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唐仁原昌子
2023年5月28日 22:31
ある日突然、学校に行けなくなった。行きたくなくなったんじゃない。本当にただ言葉のまま、行けなくなったのだ。行こうとすると、めまいがしそうなくらい心臓がどきどきする。息がしにくくなって、立っていることすらできなくなって、その場に座り込んでしまう。地べたに座るような、行儀の悪いことなんてしたくないのに。私の家は、学校のある丘の麓にある。つまり私の家の前を、毎日私と同じ制服を着た子たちが通る
2023年5月21日 23:14
「お前さあ、線くらいまっすぐ引けよ」 ユウタは、俺のノートを写させてもらってる身のくせに、偉そうにそんなことを言う。俺の引いた下線があまりにヨレヨレなのが気になるらしい。「うるさいなあ、線なんて見えたら何でもいいだろ」 文句言うなら返せよと言うと、「それとこれは話しが別!」なんてノートを抱え込んで都合のいいことを言い出す。本当に面倒くさいし困ったやつだ。 それでも、俺はそんなユウタを憎め
2023年5月14日 22:43
ふと思い立って、とあるSNSを始めた。きっかけは大したことではない。友人と話をしているときに、「名前や性別、年齢などを言わずに自分を説明できるのか」という話題になり、単純に気になったのだ。当たり障りのないIDでアカウントを作る。タイムラインが静か過ぎるのも寂しいかと、コーヒーのチェーン店とか好きな漫画家さんとか、空の画像を投稿してるアカウントをフォローした。その後、いわゆる鍵をつけ
2023年5月7日 23:52
「そこ、神様の通り道なんやで」 その神社の鳥居をくぐったとき、僕の耳元で、誰かが確かにそう言った。「…え?」 慌てて周囲を見渡すも、周りには誰もいない。風に吹かれた木々がざわざわと揺れているだけである。(空耳…?) 首を傾げながら、視線を前に戻して、また歩き始める。昼休憩の時間は限られている。午後のアポに遅れるわけにはいかないから、早く戻らなくては…。 とはいえ、せっかくここまで来