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偉い人ほどすぐ逃げる / 武田砂鉄

物事へのスタンスを曖昧にするくせに結論を急いだり、他人をカテゴライズしてわかった気になる人が目につく。ファシズムには明確なヒエラルキーが形成されているのに、ガバナンスは存在しない不思議がある。
著者は物事へのスタンスを明確にするが結論を急がない。「人間はカテゴライズできるほど単純じゃない」と言う観点に立って他人の考えを読み解くことに心を砕く。私は弱者を冷笑する政治家や識者と言われる人達を観て「冷笑は悪」と考えていたが、著者は、軽蔑すべき対象には正しく冷笑を使う事の大切さを書いており考えを改めた。この状況下でオリンピックを推し進めようとしている相手に向ける適切な態度は「怒り」と「冷笑」だ。
自分の価値観の限界に対峙した時「分からない奴が悪い」とか「どっちもどっち」と言った乱暴な着地は社会のためにならない。倫理や価値観を成長と共にアップデートして行く柔軟な考えを持ち続けなければならない。それを諦めたら逃げて行く偉い人の思う壺だ。

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