もりゆき
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不確定性と多様性のポートフォリオ
三年前、MTGプロプレイヤーとして世界選手権に出場、世界トップ16人の戦いに出て敗れ、次こそはといつか優勝することを胸に燃え…たりは別にせず、まあそんなもんかと頂が見えたからいいやと登り切らずに結構満足して山を下りてきた。
とはいえ、やり残したことがないかというとそうではない。いやあるいは仮に優勝しても疑問に思い続けていたであろうことがある。それは見積もり不可能な量の扱いについてである。
一生
競技的デッキビルダー論、強くなるというよりは弱いまま勝つ方法
「自分は対戦よりもデッキを作ることが好きなんだ」
そういうと、競技勢とかガチ勢みたいなものより、カジュアルに好きなデッキを作ることが好きなんだと勘違いされることがある。
違う。私の中でデッキは勝つために作るもので、最高に楽しい。達成感もある上に簡単だ。Tier1のコピーで勝つのは難しくて面白くない。
この記事の目的は勝つためにデッキを作る、考え方やその方法論を伝えることだ。
断っておくと、私
TCGの上達、あるいは永遠に上級者に追いつけない中級者について
中級者が上級者になれない理由私たちはすさまじい偉業を成し遂げたことがある。言語の習得である。生まれてからわずか数年で母国語(おそらくは日本語)を独学で短期間で習得した。数年で言葉を学びネイティブレベルの能力を獲得するのが困難なことは、英語学習で苦心して嫌と言うほどわかっているのは私だけではないはずである。さて、我々は二歳から五歳にかけての言語の習得において極めて優れたパフェーマンスを発揮したが、そ
もっとみるたまくつ独創力調整録
イクサラン:失われし洞窟(以降ILC)で、発見コンボ、アマリア(探検)コンボという新たなコンボデッキが追加され、発見コンボから禁止が出るもアマリアコンボが猛威を振るうパイオニア/エクスプローラー。
多様だったメタゲームはいずこへ、そこに残るはアマリアコンボとそれをメタったデッキ、アマリアに勝てないものは駆逐された新次元…
なんなんだ…
これはもう…
最高じゃないか!!!
いや素晴らしい、
勝てるTCG調整チームをつくる
はじめて私が調整チームのようなものに入ったのは4年前の2019年だ。その後、2021年プロになる。彼らとわいわいと楽しくプレイしてこられたことが大きなものであったことは間違いない。年に数回のイベントの招待権を得て、自分が作る側になりまた一年。目的が先んじてありそれに向けて人を集めて協力する難しさや面白さがわかった。今年、MTGの競技シーンの変化から自分は一線でプレイしないながらもなんだかんだでチー
もっとみる大好きな配信者の話をする!
孤独と鬱憤とインターネット小学生の頃、チャーリーとチョコレート工場を観てひどく嫌な気持ちになった。最後、家族と引き換えにチョコレート工場をあげようと言われたチャーリーはそれを断って「家族最高」みたいなことを言って終わった…と思う。
私は家族仲が悪かった。両親が別居し、離婚し、父親と絶縁状態となることで問題が解決というよりは消滅するまでずっと悪かった。
虐待されていたとか、食べるものがなかったと
未定義終末環境分析録
MTG Arenaにタイムレスという新フォーマットが実装された。これはこれまでの実装カードがすべて使えるものであり、MTG最古のセットからのすべてが使えるヴィンテージでしか使えない、あるいはレガシーですら禁止の一部カードも使うことができる。このフォーマットに思うところがなくはない(前書き参照)が、少々遊んでみたので記事にする。
導入:初期環境で初めに試すべきこと私はデッキ構築を「世界のどこかにあ
タイムレスプレイ録(前)
前書き散々見たはずのウーロのエフェクトが懐かしい。
そういえばいつからだ、レアや神話レアにエフェクトがつかなくなったのは。どうしちまったんだ、MTG ARENAの公式サイトトップでもカードを出したときのエフェクトを明らかにアピールしてるのに、今となってはである。プロ制度解体とともに競技シーンは紙に戻り、アリーナ関係のWotCの予算は減ったように感じる。いや、違うか?オンライン専用フォーマットのア
エッセイ:価値と常識、あるいはマジックプロやミシック一位、ホテルのロビーでカードをプレイすることについて
私は小さい頃変な奴だった。いまでも結構変な奴だと思うが、もっと変な奴だった。「普通」とか「常識」がわからなかった。付け加えるならすごく変な奴なうえに嫌な奴だった。小学生の頃から「常識的に」とか「普通に考えて」、「お前が悪い」としょっちゅう否定されていた。
常識とか普通ってなんだ?わからない。いや、今は昔ほどわからなくはない。今の私の友達には「常識のない人は嫌い」という人もいるし、その人の中の「常
ドラフトのデータをどう信用する?
導入:データは使えるかじゃない17Landsのページでは、17Landsのトラッキングツールを導入したプレイヤーから集計したデータが公開されている。中でも、そのカードを引いたゲームの勝率であるGIH WRや、そのカードを引いたゲームでの引かなかったゲームに比べた勝率の変化であるIWDは議論の指標になる。
とはいえ、あくまで指標であり、その値により強さの全てを評価できるわけではない。完成したデッキ
デッキ構築は『諦め』
▷デッキ構築はリソース配分60枚のカードを決める。その中から最初に7枚引いて、毎ターン1枚を追加で引く。
カードを引く「機会」があり、デッキ構築はその与えられる機会の確率を分配することである。デッキ構築は一種のリソース配分である。機会というリソースをカードという形で割り振る。
カードを選ぶこととは、それ以外のカードを選ばないことである。何かを選ぶことは、何かを諦めることである。
▷強い奴が強
【一般TCG理論】サバンナのカードゲーマー、数万年前から脳は変わっていない
人はネガティブ?ポジティブ?以前、行動経済学の研究を根拠に、人間はポジティブなことよりネガティブなことを強く感じると書いた。
一方で私が気を付けているものに確証バイアスというものがある。確証バイアスは自分の考えを補強する根拠ばかりを集める人間の傾向である。これがあると間違った仮説をそのまま深く信じて、まだ気づいていないことや対立意見を軽視したゆがんだ判断につながる。
どちらも自分がした経験、人
競技MTGは衰退したのか
先日Xを見ていたら、シャドウバースにもプロツアーというイベントがあることを知りまして、ちょっと見に行ってみたら、これは…
プロツアーが、プロのツアーだ!どうやらこのプロツアーはプロプレイヤーのイベントで、名前の通りプロツアーらしいです。
プロ制度を廃止してプロツアーを「再開」というのが全然しっくりこなかったのですが、プロツアーというイベントがあって、
公式もマジックプロという言葉を使い続けて
【一般TCG理論】論理で直感を補強する
本記事の目的は世界とそれを認識する我々への理解を深め、世界をよりあるがままに捉えよい判断をするための認識を作ることである。
結論から言えば、真に優れた判断は論理と直感のハイブリッドであり、論理的考察の目的は直感の補強である。
論理だけではなく直感が必要な理由、論理的であることや言語化能力が高いことが実力と相関する理由を考察する。
論理の限界ゲームのルールや使うことができるカードのテキストは論