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思い出のザーピー

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思い入れの強めの自作を集めました。
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記事一覧

銀河

銀河

五時限目のチャイムが鳴ると、皆が一斉にテスト用紙を表に返した。
この時間が終われば日常に戻る。初秋の風をかき消すように、快活な空気が教室に満ちていく。
その空気が膨れ上がるにつれ、僕は一層息苦しくなった。

テスト用紙には、意味ありげな文章が羅列されている。空欄を埋めれば何かが変わるのではないかと、毎回うっかり期待してしまうが、結局は何も変わらなかった。
周囲からペンが紙の上を走る音が響く。けれど

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ももたちの失敗

ももたちの失敗

船の上で目を瞑ると、浮かんできたのはおばあさんだった。

効いてきたトラベルミン。
空気の隅々にまで、“ぼく”が行き渡らずに済んで安堵した。

おばあさんの言葉が流れる。
「今はバスでも行けるのヨ」
ぼくの小さな反抗心を後悔した。

おじいさんは山へしばかりに行った。



おばあさんは、大きな旗と刀を携えたぼくをみてつぶやいた。
「あのころのわたしに似ているネ」

そして小綺麗な巾着袋を渡して

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レンタサイクルの彼女 (第六話/最終話)

レンタサイクルの彼女 (第六話/最終話)

【二十四歳の冬】

 カレンダーをみて、床がもう冷たいのを感じた。彼女が家を出てから一週間は経つだろうか。

 彼女が別れのスイッチを押した。でも、そもそも告白してきたのは彼女だ。スイッチは当然告白された側が持っているものだと思っていた。
 気持ちが落ち着かない。彼女への不満をリスト化しながら、何とか自分を正当化しようと努めた。
 でも一人には広すぎる部屋のせいで余計に虚しくなった。
「こんなこと

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レンタサイクルの彼女 (第五話)

レンタサイクルの彼女 (第五話)

【二十四歳の春】

 東京の家賃は高かった。埼玉で同じレベルの家なら七割くらいの価格で住める。僕は文具商社の東京営業所に勤務するにあたり、電車に乗る時間が三十分以内で収まるところで家を探した。もう少し駅を下ったり、間取りを妥協することも検討したが、一度気に入ってしまった家を見つけてしまったせいで、それ以外が視野に入らなくなった。そして結局、背伸びして理想的な家に住むことにした。彼女は夢追い人で収入

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レンタサイクルの彼女 (第四話)

レンタサイクルの彼女 (第四話)

【二十歳の秋】

 落ち葉が足元に積もっている。僕のチノパンと落ち葉の境界線がわからないほど馴染んでいる。
 彼女の予言はしっかり当たった。彼女はノストラダムスを超えた。ノストラダムスは二千年が来ることを予想できなかった。きっとノストラダムスは競馬も苦手だろう。大穴に大金をぶっこむタイプのはずだ。

 僕は大学になるべくいたくないので、暇なときは喫茶店にこもっている。そうしていると彼女も時間が空い

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レンタサイクルの彼女 (第三話)

レンタサイクルの彼女 (第三話)

【二十歳の春】

 桜の花びらが僕のまわりにも舞う。
 僕は二十歳になるのと同時に大学生になった。
 新入生歓迎会のシーズンにお酒が飲めるメリットは大きい。大学生活の八割は新歓コンパで決まる。胡散臭い自己啓発本のタイトルみたいなことを思っていた。
 最初にお酒を共にするのは彼女だった。彼女が僕の大学の合格祝いを企画してくれたのだ。
 場所はチェーンの居酒屋だったが、僕にはピューロランドと同じくらい

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レンタサイクルの彼女 (第二話)

レンタサイクルの彼女 (第二話)

【十九歳の夏】

 エアコンの風が参考書のページをめくる。
 青チャートを置くには狭すぎる机が並ぶ自習室にも少し慣れてきた。彼女は晴れて大学生となり、僕は予備校生となった。
 高校生のころと変わらず、友人と呼べるような人はできていないが予備校生という立場なので気にならなかった。そういう意味では“予備校生”という肩書きは最強である。
 今日は息抜きに彼女と会う。彼女は七月なのに師走のような忙しさのた

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レンタサイクルの彼女 (第一話)

レンタサイクルの彼女 (第一話)

【二十四歳の冬】

 カレンダーをみて、床がもう冷たいのを感じた。彼女が家を出てから一週間は経つだろうか。

 晴天の霹靂だった。
 二人が別々の方向に進む選択のスイッチは僕が握っていると思っていた。でも彼女も同様に同じスイッチを持っていて、それを押したのだった。
 彼女とはなんとなく、このまま一生を添い遂げると思っていた。僕の人生はいつも上手くいかない。彼女は僕に不満を持っていたのだろう。まぁ、

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雨 母 おはガール

雨 母 おはガール

 雨を聴くことしかできない。スマホが壊れてしまったからだ。一人暮らしのOLである私にとってスマホは命の次に大切なものだ。そんな大事なものを殺めてしまった。

 事件は風呂場で起こった。湯船でスマホを持ちながら海外ドラマを観ていた。次のエピソードを見ようと画面をタップしようとした瞬間、うっかり手を滑らせた。
 スマホはゆっくりと湯底落ちた。死んでないのに走馬灯まで流れた。走馬灯にはオフィスのコピー機

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フミちゃん

フミちゃん

“本を書く人になる”

小学生のころに仲のよかったフミちゃんの夢だ。

久々に実家に帰り、暇つぶしに読んだ卒業文集に書いてあった。

私のページには“会社員になる”と書いてあった。背中がゾワゾワして読むのを辞めた。

三十路になった私は、当然のように夢を叶えている。

しかしフミちゃんの夢は、そこらのハシゴでは渡れない距離があった。

あぁ、年末だな。

工事現場でコンクリートが削れる音が聞こえた

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レンタサイクルの彼女

レンタサイクルの彼女

珈琲とコーラを一つずつ頼んだ。

僕の口の中で想定外の苦味が広がり、彼女の珈琲を間違えて飲んでしまったことに気がついた。

そんな僕をみて、高校生とは思えないほどあざとく膨れ顔をする彼女は、

レンタサイクルで去っていった。

下校中、突然大雨が降ってきた。

お互い会話に夢中で、空の色など気にしていなかった。

ちょっと先に駄菓子屋を見つけ、雨宿りをしていこうと提案しようとした僕をよそに彼女は、

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月と視聴覚室とヘイ・ジュード

月と視聴覚室とヘイ・ジュード

「月めくりすぎて、太陽見えてきちゃったじゃないの」

母親が必要以上に大きい声を出す。

私がめくった月で、部屋が足の踏みどころがないほど散らかっていた。

私はただ月の裏側を知りたかっただけ。

月をめくればめくるほど視界が白くなり、気づいたら朝になった。

朝食はポケモンパンを食べた。

いちご味の蒸しパンがお気に入り。

別に昨日と同じ朝である。

でも、なんとなく学校には久々にマスクをして

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【ピリカ文庫】京浜東北サディスティック

【ピリカ文庫】京浜東北サディスティック

報酬は入社後平行線で、弊社は愛せど何もない。

「仕事終わったらみんな裏口のとこ集まって。そこで会費も集めるから」
会社内でリーダー的存在の人の声が聞こえた。
どうやらこの後、飲み会があるらしい。
でもオレは飲み会に誘われていない。
新卒から入っているオレを横目に、自分よりも遅く入った中途がニコニコしながら仕事を片付け始めた。
誘われなかったことは別にいい。別にいいけど、なんだか久々にビールを飲み

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うちの旦那

「この野菜炒め、味薄いよ」
また旦那に料理の文句を言われた。
「塩ない?塩?」
私が無言で塩を渡すと、野菜炒めに適量(16振りくらい)振りかけた。
塩人(しおんちゅ)だ。

旦那は酒を飲む時、
「日本酒はほぼ水だから」と言う、
水人(みずんちゅ)でもある。

旦那は間違えて別の人の傘を持ってくる、
傘人(かさんちゅ)でもある。

旦那は温泉に入るとき、
「生き返る〜」と言う、
甦人(よみがえりんち

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