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マカ・ママレードの2024年に見た映画

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マカ・ママレードが、2024年に見た映画の感想文です。
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#映画レビュー

フラっと映画館に寄って鑑賞するのにちょうどいいロマコメ〜『恋するプリテンダー』感想(ネタバレあり)〜

フラっと映画館に寄って鑑賞するのにちょうどいいロマコメ〜『恋するプリテンダー』感想(ネタバレあり)〜

(以下、映画『恋するプリテンダー』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

学校や仕事帰りにフラっと映画館に寄って鑑賞するのにちょうどいいロマコメ映画という印象です。

まず、オープニングの2人の出会いのシーンで、ベタだけど思わず笑ってしまうユーモア、2人の関係性についてつく嘘(カフェの店員に自分達が夫婦だと偽る)、などを手際よく描いて映画全体のトーンやストーリ

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たっぷりした間の編集〜『悪は存在しない』感想(ネタバレあり)〜

たっぷりした間の編集〜『悪は存在しない』感想(ネタバレあり)〜

(以下、映画『悪は存在しない』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

石橋英子のライブ用サイレント映像と共に生まれたというユニークな成り立ちが、この映画の自由でありながら確固とした世界観を持つ様にしっかりと反映されていたように感じました。

映画が始まってからしばらく、ものすごくゆったりとしたテンポ感に少し戸惑いましたが、この、まるで水挽町(みずびきちょう)で

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「もしもあの時違う選択をしていたら?」〜『パスト ライブス/再会』感想(ネタバレあり)〜

「もしもあの時違う選択をしていたら?」〜『パスト ライブス/再会』感想(ネタバレあり)〜

(以下、映画『パスト ライブス/再会』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

美しい映像に包まれて心地よい感覚になる、優しくてほろ苦いラブストーリーでした。
特に大事件が起きるわけでもないのに、淡々と心の機微を繊細に描き出す表現に、映画の最後まで惹きつけられました。
監督の実体験をベースにした物語だそうですが、多くの人の胸に届く普遍的な物語になったのは、「もし

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俳優の演技に惹きつけられるフィルムノワール〜『辰巳』感想(ネタバレあり)〜

俳優の演技に惹きつけられるフィルムノワール〜『辰巳』感想(ネタバレあり)〜

(以下、映画『辰巳』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

映画『レオン』を思わせる物語と俳優のむき出しの演技に惹きつけられる、フィルムノワールの傑作でした。

涎を垂らしたり、唾を吐きかけたり、汚い罵り言葉を口にするなど、キャラクターたちが本能のおもむくままに行動する様が描かれますが、そこにはわざとらしい下品さではなく、「この人たちはずっとこういう生活を送っ

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単純な悪人はいない〜『ダム・マネー ウォール街を狙え!』感想(ネタバレあり)〜

単純な悪人はいない〜『ダム・マネー ウォール街を狙え!』感想(ネタバレあり)〜

(以下、映画『ダム・マネー ウォール街を狙え!』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

単純に善と悪に二分された勧善懲悪の側面だけではなく、様々な人間の面が描かれているのが今作の魅力の一つだと思いました。
例えば、ケイブ・プロトキンやブラッド・テネフといったこの映画で「悪役」にあたる人たちは、冷酷な悪人という描かれ方はしていません。むしろ人間味があり共感できる

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一筋縄ではいかない風刺劇〜『アメリカン・フィクション』感想(ネタバレあり)〜

(以下、映画『アメリカン・フィクション』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

一筋縄ではいかない様々なレイヤーが重なった複雑な味わいのある風刺劇で、とても楽しめました。

何気ないセリフやカットの一つ一つに複数の意味やユーモアがこめられており、特に文学賞の会議において、「今こそ黒人の声に耳を傾けなきゃ」と言いながら、その場にいる黒人の意見を無視した決定を下す

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素晴らしい脚色~映画『夜明けのすべて』感想(ネタバレあり)~

素晴らしい脚色~映画『夜明けのすべて』感想(ネタバレあり)~

(以下、映画『夜明けのすべて』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

瀬尾まいこさんの原作を読んだ上で、映画を見に行ったのですが、脚色が本当に見事だったと思いました。

まず大きな変更点として、主人公たちが務める会社が原作の「栗田金属」から、プラネタリウムを扱う「栗田科学」に変わっています。このことにより、本作のテーマになっている「夜」について、プラネタリウム

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まずは目の前の人の声を聞く~映画『ミツバチと私』感想(ネタバレなし)~

まずは目の前の人の声を聞く~映画『ミツバチと私』感想(ネタバレなし)~

(以下、映画『ミツバチと私』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレはありません。ただし、映画に関する情報を出来るだけ入れないで鑑賞したいという方はご注意ください。)

ベルリン国際映画祭で9歳にして最優秀主演俳優賞を受賞したソフィア・オテロの演技に心が奪われるとともに、美しい自然の風景とそこで繰り広げられる主人公と家族の葛藤と変化の物語に惹きつけられました。

主人公であるココの成長だけでは

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