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【一般TCG理論】サバンナのカードゲーマー、数万年前から脳は変わっていない

人はネガティブ?ポジティブ?

以前、行動経済学の研究を根拠に、人間はポジティブなことよりネガティブなことを強く感じると書いた。

一方で私が気を付けているものに確証バイアスというものがある。確証バイアスは自分の考えを補強する根拠ばかりを集める人間の傾向である。これがあると間違った仮説をそのまま深く信じて、まだ気づいていないことや対立意見を軽視したゆがんだ判断につながる。

どちらも自分がした経験、人がやっているのを見た経験がある。しかし改めて合わせて考えると変な話ではないか?人間はネガティブなもののほうが印象に残るなら、勝手に自信を失っていくはずなのに、逆にバイアスがかかるのはなぜ?ネガティブに敏感になる場合とポジティブに敏感な場合にはどのような違いがあるのか?

こんな疑問を持った時、少し前に読んだ本を思い出した。

デブとスマホ依存症とクソデッキ

2022年に飢餓に直面する人は7億人であるのに対して、肥満の人は10億人である。食料の確保という先祖の時代最大の問題が(世界的に平均を取ってみれば)解決され、逆に食べ過ぎが大きな問題になっているのが現在である。

なぜ不健康になるまで食べ続けるのかといえば、私たちはサバンナ時代の本能を未だに持っているからである。人類の祖先がジャングルを出て生活を始めたのが40万年前であるのに対して、農耕を始めたのはたったの数万年前である。(もっと言えば、ハーバーボッシュ法の発明で食料問題が抜本的解決に向かったのがたったの100年前である。)現代の生活の歴史はそれに進化で我々が適応するのには短すぎる。サバンナ時代に食料は貴重だったので、あればあるだけ食べて蓄えるように進化した。だからその前提が崩れた今、世界で飢餓よりも肥満に苦しむ人が増えている。

このように、サバンナ時代の頭に快楽を与えて搾取するように発達した結果起こされたものがスマホ依存症である。という話を数年前読んだベストセラー「スマホ脳」で読んだのを思い出した。

この原理に則れば、人間がポジティブよりネガティブを強く感じるのは納得のいく話である。食べ物が溢れる時代で我々の先祖は進化していないし、当然カードゲームによる自然淘汰も存在しない。今では人間は簡単に死なないが、サバンナでは飢餓のほかにも、蛇に噛まれる、病気になる、暴力などの原因により今より簡単に人が死んでいた。だからその分死なないようにネガティブなことは、現代のわれわれがすべきよりも深く心に刻む必要があった。

生と性

多分これを読んでいる人は私がそうであるように創造論ではなく進化論を信じているので、以上の説明に納得してくれたと思う。因果として現在私たちの判断のバイアスには進化過程がある。因果をたどって物事をより普遍的に統一的にみる物差しを獲得することが本質的にそれを理解することだと思う。だから、確証バイアスの因果をたどれば、「ポジティブすぎる判断」と「ネガティブすぎる判断」が起きやすい場面を判別し、よりよい判断ができるようになる。だとすれば、カードゲーマーの究極の到達点は進化過程から自己や相手の判断を解析することかもしれない。これが私が進化心理学というものに興味を持った経緯である。

疑問の答えは「われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか」という本で見つけることができた。答えは性淘汰における自己欺瞞の社会的利益である。同書で紹介されている実験の中では人が実際に博識な人と自信過剰な人を区別する能力に乏しいことが示されたという。

自信過剰により自己を他所に過大評価させることができるのであれば、性淘汰の観点から説明がつく。淘汰には生(自らが生き残ること)に加え、性(子をなして遺伝子を残すこと)が関与する。生殖というのは特に女性にとって非常に大きくリスクのある投資である。普通はじっくり考えて、もっといい男が現れかもしれないのを待つのが戦略として正しいことが多い。それを自信過剰で自分がその「もっといい男」だと勘違いさせる方に淘汰圧が働いた。これには同種間での権力争いでも言える。殴り合えば勝ってもダメージが残るが、相手が自分を強いと勘違いして戦わずに勝てればそれに越したことはない。

結論としては、人間は外的なものについてはネガティブを過大評価するのに対して、自己に関連するものについてはポジティブを過大評価する傾向があると言ってよいだろう。生き残るための淘汰により得た本能はネガティブを重視し、子孫を残すための本能はポジティブを重視する。これらの認知と使い分けにより、カードゲームのみならず、人生による様々な判断を有利に進められるだろう。

TCGでは、起きた事象の評価(例:〇〇されて負けた、相手が〇〇を持っているかもしれない)ということは重くとらえすぎないように、自分と違う説(例:ぱっと見あまり強そうじゃない話題のデッキ)は軽視しないようにするというのが正しいことが多いだろう。

謙虚になれ!人の意見を尊重しろ!という規範は合理性があったと言える。そうでない方に人間の認識は歪んでいるからである。

参考図書

[1] スマホ脳、アンデシュ・ハンセン、 久山 葉子

言わずと知れたベストセラー。実は読んだのが3年前ぐらいでいまいち覚えていない部分もあるが、現代の人間の感覚をハックした搾取から自由に生きるためにまだ読んでいない人にはぜひ読んでほしい。


[2] われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか、ウィリアム フォン・ヒッペル、 濱野 大道

今回最も参考にした本。ここで紹介した以外にも様々な人間の判断に関する疑問の答えが載っていた。自己を理解し現代にマッチした判断のために超おすすめ。

おもろいこと書くやんけ、ちょっと金投げたるわというあなたの気持ちが最大の報酬 今日という日に彩りをくれてありがとう