note_共育_

辛さや苦しみと、やりがいや生きがいの狭間の中で。


「もういきたくない。出勤したくない。」


そんな憂鬱な思いを抱きながら、毎週木曜日を迎えていた。


時計の勉強のために 興味を持ってもらえるようにと Ipadで時計アプリを渡すと、指示が全く入らなくなり夢中になってもう切り替えできない。本人がすきなトランスフォーマーの題材を用いたひらがなの学習を試みるも、回避回避回避の連続で 机に座ることもままならない。水を飲むために教室を出てから、10分以上 戻ってこれないこともあった。


こどもに楽しい授業を提供するどころか 勉強することをどんどん嫌にさせてしまっている。お母さんの期待にも応えることができていない。どうすればいいか、たくさん考えれば考えるほど  悩み、時間をかけても 全くうまくいかない。


お手上げ状態。もうどうすればいいか、わからない。


「もういきたくない。出勤したくない。」


note 共育②


今回の主役は、小学校1年生の男の子。

普通級と支援級 両方に通っている。かわいらしく 甘えん坊な半面、わがままさんで 自分の要求が叶わなかったときに、癇癪を起こして10分以上泣きわめいたり お母さんに暴言・叩いたり、という行動が出てしまっていた。カーズとタランチュラなどの危険生物、トランスフォーマーがすき。


お母さんは 忙しい中でも、こどもの学習ペースに合わせて 宿題の手伝いなどもして下さっているが、こどもの癇癪行動に頭を悩ませていた。お母さん自身の買い物に連れていくと、こどもが「ここにいきたい、ここにいきたくない!」と一回言い出すと聞かず、泣きわめき、自分のしたい時間を過ごすことができない。


このご家庭がうちのサービスを利用してくれて、もう1年以上になるが  当初から格段に人とちゃんとコミュニケーションが取れるようになり、読み書きも少しずつできるようになった。

次のステップとして、①こどもが第一印象で「この問題、むずかしそう」と判断したら すべてをシャットアウトして、回避してしまう。②一度気持ちが崩れてしまったら、自分をコントロールできない。自分のわがままを通したい。③お母さんが こどもに対して、どう関わったらいいか 方向性が見えなくなってしまった


という課題にぶつかった。さあ、どうしようか...。


note 共育③


①課題のハードルを下げて「できた」の体験を多くつくる設計


ただでさえ 苦手な勉強に向き合わなきゃいけない上に、分からない問題がつきつけられて。そりゃ 続くわけがない。

このお子さんは、時計の~時ちょうどは読めるけど、「~時30分・~時15分・~時45分を読めない」という課題に直面していた。こちらは あの手この手で興味を持ってもらえるような工夫をし、「じゅう・ごふん、だよ!」と一生懸命伝えようとするも うまくいかない。そもそも 「時計の問題は難しい、僕にはできない」というイメージがついてしまっていた。


そこで、ハードルを下げる+プロンプトを多く入れる=「できた」の体験をつくり  課題に興味を持てるようにする、という工夫を施すことにした。


いきなり、本人にとって 難易度の高い「~時30分」の問題を提示するのではなく、「~時ちょうど  3時、10時」などの問題を出題する。これは本人も難なく読めるので、正解したときに これでもか!という程褒める。

さぁ、次に鬼門の「~時30分」の問題だ。ここも 普通に問題を提示するのではなく、(6時30分や 12時30分をみせて)「ここに長い針があったら、~時30分って言うんだよ」と見本をみせる。その直後に 「これ何時?」と問題をみせて、6時30分と答えてもらう。それでも 答えを言うことができなかったら、「よしよし、これはね 6時、さん...? じゅ....??」と ほぼ答えのヒントを出す。そこで子どもから 「さん.....じゅ......っぷん?」と言えたら。


「やったーーーーー!6時30分言えたね、すごいじゃんーーーーー!!」


と、「できた」を見逃さず、超超超褒める。

不思議とこれまでの時計の授業中には 見えなかった、子どもの笑顔と ちょっぴりの「できるかも...?」という自信が そこにあった気がした。



②わがまま VS セルフコントロール


これまで、自分のわがままを通すために 回避や癇癪行動を繰り返してしまっていた。勉強したくない、ゲームしたい、買い物行きたくない、この乗り物に絶対乗りたい。


あまりにも執拗な癇癪にお母さんは耐えかねて、結局 自分のしたいことを諦めて こどもの要求を叶えたり、回避が激しいので 先生が諦めてゲームの授業をしたり。「わがままをすると、自分の要求が叶う / 勉強をしなくて済む」という学習が着実に強化されてしまっていた。


そこで、新たに2つの試みを施した。


一つ目は、授業の見通しを最初にしっかり示すこと。授業の初めに、「最初はゲーム、次に算数、ちょっとだけ国語、最後にゲーム。これでいい?」と丁寧に確認し、本人からの「いいよ」を貰う。見通しを示し、本人からの合意を貰うことで、自分で約束したことをちゃんと守る という習慣づけを目指した。


二つ目は、休憩にルールをつけること。これまでは その時の気分次第で、すぐに 「水のみたい(教室を出たい)」と表出していた。これを改善すべく、「5問 問題解いたら、水飲んでいいよ!水飲みたい?って聞くね」と初めから、休憩することを止めることなく 休憩をとっていい許可を出す。その代わり、途中で崩れそうになっても、「あと2問解いたら、水のんでいいよ!それまで頑張って!」と 課題を遂行することと 約束を守ること、の二点ができるように意図した。



③「課題は環境側にある」可能性を信じて、対話を重ねること


ずっと、自分の授業がよくない。自分がどうにかしたら、子どもに お母さんに価値提供できる。でもうまくいかない、なんとかしなきゃ。そんな思考を繰り返していた。


何もできないご家庭への申し訳なさと、自分への自信喪失が募っていく中。あるとき、お母さんに 「最近の学校でのお子さんのご様子いかがですか?」とふと質問してみた。


長くなってしまうので割愛するが、「そういえば...」とふとお話して頂いたのは、どうやら 子どもが学校での友達関係があまりうまくいっていなかったようだ。友達との関わり方がうまくいかなくてストレスで、その上に 勉強もうまくいかなくて 前向きになれない。そんな日々を過ごしていたようだ。


その話を頂いてから、お母さんにも 学校側に働きかけるように促してみると、先生サイドがお友達に配慮してもらい また勉強面でも、その子にあったサポートをより親身に考えてもらえるようになった。

おかげで、最近は こどもが勉強を頑張っているのを褒めてくださるようになり、休み時間には 友達と校庭を走り回っているそう。授業参観では、頑張って 手を挙げて発言もしていたのだそう。


自分と相手の相互関係だけに目を向けるのではなく、本当に環境面に課題はないのか 疑い、探り続けること。そして 対話を絶対にやめないこと。あきらめないこと。




このご家庭にどんなものを届けられるのか、悩み試行錯誤し続けた。


今では、時計は「~時45分」まで読めるようになり、水を飲みにいく休憩が必要ないくらい 勉強に集中できるようになった。お母さんも、うちでの関わり方 利用の仕方に納得頂いたようで、安心して任せて頂いているみたいだ。


あれだけ辛かった期間が嘘かのように、今は その子との授業を 余裕をもって楽しむことができている。でも不安定とは隣り合わせ、いつ 不調な状態が訪れても、点で見ることなく 今度は最初から 面で捉えて環境を疑うこと。


そんなことを考えながら、先週も授業準備をしていた。


少し早めにきた この子どもが、ふらっと歩み寄ってきて 話しかけに来てくれた。



「ねーねー、きょうはじゅぎょうなにするのー?たのしみー!」

「おー、そうか。今準備してるから もうちょっと待っててねー!」

「ねー、僕が ここに来なかったら、せんせいみたいなおもしろいせんせいにであってなかったなー!わーーー(と抱きつく)」

「おー、そうか ありがとう(素っ気なく)」



不意に言葉をかけられて、一瞬で これまで試行錯誤してきた時間 想いがフラッシュバックしてきて 溢れそうになった。零れ落ちそうな何かを堪えながら、そそくさと準備して 教室に向かった。



今日も明日もこれからも、子どもの「できた」の成長実感と、お母さん お父さんが余裕と自信をもって 子どもを褒めて愛することができる安心感を。届けられるように、授業をし続けていく。



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