見出し画像

イジメられのカリスマ  2 娘もイジメられた 第壱話

小学6年 10月某日 決意の日  夕方

どんなに一人になりたくても、この家にそんな場所はない。
7人家族。
2LDK。
今まで何も思わなかったこの家が急に狭く感じだし、弟や妹達の鳴き声も、いいBGMだったはずなのに、不協和音にしか聞こえない。
トイレに閉じこもり耳を塞ぐ。

もう、イヤや。死にたい…。 
でも、最後にトトに会いたい。
はやく…早く帰って来て。

目を閉じるとさっきの出来事が繊細に蘇る。

30分前
家のインターホンが鳴り、モニターにはサキとリノ
が下を向いて映っていた。
久々に遊びに来たんだと嬉しくなり、すぐに準備して玄関を開けると、お母さん達も一緒に来ていた。
「ハナちゃん?こんにちわ。お母さんいてはる?」
サキのお母さんが申し訳無さそうに訪ねる。
現状が飲み込めない私はカカを呼び、二人で玄関を出た。
お母さん達に肩を押され、サキとリノが泣きながら謝ってきた。
どういう事?私何かされてたん?
続けてサキとリノのお母さん達も泣きながら、カカに謝った。
サキとリノがスマホを取り出し、グループラインの画面を見せてきた。
見たくなかった文字が画面を埋め尽くす。
スクロールしても途切れることはない悪口。
途中から涙でボヤケて読めなくなった。
呼吸が上手くできなくなり、私は家に帰りトイレへと走った。
書いてた文面はおよそ半年前、親友のユカが
【ウチとハズキは明日からハナを無視するから、
 喋ったらソイツもターゲットにするからな!
 あんたらもやっとターゲットから解放されて
 解ったやろ?調子乗ってるやつはグループライ
 ン強制退場して、ウチ等のほとぼりさめたら
 また、招待される。これでウチとハズキ以外の
 5人は全員教育終了。最後はハナ!
 アイツはだいぶ教育いるで、空気読まんと普通 
 にターゲットと喋ってるし、てか、スマホなくて 
 もそれ位分かれよ!アホちゃう?
 てか、今時スマホないとかマジ親ガチャハズレ
 てか、ハナのオトンもかなりウザい!
 あの親子ウチとハズキでだんじり辞めさすから
 見とけよ!】
嘘や!絶対嘘や!昨日も泊まりに来て楽しかったのに?ホンマにユカが書いたん?
カカはまだ外で話してる。
トト!はやく…帰って来て。最後にお話したい!
だってトトはハナが産まれてから出張以外は1日も欠かさず毎日、先に寝てても皆一人ずつ起こして
ギュ~ッてダッコしてくれてたし、毎日
「大好きやで」って言ってくれてた。
お兄ちゃんは嫌そうやったけど…。
最近はハナ達が起きてる時間に仕事から帰って来たら一人ずつ車に呼ばれ、1人10分程のドライブに出る。
今日学校で何があったとか、他愛もない話をして、
お菓子とジュースを買ってくれる。
兄弟5人、一番下は赤ちゃんやからないけど、皆この時間が大好きで楽しみにしてる。
だからトト…。早く帰って来て!
ハナが死ぬ前に、早く…


第弐話へ続く





#文学フリマ

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?