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Hint(まどろみ文庫)

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2022年11月の記事一覧

【随想】広告『佐藤可士和』

【随想】広告『佐藤可士和』

知らぬ間にこんなにも、佐藤可士和が溢れているとは。
超整理術(2007年9月)を出版した時は、どのくらいのキャリアであったのだろうか。
かれこれ15年は経っている。
不覚にも、気づかなかった。
言われてみれば、
あれも佐藤可士和、これも佐藤可士和、
何もかもが佐藤可士和…。
徐々に、いつの間にか、佐藤可士和が、社会に充満していた。
まるでアップルのように。
佐藤可士和は、極端である。
不自然なまで

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【随想】小説『いけない』道尾秀介

【随想】小説『いけない』道尾秀介

幾重にも折り重ねられたミステリーのミルフィーユ。
その闇は深すぎて、作家自身は口をつぐんだ。
事件の真相は、読者の手に委ねられた。
舞台は、一つの街。
一見関係なさそうに見える事件の数々が、章を読み進めるごとに、一つの物語へと収斂していく。
作家は巧妙に罠を仕掛ける。
誰が犯人なのか、誰が被害者なのか、文中に明確な答えを示さない。
ただ、状況説明と登場人物による会話と信頼できない語り手があるだけだ

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【随想】短編アニメ『ふしぎなエレベーター』山村浩二

【随想】短編アニメ『ふしぎなエレベーター』山村浩二

このエレベーターの既視感(異世界への扉が開いた時の高揚感)は、
ナルニア国か、それともインセプションか…

少年がD団地の53階の一室で、ハーモニカを吹いている。
掃除をしている母親は、少年を邪魔者扱いする。
少年は靴をはいて、外へと出かけた。
エレベーターで1階まで降りようとすると、エレベーターが止まらない。
どんどん下降し続けて、地下へ地下へと降りていく。
ようやく止まったその階は、木々や蔦の

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【随想】小説『十角館の殺人』綾辻行人

【随想】小説『十角館の殺人』綾辻行人

『十角館の殺人』を読んだ。
1987年、綾辻さん26歳、小説家デビュー作だそうだ。

「たった一行ですべてがひっくり返る」どんでん返し系ということで、ワクワクしながら、一気読みした。

読後感は、どんでん返し系のサスペンス映画を観た時の「やられたー」感に似ている。

『シックス・センス』(1999)
『ユージュアル・サスペクツ』(1995)
『SAW』(2004)
などなど。

こういうどんでん返

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【随想】小説『i(アイ) 』西加奈子

【随想】小説『i(アイ) 』西加奈子

ヒリヒリする。はじめての西加奈子。
言葉の一つ一つがずっしりと重たい。柔らかい文章なのに、重たい。
又吉さんはラストシーンが響いたというが、自分はミナの長文メールの途中で涙腺が刺激された。
ト書きや描写を挟まない、一息の独白。
メールという一方通行のその語りには、ミナ自身の強いメッセージがまっすぐに詰め込まれていた。
大きなひずみを乗り越えようとする力強い文章。
あの時、ミナはどう感じていたのか、

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