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俳句・短歌・長歌

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その一葉

その一葉



取り残された一葉が
風に吹かれて身を離す
この時に抗うわけでも
ましてや待つでもなく
ただ落ちる

小川の水面をゆらゆらと
役目を終える葉を抱え
水の流れのその先にあるものは
恐らく次の春

少し眩しい日の光に
手を翳したわたしは
運ばれるままの一葉を

見送った



短歌
#詩 #短歌 #創作

明けましておめでとうございます

明けましておめでとうございます

今年も歳旦三つ物で新年のご挨拶をさせていただきます。

【遥々と】

発句 初鶴 新年
脇  四方の春 新年
第三 忘れ雪 仲春

今年もよろしくお願いします。
#歳旦三つ物 #連句 #新年のご挨拶

言祝ぎを前に

言祝ぎを前に

【長歌】

盃を手に収めれば
肩の荷に見つけられるか
父の背をさすることなく
見送った日を

暮れゆけば振り返り見る細々に
長くもあれば短くもまた

◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇

*久しぶりすぎる長歌です。(笑)
長歌の構成については何度か行なっているので控えますが、今回は五七で繋げました。でもやはり五/七五七五の方がリズムがとりやすいです。
今回律毎に改行せずに、画像に書いたように縦にず

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秋に向かう夏 五句

秋に向かう夏 五句

メンバーシップ句会参加句です。
今回は夏もしくは秋です。

縁側の静かなことよ江戸風鈴
《風鈴 三夏》

八百万酔ってなんぼの夏祭り
《夏祭り 三夏》

ひと湿り仕立ておろしの藍浴衣
《浴衣 三夏》

見上げれば花火の後に星ひとつ
《花火 初秋》

浮き雲の遠く遠くへひぐらしよ
《ひぐらし 初秋》

わたしはやっぱり夏が好きだ。


風鈴の句
今は無い田舎の家を思い出します。
木々の匂いの中、静

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メンバーシップ句会

メンバーシップ句会

メンバーシップ句会参加作品です。
今回は春・夏の句です。

のの様に甘茶をかける幼い手

闊歩する街の男の春日傘

陽の香り集めてそよぐ柿若葉

沈む陽に誰が鳴らすか麦の笛

雨垂れを数える日々の紫陽花よ

今、日傘男子も増えてきているようです。
我が神話部部長も日傘男子。
画像は作り込んだ物ですが、この傘は間違いなく日傘。男性用にスタイリッシュな日傘も増えているみたいですね。
♪( ´θ`)

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三月句会

三月句会

花と旅立ちの季節。
今回は春がテーマの句会でした。

散ってこそ胸に留まる花姿

制服を畳んで母も卒業か

悠々と春暁に立つ富士の山

引く波は水のベールか桜貝

桜湯を黙ってすする父の背よ

結納や婚礼など慶事の際に用いられる桜湯は、主に八重桜の塩漬けを使います。
親族控室は桜漬けの良い匂いと、独特の雰囲気に包まれる空間でした。

幼い頃からの数々が胸に去来し、嬉しさと寂しさが入り混じっているで

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五句 冬〜春

五句 冬〜春

彩りを待つまでもなく葉牡丹よ

ひと枝に命惜しむか雪の声

春浅く鳥の見つめる空の先

リズム取りクレソン散らすシェフの顔

たびら雪ほころぶ土の手触りよ

雪の季語が晩冬から春にまたがるのは、旧暦云々に関係なく感覚的にわかる気がします。
閉じておきたい胸の内に寛容なんだと。

ソースかけや最後の仕上げはシェフの仕事。懐かしい光景を思い出します。
( ´∀`)
#俳句 #現代語俳句

俳句三句 冬

俳句三句 冬

からっ風少なくなった鼻つらら 

さみしさも移ろう空よしぐれ虹

間の山野辺で紅さす夕霧忌

近松門左衛門の作品に夕霧阿波鳴門渡と言う演目があります。
実在した大阪一の太夫夕霧をモデルにしたお話で、死の淵にいた夕霧が長く会う事の無かった息子と夫の歌う間の山(「あいのやま」正確には間の山節ですが、間の山とも言います)を聞いて命を繋いだと言う結末を持ちます。
実際の夕霧は若いうちに惜しまれて亡くなった

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一首

一首

短歌

長歌

揺らぐ火にかざす手のひら
凍てつきし祈りの果てを
引き寄せて溶かす火の音
仰ぎ見る炎の先を
染むる陽は明日の春か
いわし雲
燃やした日々の
遥かなること
昨日今日明日の夕陽眺むれば
焚き火で燃やす夢ぞ帰らん



イーグルさんの「焚き火」を聴きました。炎の揺らぎと木片が燃えるパチパチという音は、癒し効果があると言われています。
折れそうになる毎日ですが、じんわりと温まる時を、夕陽

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歳旦三つ物

歳旦三つ物

明けましておめでとうございます。

今年もまた歳旦三つ物に挑戦しました。

今年こだわってみたのは「天地人」です。
そう言う事をしようとするから首を絞めるわけです。
連句の発句、脇、第三を年の初めに詠むもので、式目は連句に従うのですが、第三は春か無季を選べるとの事。
何にせよ、また挑戦できて良かったです。

元旦に初詣。市内にある布施弁天に言ったのですが、弁天本尊の隣に立つこちらの布施観音があまり

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12月句会

12月句会

今年最後のメンバーシップ句会に参加しました。冬の五句です。

年々と腹に響いて除夜の鐘

掃除の手とめて眺める古暦

屈んでも柚子湯に浸かるぜいたくよ

砕けては音だけ残す冬の海

冬枯れよまだ見ぬ明日を想う人

広々とした温泉では無くても、柚子湯はたまらないです^ - ^
クリスマスは元々はキリスト教のお祭りでは無く、ケルト民族の冬至を祝うお祭りだったとか。
イギリスから北欧、冬の日照時間が短い

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帰り花 メンバーシップ句会

帰り花 メンバーシップ句会

11月のメンバーシップ句会への参加句です。

掌を添えてぬくめて帰り花

赤提灯しみるおでんにほろ酔いか

スケートのエッジが魅せるミュージカル

伝えたい言葉ひとつよ冬紅葉

声冴えて杜氏がさばく倉の朝

小春日和の中、フッと咲く桜や梅の花を帰り花と言うそうです。
「おかえり」と言えるだけの余裕が欲しいところ。年末に向けて慌しい日々が続くのですから。

スケートの句。最後ミュージカルにしましたが

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小春日和には

小春日和には

色付く葉のすぐそばで、ひっそりと咲く秋深い時の花を見た。
この季節、昔ならば年末年始のあれこれを思い、慌ただしさも楽しみも感じていたものだった。
それが今では繰り返し考える。
自分が生きてきた年月に、やってきた事やってこなかった事を。
委ねるとは真にどういった事だろうか。単に右往左往しないと、それほど単純な事なのだろうか。
わたしにできるだろうかと。

これから小春日和の時には丹念に掃除をしよう。

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