょうね…

終わりでしょうね…

ここのところ体調が今ひとつで、精神的にも不安定。なんとなく毎日眠る前に死のことを考えてしまう。

死とは、生まれる前の状態、すなわち無に帰すこと、と思っているのだが、生まれる前には無かった「あの人がこの世に存在した」という記憶が、周囲の人々の中に残るので、全き無ではなく、私の場合、子どももいるので、とりあえず血筋のようなものも残るわけだし、生物としてなんというかまあやることはやったのかしらねー、と

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心の鎖国を解く

心の鎖国を解く

この本を読み始めた頃は、心がカッチカチで閉じていた。
だから、「心を開いて対人温度を上げよう」とか言われても、「なーにを言うかこの成功野郎」とか毒づいていたわけで。

齋藤孝著『からだ上手 こころ上手』

日野原先生の「生き方上手」にも通じる上手路線。
オープンマインドでコミュニケーション上手なナイスガイを目指す君、閉塞感漂う日本になんて留まっていたくない君、人の先に立って皆を引っ張って行きたい君

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百年前を思うこと=百年後を思うこと

百年前を思うこと=百年後を思うこと

タイトルだけで「読んでみたい」と思う本てあります。これがまさにそうでした。
年を重ねるにつれ、「今日生まれた赤ん坊も百年後にはいないことの方が多い。もちろん自分はいない」ということは心をよぎります。

『百年後、ぼくらはここにいないけど』長江優子/著

ジオラマ作りとか、鉄オタの過去を持つ主人公とか、ちょびっと鉄分高めの設定ながら、渋谷という大都市に生きる地元中学生の青春(しかも地理歴史部というマ

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いまさらながら

いまさらながら

いろいろあった昨日の、ウツウツを引きずって起きる。夢の中で怒鳴っていて、怒りで目が覚めてしまった(笑)
そんな気分を振り切るために、本を読んで現実逃避。

『アーモンド入りチョコレートのワルツ』森絵都/著

大変お恥ずかしいことであるが、森絵都さんの代表作ともいうべきこの短編集を読んでいなかった。
ううむ、涙が止まらないぞ。
メンタルのせいかとも思ったけど、やっぱりうまいのですよ!
ちょっとおとぎ

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死んだらどうなる

死んだらどうなる

ずっと気になっていた青い本がある。
全ページの上部が水色の空になっているという凝った造りである。

思いがけず、あっけなく、気がついたら死んでいた少年のおはなし。

『青空のむこう』アレックス・シアラー/著 金原瑞人/訳

死んだらどうなるのか。それは誰しも知りたいところであり、そして誰も知らないことである。
自分が死んだあと、周りの人がどのように過ごしているのか、自分のことを思ってくれているか、

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だれか、ふつうを教えてくれ!

だれか、ふつうを教えてくれ!

『コンビニ人間』を読んだ時に、「普通ってなんだろ」という思いが強まったのです。

そして、前から友達が勧めてくれていた

『だれか、ふつうを教えてくれ!』倉本智明著(よりみちパン!セ)理論社

を読んでみて、またもやいろいろ考えさせられました。
折しもパラリンピックが開幕しようというこの時期に、この本と出会えたことは良かったです。

この本は、主に障がいを持つ人のことを書いているのですが、すべては

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ふたつの「ぶっちがい」

ふたつの「ぶっちがい」

並行して読んでいる2冊に、まったく同じ言葉が出てきた。
しかも、長いこと生きてきたくせに、恥ずかしながら生まれて初めて聞く言葉が。

その言葉とは、

「ぶっちがい」漢字で書くと、「打っ違い」。
*十字形にななめに交差させること。また、その形。すじかい。うちちがい。ぶっちがえ。「板を―に打ちつける」(goo国語辞書より)

最近たまたま2冊の本にその記述を見つけて、その偶然に目がくらむ。

↑アー

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ロシアドーピング問題とマクラウド

ロシアドーピング問題とマクラウド

ロシアの選手がオリンピックに出られる出られないで、すったもんだしてましたね。
ドーピング問題を考えることは、スポーツってなんだろう、競技生活ってなんだろう、ということを考えることとイコールであるように思います。

ちょうど読んでいた、『煉瓦を運ぶ』(アレクサンダー・マクラウド著 小竹由美子訳)という短編集の最初の一話「ミラクル・マイル」が、陸上競技選手の話でして、クスリの話も出てきました。

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遅ればせながら、文豪ブームを知りました

遅ればせながら、文豪ブームを知りました

小学6年女子が、「太宰治の『人間失格』ありますか」と図書室にやってきたのが春頃でしたか。
なにゆえ読みたいと思ったのか尋ねると、実名文豪キャラが登場するマンガがおもしろいとのこと。

「太宰治のワザが、「人間失格」っていうんですよ」と言われ、頭が?の嵐で埋め尽くされる…。

文豪の名作シリーズの表紙が、こんなんなってるのを書店で見かけたのが先月くらいでしたか。

そしてついに今日、youtub

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空の境地

空の境地

難しい。死を迎える頃にはこの境地がわかるようになるのだろうか?

1年4ヶ月前に、親しい友達がこの世からいなくなりました。
きっと、死にたくなかったんだろうと思います。
どんなに生きたかっただろうと、最近よく思い返します。

いろいろごまかして、直視できないでいたなーと、思い返します。

死ぬという経験は、孤独の塊というか、なんというか、限りなく独りなんですよね。
できることなら私はこの友達と一緒

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17歳を仮想体験

17歳を仮想体験

この軽薄なタッチ、けど文学的表現がそこここに散りばめられている女子高生宇宙人が主役の小説。

最果タヒ著『渦森今日子は宇宙に期待しない』

いやー、おもしろくて、電車の中でもニヤけてました。

著者があとがきでいうように、17歳という季節は、「都合よく記憶を改竄した大人による解釈じゃ、絶対一生消化はできない」そうです。

17歳は遥か数万光年彼方、もう別の人生としか思えない歳になってしまったわたし

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