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マカ・ママレードの2024年に見た映画

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マカ・ママレードが、2024年に見た映画の感想文です。
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記事一覧

単純な悪人はいない〜『ダム・マネー ウォール街を狙え!』感想(ネタバレあり)〜

単純な悪人はいない〜『ダム・マネー ウォール街を狙え!』感想(ネタバレあり)〜

(以下、映画『ダム・マネー ウォール街を狙え!』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

単純に善と悪に二分された勧善懲悪の側面だけではなく、様々な人間の面が描かれているのが今作の魅力の一つだと思いました。
例えば、ケイブ・プロトキンやブラッド・テネフといったこの映画で「悪役」にあたる人たちは、冷酷な悪人という描かれ方はしていません。むしろ人間味があり共感できる

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一筋縄ではいかない風刺劇〜『アメリカン・フィクション』感想(ネタバレあり)〜

(以下、映画『アメリカン・フィクション』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

一筋縄ではいかない様々なレイヤーが重なった複雑な味わいのある風刺劇で、とても楽しめました。

何気ないセリフやカットの一つ一つに複数の意味やユーモアがこめられており、特に文学賞の会議において、「今こそ黒人の声に耳を傾けなきゃ」と言いながら、その場にいる黒人の意見を無視した決定を下す

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素晴らしい脚色~映画『夜明けのすべて』感想(ネタバレあり)~

素晴らしい脚色~映画『夜明けのすべて』感想(ネタバレあり)~

(以下、映画『夜明けのすべて』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

瀬尾まいこさんの原作を読んだ上で、映画を見に行ったのですが、脚色が本当に見事だったと思いました。

まず大きな変更点として、主人公たちが務める会社が原作の「栗田金属」から、プラネタリウムを扱う「栗田科学」に変わっています。このことにより、本作のテーマになっている「夜」について、プラネタリウム

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きれいなシンメトリー親子〜『僕らの世界が交わるまで』感想(ネタバレあり)〜

きれいなシンメトリー親子〜『僕らの世界が交わるまで』感想(ネタバレあり)〜

(以下、映画『僕らの世界が交わるまで』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

価値観が合わずすれ違ってばかりいるが、実は似た者同士の母子を、きれいなシンメトリーの構造で描いていたのが印象的でした。
例えば冒頭から、配信中の息子の部屋のドアを開ける母、母がシャワーを浴びている浴室のドアを開ける息子、と対(つい)になる構図で主人公二人を描いています。その後も、家族

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理想的な実写化では?~映画『カラオケ行こ!』感想(ネタバレなし)~

理想的な実写化では?~映画『カラオケ行こ!』感想(ネタバレなし)~

(以下、映画『カラオケ行こ!』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレはありません。ただし、映画に関する情報を出来るだけ入れないで鑑賞したいという方はご注意ください。)

最初に実写映画化のニュースを聞いた時は、「和山やまさんの原作の空気感をどうやって映像に落とし込むのだろう?」と思っていましたが、鑑賞後は「なるほど、こう来たか!良い!」と大満足です。

原作漫画の単なるモノマネに終始せず、映

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まずは目の前の人の声を聞く~映画『ミツバチと私』感想(ネタバレなし)~

まずは目の前の人の声を聞く~映画『ミツバチと私』感想(ネタバレなし)~

(以下、映画『ミツバチと私』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレはありません。ただし、映画に関する情報を出来るだけ入れないで鑑賞したいという方はご注意ください。)

ベルリン国際映画祭で9歳にして最優秀主演俳優賞を受賞したソフィア・オテロの演技に心が奪われるとともに、美しい自然の風景とそこで繰り広げられる主人公と家族の葛藤と変化の物語に惹きつけられました。

主人公であるココの成長だけでは

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