記事一覧

キリング・オブ・ケネス・チェンバレン

人権認識が著しく低い日本では決して生まれない作品。人権を侵害するものにはそれが公権力だろうと毅然と立ち向かう。貧困、人種、病気など関係ない自身の権利を力強くロジ…

marotaku
9か月前

君たちはどう生きるか

「君たちはどう生きるか」は絶賛されそうなので、批判的な観点で感想を書いておく。この作品は宮崎駿の少女愛、成熟した女性への恐怖、母性愛への渇望をニーチェの「永劫回…

marotaku
11か月前
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日本会議の研究 / 菅野完を読んで

「日本会議の研究」読了。日本会議が行なっている活動の根源を辿って行った先にいるのは櫻井よしこやケントギルバートではなく70年安保の学生運動を続けるかつての右翼学生…

marotaku
1年前
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竹中労【人と思考の軌跡】/ 鈴木邦男 を読んで

1月末に一水会創始者である鈴木邦男が亡くなった。右翼である鈴木邦男が竹中労との思い出を語った一冊。右翼というと児玉誉士夫と獄友であった岸信介が国際勝共連を作り財…

marotaku
1年前
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家族と国家は共謀する / 信田さよ子 を読んで

「家族と国家は共謀する」家族の中では暴力はプライバシーという壁に覆われて表面化されづらい。非対称性のあるコミュニケーションは精神的、肉体的な暴力へと繋がる。自己…

marotaku
1年前
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ジェンダー秩序 / 江原由美子を読んで

「ジェンダー秩序」読了。社会に漂うジェンダーの正体を論理的に説明する良書。著者が読み手に誤った解釈を与えなよう配慮して書かれているため読解には根気が必用。構造に…

marotaku
1年前
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ハーバードの個性学入門 平均思考を捨てなさい / トッド・ローズ を読んで

「個性学入門」#moonlightgear のYoutubeで紹介されており手に取った一冊。平均値が描く太いパスよりも、平均思考の中ではノイズとして見えなくなる個性が描くパスがイノベ…

marotaku
1年前
3

ハマータウンの野郎ども / ポール・ウィリス を読んで-その2

「ハマータウンの野郎ども」やっと読了。 分析の章が難解で、理解するのに時間を要しました... 資本主義者では「肉体労働」より「精神労働」の方が給料が高く設定されてい…

marotaku
2年前
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ハマータウンの野郎ども / ポール・ウィリス を読んで-その1

1977年に出版された「ハマータウンの野郎ども」を読み進めています。この本はイギリスの中高教育の中でヤンキー達にインタビューをした研究が綴られております。 学校とい…

marotaku
2年前
1

夜と霧 / ヴィクトール・E・フランクル

希望を完全に断ち切られた生存率5%ユダヤ人強制収容所で絶望した人々がどのように命を繋いでいたかが書かれている。毎朝起きるたびに絶望に突き落とされる日々。名前すら奪…

marotaku
3年前

“「利他」とは何か”を読んで菅政権の「責任」を考える

私が「安倍一強体制」を引き継ぐ菅政権を嫌うポイントは「責任」の無さ。しかし、各問題対処への評価はイデオロギーによって異なるため「責任」を平等に計る事は難しい。 …

marotaku
3年前
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マチズモを削り取れ / 武田砂鉄

「マチズモ」とは男らしさを重んじる思想。本書では、「駅でぶつかってくる男」「痴漢」「女子マネージャー」「体育会」「寿司屋」などを題材に「マチズモ」が語られている…

marotaku
3年前

生まれた時からアルデンテ / 平野紗季子

著者の食に並々ならぬこだわりを持ったエッセイ。グルメエッセイではない。バンドは解散しても音源が残る。画家は死んでも絵が残る。レストランは閉店すると味は失われる。…

marotaku
3年前
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男らしさの終焉 / グレイソン・ペリー

昭和のおっさんマインドの正体を暴く良書です。世の中は「白人、中年、男性=デフォルトマン」とした価値基準で出来上がっており、ペニスを持って生まれてくることで宝くじ…

marotaku
3年前

偉い人ほどすぐ逃げる / 武田砂鉄

物事へのスタンスを曖昧にするくせに結論を急いだり、他人をカテゴライズしてわかった気になる人が目につく。ファシズムには明確なヒエラルキーが形成されているのに、ガバ…

marotaku
3年前
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エルサレム以前のアイヒマン

600万人以上のユダヤ人を死に追いやった人物が、15年間アルゼンチンに潜みどの様な思想を掲げていたかが克明に書かれている。今までファシズムにおける官僚制の悲劇として…

marotaku
3年前
キリング・オブ・ケネス・チェンバレン

キリング・オブ・ケネス・チェンバレン

人権認識が著しく低い日本では決して生まれない作品。人権を侵害するものにはそれが公権力だろうと毅然と立ち向かう。貧困、人種、病気など関係ない自身の権利を力強くロジカルに叫ぶ。これがアメリカという国の力強さ。しかし、プロテスタンティズムと白人至上主義が起こしたケミストリーにより権力は暴走し彼は殺される。そして誰も罪には問われていないという事実。アメリカという国自体がパラノイアであり、イラク戦争を強行し

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君たちはどう生きるか

君たちはどう生きるか

「君たちはどう生きるか」は絶賛されそうなので、批判的な観点で感想を書いておく。この作品は宮崎駿の少女愛、成熟した女性への恐怖、母性愛への渇望をニーチェの「永劫回帰」を使ってつなぎ合わせた作品だとおもう。ジブリ作品を通して分かるように彼の愛の対象は「少女」。コナン、カリオストロの城、ラピュタ、となりのトトロ、魔女の宅急便など初期の作品ではストレートに彼がおもう理想の「少女」を描いている。また彼にとっ

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日本会議の研究 / 菅野完を読んで

日本会議の研究 / 菅野完を読んで

「日本会議の研究」読了。日本会議が行なっている活動の根源を辿って行った先にいるのは櫻井よしこやケントギルバートではなく70年安保の学生運動を続けるかつての右翼学生達。自民党が信頼するのは50年以上も地道な活動を続ける組織力とオペレーション能力。その根幹にあるには「生長の家原理主義」。組織だった宗教団体のオペレーション能力は政治家にとって魅力的で公明党と連立を組んだのも必然と思われる。日本会議の原動

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竹中労【人と思考の軌跡】/ 鈴木邦男 を読んで

竹中労【人と思考の軌跡】/ 鈴木邦男 を読んで

1月末に一水会創始者である鈴木邦男が亡くなった。右翼である鈴木邦男が竹中労との思い出を語った一冊。右翼というと児玉誉士夫と獄友であった岸信介が国際勝共連を作り財界とのコネクションを強めた自民党清和会周辺を想像してしまう。しかし、天皇を中心に置いた世界を理想とし欧米と対峙して行くことを目指した三島由紀夫的な精神を掲げた右翼達の思想は反体制の活動であった。「天皇の事は保留して共闘しないか」と呼びかけた

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家族と国家は共謀する / 信田さよ子 を読んで

家族と国家は共謀する / 信田さよ子 を読んで

「家族と国家は共謀する」家族の中では暴力はプライバシーという壁に覆われて表面化されづらい。非対称性のあるコミュニケーションは精神的、肉体的な暴力へと繋がる。自己肯定感やレジリエンスという言葉は昨今メディアで垢がついてしまったが、本来はトラウマを抱えるような体験の中で、当事者がどのように抵抗をしてサバイブしてきのかを表す言葉だと初めて知った。第二次世界大戦後のトラウマが生んだアルコール依存症やDVと

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ジェンダー秩序 / 江原由美子を読んで

ジェンダー秩序 / 江原由美子を読んで

「ジェンダー秩序」読了。社会に漂うジェンダーの正体を論理的に説明する良書。著者が読み手に誤った解釈を与えなよう配慮して書かれているため読解には根気が必用。構造による被害者が構造を強化する構図が色々な視点から描かれている。昨今は社会全体が萎縮しているため被差別者が自身が置かれている状況に気付きずらい状態が続いているとおもう。マルコムXもマーチンルーサーキングも最初に戦った相手は黒人。しかし被差別者自

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ハーバードの個性学入門 平均思考を捨てなさい / トッド・ローズ を読んで

ハーバードの個性学入門 平均思考を捨てなさい / トッド・ローズ を読んで

「個性学入門」#moonlightgear のYoutubeで紹介されており手に取った一冊。平均値が描く太いパスよりも、平均思考の中ではノイズとして見えなくなる個性が描くパスがイノベーションにつながるという点を合点がいくし、コストコ等が取り組んでいる企業が個人にフィットしていく組織運営には多いに興味を持った。しかし、著者が提示する大学の授業を資格付与制にし、個性を強化に特化する提案には賛成できない

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ハマータウンの野郎ども / ポール・ウィリス を読んで-その2

ハマータウンの野郎ども / ポール・ウィリス を読んで-その2

「ハマータウンの野郎ども」やっと読了。
分析の章が難解で、理解するのに時間を要しました...

資本主義者では「肉体労働」より「精神労働」の方が給料が高く設定されている。
学校では「精神労働」に従事する事を是とする教育がなされる。時計による時間管理という概念は資本主義社会を運用するためのツールであり「時間割」に即して進められる「授業」は資本主義システムへの適性を測るスケールとなっている。ヤンキー達

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ハマータウンの野郎ども / ポール・ウィリス を読んで-その1

ハマータウンの野郎ども / ポール・ウィリス を読んで-その1

1977年に出版された「ハマータウンの野郎ども」を読み進めています。この本はイギリスの中高教育の中でヤンキー達にインタビューをした研究が綴られております。

学校という自由が制限された特殊な空間において、ヤンキー達がそれに疑問を投げかける「異化」は真面目な生徒達が盲目的に順応しようとする「同化」に対して本来健全に見える行為として始まる。しかし、学年が進むにつれヤンキーと教師の関係は「労働階級vs中

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夜と霧 / ヴィクトール・E・フランクル

夜と霧 / ヴィクトール・E・フランクル

希望を完全に断ち切られた生存率5%ユダヤ人強制収容所で絶望した人々がどのように命を繋いでいたかが書かれている。毎朝起きるたびに絶望に突き落とされる日々。名前すら奪われた人々の日々の記録。希望は人の生きる糧になる。クリスマスに解放されないことに絶望して死者が増えるなど、これからコロナ禍で訪れる未来にも通づる人の心の動きがある。ユダヤ人強制収容を知る入門書としてもおすすめ。

“「利他」とは何か”を読んで菅政権の「責任」を考える

“「利他」とは何か”を読んで菅政権の「責任」を考える

私が「安倍一強体制」を引き継ぐ菅政権を嫌うポイントは「責任」の無さ。しかし、各問題対処への評価はイデオロギーによって異なるため「責任」を平等に計る事は難しい。

此処での「責任」とは「帰責」であり英語単語だと「Imputation 」。つまり転嫁されたも。困難を乗り越える「意志」を伴うもの。多くの市民は「帰責」に取り組む政権の姿に自分を重ねる。二階幹事長も「色々言うもんじゃない」と曰う。野党の追求

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マチズモを削り取れ / 武田砂鉄

マチズモを削り取れ / 武田砂鉄

「マチズモ」とは男らしさを重んじる思想。本書では、「駅でぶつかってくる男」「痴漢」「女子マネージャー」「体育会」「寿司屋」などを題材に「マチズモ」が語られている。
グレイソン・ペリーが定義したように、この世は「デフォルトマン」が生きやすいように構成されている。要は「中年のおっさん」が生きやすい世界が手堅くキープされているのだ。「デフォルトマン」から離れた存在である「若い女性」は理不尽にもハンデを負

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生まれた時からアルデンテ / 平野紗季子

生まれた時からアルデンテ / 平野紗季子

著者の食に並々ならぬこだわりを持ったエッセイ。グルメエッセイではない。バンドは解散しても音源が残る。画家は死んでも絵が残る。レストランは閉店すると味は失われる。と著者は言う。だから彼女は感動を求めて食事をする。著者の物事への切り口は鮮やかで魅力的。

無名のアマチュアミュージシャンの音源は残らない、楽器を弾かなくなった、歌う事をやめた友人の音楽はもう体感できない。「楽器を弾かずに、歌わずに生きるの

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男らしさの終焉 / グレイソン・ペリー

男らしさの終焉 / グレイソン・ペリー

昭和のおっさんマインドの正体を暴く良書です。世の中は「白人、中年、男性=デフォルトマン」とした価値基準で出来上がっており、ペニスを持って生まれてくることで宝くじを買う権利と得ることができる。車、バイク、自転車、筋肉、ゴルフクラブなどをひけらかす行為は男性性を同性にアピールすることだと位置付けています。
今日鎌倉の若松大路のオープンカフェでポルシェを路駐してコーヒーを飲んでいるおしゃれ中年男性がいま

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偉い人ほどすぐ逃げる / 武田砂鉄

偉い人ほどすぐ逃げる / 武田砂鉄

物事へのスタンスを曖昧にするくせに結論を急いだり、他人をカテゴライズしてわかった気になる人が目につく。ファシズムには明確なヒエラルキーが形成されているのに、ガバナンスは存在しない不思議がある。
著者は物事へのスタンスを明確にするが結論を急がない。「人間はカテゴライズできるほど単純じゃない」と言う観点に立って他人の考えを読み解くことに心を砕く。私は弱者を冷笑する政治家や識者と言われる人達を観て「冷笑

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エルサレム以前のアイヒマン

エルサレム以前のアイヒマン

600万人以上のユダヤ人を死に追いやった人物が、15年間アルゼンチンに潜みどの様な思想を掲げていたかが克明に書かれている。今までファシズムにおける官僚制の悲劇として扱われてきた「ユダヤ人絶滅計画」が生粋の差別主義者の確固たる信念によって遂行されて取り組みだった事がよく分かった。南米でヒトラーの誕生日を祝い、仲間たちと歴史修正を試みる討議の場を設け、偏った思想をまとめて出版する。アイヒマンがイスラエ

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