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ヘヴィ・メタルとスターフィールド

僕はゲームが下手だ。

致命的にゲームが下手だ。あれだけ楽しみにしていて、6000円もはたいて購入したアーマード・コアⅥが、今では部屋の片隅でプラスチックの綺麗なゴミになっている。そう、チュートリアルの極悪武装巨大ヘリコプターで心がバキボキと折れてしまって、本編に入る前にやめてしまったのだ。いや、チュートリアルであんな悪魔を出すなよ…あまりの無力感にコントローラーを投げることさえできず、気がつくとあのちゃんねるを無心で見続けていた。

とはいえ、下手の横好きという言葉があるように、僕はゲームが大好きだ。決して性の伝道師に奥義を伝授されたわけではないけど、セックスも大好きだ。そしてそんな下手の横好きゲーマーが最近目がないジャンルがある。オープン・ワールド・ゲームだ。

オープン・ワールドが素晴らしいのは、下手クソでもクリアできるところだ。一方通行のシナリオだけじゃないから、あーちょっと無理!って思ったら堂々と横道に逸れることができる。横道に逸れている間に、レベルが上がり、装備も強くなり、腕前もそこそこ達者になっていたりして、気がつくとストーリーで詰まっていたところも難なくクリアできたりする。アーマード・コアのチュートリアルが突破できなかった僕でさえ、エルデン・リングはクリアできたんだから!

それに、横道に逸れること自体がとても楽しい。今、どハマりしているのがスターフィールドというゲームなんだけど、もう横道に逸れまくりだ。

まずね、1000を超える惑星を実際に歩き回れる!うれしい!星々を歩き回っていたら突然湧いてきた魑魅魍魎に殺害される!たのしい!ゲームの中で顔面レベル中の中くらいの微妙なオネオバさんと結婚できる!大好き!いやー、もう最高なんだよね。

とにかくタスクが多くて、街中をウロウロと歩いているだけでミッションが永遠に増えていく。今のところ、同行している嫁のオネオバさんがヒステリーをおこすのであまり反社会的な行動や、別のオネオバさんに浮気や、顔が気に食わないヤツを突然銃弾で貫いたりはできないのだけど、それでも人助けをしながらレジェンダリーな武器を手に入れたり、レベルを上げたり、スキルを取得していくのがもうたまらなく自由で楽しいんだよね。僕が次のマンティスってコト?!

で、オープン・ワールド・ゲームばかりやっていて、何か似ているものがあるなーって思ったんだよね。そう、僕が大好きなヘヴィ・メタル。メタルもオープン・ワールドなんだよね。

まず、とにかくバンドが多い。1000どころの騒ぎではない。Spotify によると、ヘヴィ・メタルは世界で最も成長しているジャンルで、Encyclopaedia Metallum によると、145カ国、81,207ものメタル・バンドが存在しているらしい。鬼が出るか蛇が出るか邪が出るかはわからないけど、とにかくこれらを僕たちは余すことなく自由に探索することが可能だ。うれしい!

スターフィールドには、いくつかの勢力があって、それぞれの勢力に参加してミッションをこなすことができるんだけど、かぶっても大丈夫なんだよね。宇宙海賊を取り締まりながら宇宙海賊をやったり、対立する勢力同士に所属し互いを煽りながらフィクサーのように振る舞うこともできる。これもねー、メタルなんだよね。純粋無垢で愛に満ちたメロハーを聴きながら教会を燃やしたり、プログ・メタルの壮大美麗な景色に涙しながら死体を漁ることが可能だ。つまり、寛容なんだよね。細分化されたジャンル同士で血みどろの抗争を繰り広げたりはしないんだ。楽しい!

何より、ヘヴィ・メタルほど横道に逸れやすい音楽もないだろう。そうかそうか、IRON MAIDEN は UFO が好きだったのかと "UFO 1" を遡って聴いて心の底からピンとこなかったり、"Alexander The Great" のエピックに心を打たれてマケドニアとアレキサンダー大王の歴史についてのみやたら詳しくなってしまったり、メイデンとゲームが好きすぎてエディのクソゲーにまで手を出してしまったりと、むしろ横道しかない。これほど、バンドが提供するテーマや、ルーツや、様々なギミックを堪能して、深掘りできるジャンルが他にあるだろうか?!大好き!

今のところ、スターフィールドに終わりは見えない。銃の撃ち方も大して上手にはなっていないし、船もマンティスからパクった盗品だし、ノーマルでも時々は死ぬ。それでも、この宇宙についてだんだんと詳しくなって、生き抜く術を覚えていくのが楽しくてしかたがない。そうなんだよ。ヘヴィ・メタルも同じなんだ。別に上手く聴く必要なんてないんだよ。マサ・イトウのHM王座決定戦を勝ち抜く必要なんてない。ただ横道に逸れながら、自由に探索すればいい。メタルの宇宙は無限なんだから。


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