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勝てるTCG調整チームをつくる

はじめて私が調整チームのようなものに入ったのは4年前の2019年だ。その後、2021年プロになる。彼らとわいわいと楽しくプレイしてこられたことが大きなものであったことは間違いない。年に数回のイベントの招待権を得て、自分が作る側になりまた一年。目的が先んじてありそれに向けて人を集めて協力する難しさや面白さがわかった。今年、MTGの競技シーンの変化から自分は一線でプレイしないながらもなんだかんだでチーム調整に参加していたら、友人が世界2位になったりした。気づけば結構チームというものについて考えてきた。クリスマスということで、これからチームを作る人へクリスマスプレゼントとして知見を共有しようと思う。(極めて自然な導入)

チームを集める/入る

どんな人を集めたいか。逆説的に言えばどんなチームに入るべきかでもある。よいチームはどのように人を集めているかを考えれば、どうすればいいチームに入りやすいかわかるはず。

結論から言えば、論理的に話ができるいい奴。

目的ベースで考えてみる。そもそもチームを作る目的とは?
①強くて対戦したいデッキを使ってくれる練習相手の確保
②発見や理解の共有(チームデッキを作ることも場合によっては含む)
一つ目はわかりやすい。純粋に強いかで選べばいい。二つ目が有意義にできるようにする方が難しく、ある程度までいくとこちらを重視するようになる。にも拘わらず、一つ目ベースで考えられがち。

強い人ベースで考えると、実績がある人を…となるが、実績のあるなしはどうでもいい。チームに入りたくても動いていない人は「実績のない自分なんか…」と思っていることが多いが、見当違い。「強いやつが勝つ」なんて表では言うが、優勝に文句つけるのはお行儀が悪いからそう言ってるだけ。私は優勝したけど全然よくないリストやプレイだと思っていることもあるし、ほかの人もそういうものだろう。むしろ、本気でそう思っている人はTCGというものの解像度が低くて方向性も間違っているので、そんなチームには別に入らなくていい。建前じゃなくて事実が重要。

論理的に話ができていい奴であることに比べれば本当にどうでもいい。ピンとこない人へ、探すべき人の逆、いてほしくない人の特徴をあげてみる。

・人の意見を根拠がない/薄いのに否定する
・言いたいことを言うだけで人の話を聞かない

こういう人を入れてしまうと、そのせいで発言しなくなる人が出る場合もあり、チーム全体に不利益である。いないほうがいい。論理的でいい奴なら、いて悪くなることはない。そして大抵よくなる。論理的でいい人なら、仕事や家族等の事情で練習時間が取れないとか、始めたばかりで理解が薄いとかでも歓迎すべき。なぜよくなるかは次章に回す。

ではどうすれば、論理的でいい奴を見つけられるか。私の場合は記事を書いていたらそれが一番いい判断材料になっている。強い人と練習したかったら記事を書け!文章がちゃんと書けていれば論理的な可能性が高い。実際私は今まで合計5回以上は直接接点がない人から連絡をもらって一緒にやったことがある。なにか書いている人は安心して受け入れができた。建設的な話し合いができたし、ありがたいことにいい人たちでもあった。

ついでに悪い方ももう少し具体的に実例を挙げてみると、本人に話ができていない自覚がないことが多いのは「〇〇(プロや有名プレイヤー)が言っていたから」、「勝ってたリストで使われていたから」あたり。これを根拠にメンバーの意見を否定する人はいない方がいい(一つの見方として教えてくれる分にはありがたいが)。メンバー外の意見や優勝リストを鵜呑みにするのであればそのリストをコピーすればいい。チームでやるのであればチームメンバーを信頼するか、否定するにしてもなぜメンバーが言っていることに同意できないかで言葉にするべき。ほかの人が言っていたからで否定するのは失礼で不誠実。いないほうがいい。

とはいえ、最初からうまくいくものでもないので、数か月単位の活動前提で何か目標となるイベントに向けて一緒にやるのを繰り返して徐々にコアメンバーを固めていくのがおすすめ。

議論をする/やめる

アイデアの共有や議論により理解を深めることについて。TCGに関して議論がどうあるべき?

意見が異なることは許容すべきであるが、なぜ異なる結論に至ったかは徹底的に詰めるべき。

意見が異なることはあって当然。前提のどの部分の認識が違っているかわかるところがゴール。前提として、TCGですべてを論理的に判断することは不可能である。もし可能であれば論理的に最強のデッキを導けばいいため、それができないということは、つまりどこかで論理で詰め切れなくなるということ。なので仕方がない。相手を言い負かすゼロサムゲームではなく、議論相手(チームメンバー)とより大きいパイを手に入れるためのゲームをしている。

メンバーがよりよいデッキを手にするのが目標である。よりよいデッキを手にするためには、それに至るまでにまだできていない発見をしなければならない。(今使っているカードは思ったより弱い、まだ評価できていないカードが実は強い、特定の組み合わせであるカードが化ける、等)これらのするべき発見のうちどれだけに気づけるかで最終的なデッキの完成度が変わる。

「これから気づくべきこと」のチェックは一人でやるよりも、二人でチェックしたほうが気づく可能性は上がる。認識が違う二人であれば視点が増える分、漏れはさらに減る。認識が違う人がいることはアド。ただし、どの部分で認識の違いが生じているか理解できていないと、お互いの発見を活かせる可能性は低い。説得しきれないものという前提で建設的な話し合いを試みるべき。意見が違う人がいて、どういう理由で違う意見を持っているかを特定するところまでいってこそ、チーム全体としてのうち漏らしを減らせる。(例:カードA,Bでどちらが強いか意見が分かれたとする。Aに関連する発見はAのほうが強いと思っている人のほうが、より多くのAを使う状況を想定できている可能性が高いため、みつけやすいだろう。)

インテリジェンスを共有する

インフォメーションとインテリジェンスの違い…なんて話を以前意識高そうな本で読んでよくわからなかったことがある。ほんとにこれいる?チーム調整というのをやってから「確かにこの違いは重要だ、無駄に横文字使ってるとか思ってすみませんでした」と猛省した。前者は集めただけのデータであり、後者とは特定の意思決定に関与するデータである。

具体例を出すなら、どこかで見つけたデッキリストをポンと貼ってもそれは大抵ただのインフォメーション。なぜそれを貼ったのか、どういう議論をしたいのか、あるいは使ってみたい、使ってほしいのかなど、書いてインテリジェンスとして共有するべき。勝ったリストのすべてを網羅的にまとめていれば別の価値があるかもしれないが、文脈がない中で事実をただ一つ置いても大抵は無価値。なぜそれを貼ったのかコメントをつけるだけで情報の価値が大幅に変わる。(つけるコメントの例:〇〇を使っているリストは初めて見た、これって〇〇相手でもいけるのか?等)自分が考えていることは他人も考えていると感じがち(偽の合意)だが、他人は他人である。

自分が思った「何か」に気づいてくれという投げやりな感じはよくない。相手の負荷を和らげて、楽に議論に入ってこられるようにする思いやりが大事。

チームを活発にするナッジ

以上のことができれば私はあとはいけるとこまで頑張るという気持ちであるが、どこまでいけるかは自分とメンバー次第である。極端な話、メンバー全員が毎日空き時間すべてを自主的に使って練習しにきてくれるのが一番だが、そうはいかない。

キーワードは三つ
面倒さを感じさせない
引け目を感じさせない
貢献した充実感を感じてもらう

初めて発言する障壁は意外と高い。チームを作る側の人は大抵一番やる気か時間がある人なので、気軽に来て欲しいと思ってボイスチャンネルで待機してたりするが、来ない。仕事を終えて帰ってきて①知らない相手に②何をするかもわからない状態で③何をしたらいいか聞いて確認し④内容次第では対応が必要⑤拘束時間もそれなりな可能性、となると一つ一つはそこまででなくてもかなり重い。主催側で面倒を減らすためにやれることはやるべき。

また、大抵は趣味で来ているので、強制するものでもない。自由意志の範囲でどれだけ活動したいと思ってしてくれるかが重要。自主的に参加したくなるようナッジするしかない。

ナッジNudge, 本来の意味は「(合図のために)肘で小突く」、「そっと突く」)は、行動経済学、政治理論、そして行動科学の一概念であり[1]、これは集団あるいは個人の行動と意思決定に影響を与える途として、陽性強化 (positive reinforcement)と諷喩(indirect suggestion, 他の事にかこつけてそれとなく遠回しにさとすこと)を提案する。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%83%E3%82%B8

やったことを文字起こししてまとめる

あるとき、メンバーの一人が忙しくなり来られなくなった。イベント直前にも来ないので、情報を共有するために呼び出そうかと思ったが、忙しくても悪いからと声をかけなかった。後からわかったことだが、途中から貢献できていないのにフリーライドするようで悪いと感じてこなかったらしい。悲しいすれ違いである。恋愛小説じゃないんだからそんな切なさはいらない。

これは極端な例にしても、通話で一気に分析が進んだとき、そのときいなかったメンバーに情報が共有されておらず、差ができてそのままフェードアウトしてしまうケースは何度かあった。進捗の共有は大事。やってる側としては、「なんでも聞いて」というつもりでも、心的安全性というものがあり、引け目を感じさせないに越したことはない。また、後知恵バイアスや偽の合意というものもあり、その場にいなかった人にとっては想像以上にキャッチアップが難しいことも多い。

ToDoを作る

やるべきことを共有。何をするべきかまとめて明らかにすることそのものはもちろん大事。また「〇〇と対戦したい」みたいに具体的なタスクが書いてあれば、「それなら回せます」と入りやすくなる。明示されたタスクに協力してもらえれば、貢献した充実感も感じてもらえる可能性が上がる。

ゆるい参加日を作る

メンバーのやる気と意向次第ではノルマを課したり、参加日を作ってもいいが、そうとも限らない。人によっては強制されるとウザがるかもしれないし、強制されることによりやる気がそがれるかもしれない。私もそう感じると思う。だからといって、自由にいつでもきてというと、比較的親しくないメンバーは来ないことが多い。そういうときに強制するでもなく、「〇曜日の〇時以降はできるだけ行くようにします!」と勝手に宣言すると人が集まってくることが多い。

ゆるい報告をお願いする

定期的に一番いいと思うデッキを教えてもらったり、今ある課題を書いてもらったりする。一度目の発言というのがやはり一番障壁が高く感じるのできっかけを作る。できるだけ詳細に書いてもらった方がいいが、あんまり要求を大きくするとうざがる人ややってくれない人が出ることもある。面倒がられなさそうな範囲でいい感じに頑張る。

話してもらえたら議論してもらうところまで行くととてもよい。TCGの議論は相手を否定していると誤解されがちなトピックもあり(そのプレイはありか、実は(デッキ)って弱いんじゃないか?等)、始めるハードルが高く感じる人もいる。自然に和やかにはじめる感じにできるとよい。

一緒に遊ぶ

飲みに行けたら行くのがベスト。仲良くなって感じる障壁全般を軽くできると一番スムーズ。

つくろう

うまくいったと思ったとき、思わなかったときがある。しかしやらなければ始まらない。楽しさも理解度も大きく上がるからとりあえずつくろう。デッキもチームも。

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