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映画とドラマのこと

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#映画感想文

映画「怪物」-人の中に住まう怪物の正体とは-

映画「怪物」-人の中に住まう怪物の正体とは-

映画「怪物」を観た。フランスの映画祭では日本映画というのは割と評価が高いイメージがある。そこには何かしら共通する感情的な特徴があるような気がしてならないが、坂元裕二脚本、是枝裕和監督作品ということで日本でも注目の話題作となっている。いつもは子役には台本がほとんどない状態で口伝えで演技を付けていくという手法が有名な是枝監督が、今回は台本をきっちり渡して望んだということで、ここからも坂元脚本への厚い信

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OLの派閥争いとヤンキー漫画の華麗なる融合。映画「地獄の花園」

OLの派閥争いとヤンキー漫画の華麗なる融合。映画「地獄の花園」

バカリズム脚本ということで気楽に笑って観られるかなと「地獄の花園」を鑑賞。

「架空OL日記」ではごく普通の女性銀行員の輪の中に一人、自身を普通の女性会社員として出演し、見事成立させたバカリズムが、今度は女性会社員の派閥争いと昨今映像化されて好評を得ている男子学生の縄張り争い不良漫画を融合させていた。

ごく普通の女性会社員(ここではあえてOLと呼ぶ)田中直子(永野芽郁)が勤めている株式会社三冨士

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ミステリーにタイトルをつけた映画「永遠に僕のもの」

ミステリーにタイトルをつけた映画「永遠に僕のもの」

映画「永遠に僕のもの」を観た(原題は「El Angel」)。

バスタブに横たわる虚な目の美少年、タバコを咥え、チラシのカットには拳銃まで見える。果たして彼は何者なのか。

実際に起きた連続殺人事件を元に、「黒い天使」と呼ばれた美しき犯罪者に迫った本作。謎多き「天使」に、ある一定の解釈を加えたフィクション、ということになろうかと思う。

特にこれというフックのないただの記録映画のようではあるけれど

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恋愛は美しいのか、枯れるのか。映画「花束みたいな恋をした」

恋愛は美しいのか、枯れるのか。映画「花束みたいな恋をした」

今さら感は否めないけれど、一時期話題になっていた映画「花束みたいな恋をした」をようやく鑑賞した。

菅田将暉、有村架純、坂元裕二、恋愛ストーリーとくれば、外すわけにはいかない強靭なコマが並んでいるが、期待を裏切らない展開で最後まで楽しめた。きっと、本作を見ながらさまざまな思いに駆られた人が多かったのだろう。その盛り上がりが納得の観賞後感だった。

2015年。キラキラとはやや無縁の地味な大学生活を

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正直、どっちでもいい、映画「疑惑とダンス」

正直、どっちでもいい、映画「疑惑とダンス」

二宮健監督ということで興味があった映画「疑惑とダンス」を観た。全編でも一時間弱とサクッと観られるドラマサイズ。バカバカしさに「ははは」と笑ってちょっとスッキリしたいときに観るといい。登場人物の誰に一番気持ちが動くのか、それであなたの結婚観や恋愛観がわかるかも?

ストーリーカンナ(徳永えり)とマサオ(木口健太)の結婚のお祝い会として集まった、カンナの大学時代のダンスサークル仲間。2人が出会うきっか

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エントロピーの減少とは、映画「TENETテネット」

エントロピーの減少とは、映画「TENETテネット」

公開当初、劇場で観たけれどもう一度絶対観たいと思っていた映画「TENET テネット」。アマプラで、100円レンタルに期間限定で上がっていたので復習鑑賞(現在は対象外)

正直、一度観ただけで理解したとは到底思えず、その上物理の知識など貧弱極まりないので、何度観ても上澄みの上澄み程度の理解具合かとは思うのだけれど、二回目の方がストーリーの記憶があったのでまだ観やすかった。

男は、とあるテロ事件に特

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アマプラ視聴終了間近、映画「見えない目撃者」

アマプラ視聴終了間近、映画「見えない目撃者」

配信ドラマ・映画はとても便利なのだけれど、見放題がそうでなくなったり、配信自体が終了になってしまったり、もう見つけたら「今見とけ」ということが最近身に染みております。
こちらもいつか見ようと観ようと思っていた映画「見えない目撃者」。もうすぐ配信終了のようです。私のようなのんびり屋さんは、忘れずに期限内に視聴しよう。

警察学校を成績優秀で卒業し、数日後には交番勤務が決定していた浜中なつめ(吉岡里帆

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映画「キャロル」に観る女性性とは

映画「キャロル」に観る女性性とは

アマプラで観られる映画「キャロル」。

ドラマでも映画でもいわゆるBLと言われるジャンルは作品数も多いし、多彩なストーリー展開があるけれど、あまり見ないのが女性同士の恋愛。その中でどういう内容になっているのか非常に興味があった。

1950年代ニューヨーク。高級百貨店のクリスマス商戦賑わうおもちゃ売り場に配属されたテレーズ。その中でひときわ目を惹かれたのが、ブロンドの髪に赤いルージュ、毛皮をまとっ

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気配と匂いにする初恋、映画「君の名前で僕を呼んで」

気配と匂いにする初恋、映画「君の名前で僕を呼んで」

先日、「マティアス&マキシム」を見た(レビューはnoteにて)時に監督がインスパイアを受けたと語っていた映画「君の名前で僕を呼んで」。とても話題になった作品ですので当時見た記憶があったのですが、これを機にもう一度見たくなってアマプラでレンタルしました。

1983年。17歳のエリオは家族とともに北イタリアのとある避暑地にいた。そこへ父親の研究の手伝いと称して、24歳のアメリカの青年オリヴァーがやっ

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現実と仮想がミックスした世界を描く映画「ピエロがお前を嘲笑う(Who Am I)」

現実と仮想がミックスした世界を描く映画「ピエロがお前を嘲笑う(Who Am I)」

アマプラ対象作品で、以前観た記憶があったのですが結末を思い出せずに再見。ハッキングで殺人の容疑までかけられた男の、自供に基づいた人生を描く「ピエロがお前を嘲笑う」。公開が2015年のドイツ映画です。

警察に出頭しユーロポールの捜査官ハンネを呼ぶベンヤミン。彼はハッカー集団CLAYの一員であり、別のハッカー集団の争いに巻き込まれ殺人容疑をかけられた上に命を狙われているとハンネに告白する。彼はなぜハ

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たった一瞬で愛情に傾く深い友情「マティアス&マキシム」

たった一瞬で愛情に傾く深い友情「マティアス&マキシム」

前から気になっていた映画「マティアス&マキシム」を観た。今作の映画は若くしてその才能を高く評価されているグザヴィエ・ドランが監督・脚本・主演まで務めた作品。監督が「君の名前で僕を呼んで」を観て衝撃を受けたのちに作ったとのこと。

幼馴染のマティアスとマキシム。ある日、映画監督志望の友人の妹から、自身の映画に出演してと依頼される。賭けに負ける形で仕方なく出演するマティアスだが、要望されたシーンは「マ

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才能に愛されるのか、才能に縛られるのか映画「蜜蜂と遠雷」

才能に愛されるのか、才能に縛られるのか映画「蜜蜂と遠雷」

楽器ができるわけでもなく、束の間習ったエレクトーンも自分のものにできずに終わった私からするとかなり遠い世界の話ではあるのですが、地元で開催される音楽コンクールが題材と言うことで映画「蜜蜂と遠雷」を観ました(アマプラで視聴可能)※恩田陸さんの同名小説が原作です。

世界で活躍するための登竜門とも言える芳ヶ江国際ピアノコンクール。
今年エントリーしたのは、幼い頃から天才少女ともてはやされるも過去のトラ

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あの頃の私よ、この姿よ見よ。映画「愛がなんだ」

あの頃の私よ、この姿よ見よ。映画「愛がなんだ」

今泉力哉監督の映画「愛がなんだ」を観た。(アマプラで視聴可能)

山田テルコ(岸井ゆきの)は友達の友達の結婚式の二次会で、同じように所在なさげにしていた田中守(成田凌)通称"マモちゃん"に出会う。それからの生活はマモちゃん一色になったテルコ。仕事も手につかず、スマホ片手にマモちゃんの気まぐれな誘いに待機する日々。
友達から呆れられても、確かな約束がなくても大丈夫。そう思っていたけれど、久しぶりの連

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愛とてワガママで独りよがりなもの。引くぐらい泣けた「悲しみより、もっと悲しい物語」

愛とてワガママで独りよがりなもの。引くぐらい泣けた「悲しみより、もっと悲しい物語」

最近ハマっている台湾BLドラマ「We Best Love」。

その中でシーズン2から存在感を増してきたサブカプの1人である↓彼が石知田くん。大注目の役者さんです。

俳優としてのキャリアも長いということで、彼が出演した映画をいくつかピックアップ。その中からまずは「悲しみより、もっと悲しい物語」を。

楽天TVやアマプラでレンタルできます。

ある事情から16歳で天涯孤独となった張哲凱(チャン・チ

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