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なんとなくいいな、の世界
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#ショートショート

月明かりの下で #真夜中万華鏡 #毎週ショートショートnote #ショートショート

月明かりの下で #真夜中万華鏡 #毎週ショートショートnote #ショートショート

病院のチャイルドルーム。
入院中の子どもたちが遊ぶことが出来るこの部屋で友達になったケン君と遊ぶのが僕の楽しみだった。ケン君から万華鏡を貰った。

部屋の中でも綺麗に見えるけど、真夜中の月明かりで見ると凄く綺麗に見えると教えてくれた。自室のベッドから天井の蛍光灯を万華鏡越しにみる。

クルクルと変わる模様。色とりどりのビーズが世界に1度だけ出会える模様を作り出す。
ケン君いいなぁ。僕も早く退院した

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【ショートショート】 僕たちは売れない靴だった

【ショートショート】 僕たちは売れない靴だった

コトさんは、かつて靴でした。
今は駅のそばの路地裏で、小さな靴屋を営んでいます。

コトさんが靴だった頃、隣にはトコさんがいました。対になったスニーカーの、コトさんは右で、トコさんは左でした。
靴たちは、気に入られれば買われてゆき、履かれたりあまり履かれなかったり、人間次第の運命です。箱から出されるのは数回きり、という靴もあれば、毎日のように空を見上げる靴もありました。
あまり外へ出られない靴は暗

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雪の降る日に ~ショートショート410字~

雪の降る日に ~ショートショート410字~

 雪化粧の庭は、取り澄ましたような顔をしていた。
 母は、予定が書き込まれた壁掛けのカレンダーを指でなぞり、はたと思い出したらしい美容室に電話を入れた。

「俺が切ろうか?」
 柄にもない提案をすると、母は照れ臭そうに微笑んだ。

 板の間の窓辺に新聞紙を広げ、雪見席の美容室を即席でこしらえた。遠方の山並みは、どんよりと垂れ込める雲に閉ざされていた。
 母を椅子に座らせると、痩せ細った首に大き

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【ショートショート】うちの旦那(毎週ショートショート 塩人)

「この野菜炒め、味薄いよ」
また旦那に料理の文句を言われた。
「塩ない?塩?」
私が無言で塩を渡すと、野菜炒めに適量(16振りくらい)振りかけた。
塩人(しおんちゅ)だ。

旦那は酒を飲む時、
「日本酒はほぼ水だから」と言う、
水人(みずんちゅ)でもある。

旦那は間違えて別の人の傘を持ってくる、
傘人(かさんちゅ)でもある。

旦那は温泉に入るとき、
「生き返る〜」と言う、
甦人(よみがえりんち

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昨日の星と夢の中

昨日の星と夢の中

誰かに理解されたいけれど、全員に理解されるのはシャク。
それって、みんなもそうなのかな。

光、音、文芸、美術、創造する惑星。

冬。寒さには弱いけれど好きな季節。
さむ、と思いながら顔を上げて、白い息が出るかどうかを確かめるそのときの、小さな期待感がよくて。白い息を見ると、生きている、という感じがする。
夕暮れの時間に、砂浜から続く階段を上がって、2階のカフェに来た。さむ、と思いながらアイスティ

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金髪な心意気

金髪な心意気

 私は公園のベンチに座って煙草を吸っていた。頭を逸らして、天に向かって煙を吐く。
 明香、これからどうするつもり? 煙草なんか吸って。だから、あんたは……。
「だから、あんたは……」
 朝、親が呑み込んだ言葉を、煙の向こうの青空からするすると引き寄せた。
「……ダメなんだ」
 二か月前に離婚して、実家に戻ってきた。離婚のゴタゴタで精神的にぼろぼろで、希望も自信もなくなった。仕事を見つける気力もなく

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