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【随想】短編アニメ『ふしぎなエレベーター』山村浩二

このエレベーターの既視感(異世界への扉が開いた時の高揚感)は、
ナルニア国か、それともインセプションか…

少年がD団地の53階の一室で、ハーモニカを吹いている。
掃除をしている母親は、少年を邪魔者扱いする。
少年は靴をはいて、外へと出かけた。
エレベーターで1階まで降りようとすると、エレベーターが止まらない。
どんどん下降し続けて、地下へ地下へと降りていく。
ようやく止まったその階は、木々や蔦の生い茂った不思議な異世界。
ハーモニカを吹きながら散策する少年。
木霊するように、どこからか鳥のさえずりがする。
少年は呼応する音を頼りにその鳥を探す。
すると、カエルのような奇妙な生物が、その鳥を瓶の中に閉じ込めていた。
奇妙な生物が、瓶を抱えて巣に戻っていくのを、こっそりと後をつける少年。
巣に戻ると、奇妙な生物は、他の仲間たちと鳥のさえずりを聞いて楽しんでいる。
巣の中を見渡すと、鳥の死骸の入った瓶があちこちに転がっている。
少年は、鞄からノートを取り出し、紙飛行機を作って、巣の中へ投げ込む。
すると、奇妙な生物たちは、鳥を見つけたと勘違いしたのか、紙飛行機を追いかける。
その隙に、少年は瓶に小石を飛ばして、中の鳥を逃がすことに成功。
奇妙な生物たちが追いかけてくるが、少年と鳥は、ぎりぎりエレベーターへと逃げ込む。
自分の部屋に戻ってこれた少年は、鳥を窓から空へ逃がすのであった。

少年は、瓶の中でさえずり歌う鳥を、
団地の中でハーモニカを吹く自分自身と重ねたのであろうか。

それにしても、絵が上手くてほれぼれする。
この絵が好きだなぁ。


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