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ハマータウンの野郎ども / ポール・ウィリス を読んで-その1

1977年に出版された「ハマータウンの野郎ども」を読み進めています。この本はイギリスの中高教育の中でヤンキー達にインタビューをした研究が綴られております。

学校という自由が制限された特殊な空間において、ヤンキー達がそれに疑問を投げかける「異化」は真面目な生徒達が盲目的に順応しようとする「同化」に対して本来健全に見える行為として始まる。しかし、学年が進むにつれヤンキーと教師の関係は「労働階級vs中産階級」の様相に変質する。ヤンキー達は在学中、既に労働者階級の一員として「やって行ける」自信に満ち溢れている。自分で決めた行動で学校の抑圧から自由を勝ち取っていると感じている為だ。抑圧対象である中産階級=教師との溝は日毎に深まる。そしてヤンキー達は卒業後、肉体労働に就労する。そこには学校でのヤンキー文化と地続きの習慣があり、スムーズに馴染む事はできるのだが資本主義がもたらす階級差別は学校で教師を相手にしていた時とは比べ物にならないほど大きく、手が届かない物だと実感する。そして、その階級差を埋める唯一方法が「教育」だと知る。その時、彼らは「手遅れだ」と感じ諦めてしまう。

この光景の実感は多くの人にあると思う。このループから抜け出す事は要因では無い。現代社会は「労働階級vs中産階級」に「ハビトゥス」が加わりより複雑極まりない状況となっている。

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