【創作大賞2024】レンタサイクルの彼女 (第五話)
【二十四歳の春】
東京の家賃は高かった。埼玉で同じレベルの家なら七割くらいの価格で住める。僕は文具商社の東京営業所に勤務するにあたり、電車に乗る時間が三十分以内で収まるところで家を探した。もう少し駅を下ったり、間取りを妥協することも検討したが、一度気に入ってしまった家を見つけてしまったせいで、それ以外が視野に入らなくなった。そして結局、背伸びして理想的な家に住むことにした。彼女は夢追い人で収入がないため僕が全て負担する形になるが、全然構わないと思えるくらい、部屋の壁の白さ